『WIPOがグローバルイノベーションインデックス2020を発表』、『ネットゼロスタートアップへの投資が倍増』、『いいとこ取りの『SuperBattery』で、Teslaを破る!?』、『パンデミックでも劣りを見せないサイバーセキュリティエコシステム』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第24回」をお届けします。
このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
WIPOがグローバルイノベーションインデックス2020を発表
世界知的所有権機構(WIPO)が、新規テクノロジー開発/イノベーションにおける各国の勢いや発展を明確にした
グローバルイノベーションインデックス(GII)2020年版を発表した。GIIは、スタートアップへの投資動向も含め、社会経済的発展の原動力となる革新的活動の振興を評価・理解するための国際的な指標で、今回はパンデミックが発生した2020年前半を考慮した分析となっており、世界経済が低迷する中、長期的な成長を見据えたイノベーション創出活動・資金調達の重要性について追求した。また13回目となる今回の発表では、スイスが10年連続で1位となり、2位スウェーデン、4位英国、5位オランダに続き、上位30ヵ国中21ヵ国を欧州勢が占めた。同指標によると、今後VC投資が集まると予測されるのはヘルスケア、エドテック、ビックデータ、ロボットなどの領域であり、欧州は該当分野での強さを見せつけた形だ。なお、日本は総合16位にランクインした一方、世界都市・地区別科学・技術クラスタートップ100では、圧倒的な特許出願数などで4年連続の1位となった。
ネットゼロスタートアップへの投資が倍増
欧州のネットゼロ(CO2を差し引きゼロで実質的に排出しない)企業が、2019年だけで前年比129%増の約27億ドルのVC投資を集めたことがわかった。一方、同期間で米国企業は16%の伸びを記録したが、中国のネットゼロ企業への投資は30%も縮小したという。欧州では過去5年間で、特にドイツが投資額1000%増、フランスも500%増と驚異的な伸びを見せた。JR東日本も出資するベルリン発の都市農業ソリューション
Infarmや、水上エコタクシーの仏
Seabubblesが1億ドル以上の大規模投資を受けた有望企業として挙げられる。さらに、英国もVC投資総額でトップとなる4.3億ドルを記録した。他にも輸送やエネルギー貯蔵用の大型産業用バッテリーの
Lithium Werksを輩出するオランダや、大気中のCO2除去技術を開発する
Climeworksが拠点を置くスイスなども大きく貢献している。EUは
Horizon Europe initiativeの一環として、また3月に発表された
Green Dealなど、エコフレンドリーなスタートアップを支援する取り組みを近年多く実施しており、欧州では今後もこのような投資傾向が続くと予測される。
いいとこ取りの『SuperBattery』で、Teslaを破る!?
エストニアの
Skeleton Technologies が開発する『SuperBattery』は、たった15秒で充電を完了し、劣化することなく数十万回の充電/再充電サイクルを繰り返すことができるという。このグラフェンベースのバッテリーは、リチウムイオン電池や水素燃料電池がまだエネルギー要件を十分に満たしていない部分のギャップを埋めることができると期待されている。同社は現在、独
Karlsruhe Institute of Technologyと共同で、電気二重層キャパシタとリチウムイオン電池や水素燃料電池を組み合わせて使用するよう設計することで、それぞれの長所を活かし、急速に充電可能な上、バッテリーがより長い間エネルギーを貯蓄できるバッテリーの2023年頃の商業化を目指している。米国海軍研究局の支援を受けたある調査によると、Skeletonが開発する技術は、昨年米
Teslaが2億ドル以上で買収した電気二重層キャパシタの
Maxwell Technologiesや、
Ioxusよりも優れたパフォーマンスが可能であると発表されている。これにより、SuperBatteryを採用する電気自動車は、充電時間を短縮するだけでなく、車のバッテリーシステムの全体的なコストと重量を削減することで、より効率性の高いシステムを搭載することができるようになる。
パンデミックでも劣りを見せないサイバーセキュリティエコシステム
英国政府の支援のもと、弊社の
イノベーションパートナーである
Plexalが運営するサイバーセキュリティに特化したイノベーション プログラムの『
The London Office for Rapid Cybersecurity Advancement』に参加するスタートアップ が、
IQ Capital Fundや
Octopus Venturesなど英国を代表するVCからここ2年だけで計1.9億ドルの投資を受けたことがわかった。元々、LORCAは3年間で£40mの資金調達を行うことを目標としていたが、大幅にその数値を上回った形だ。英国では、サイバーセキュリティ関連の投資はパンデミックの影響をほとんど受けておらず、史上最高となる約6.5億ドル以上の調達総額を記録した前年と比較しても、同時期ではほぼ同数の投資案件が確認された上、関連企業がロックダウン開始以降だけで1.5億ドル以上を調達したという。今までLORCAに参加した72社のうち、36%がロンドン、22%が国外から参加しているものの、残りはベルファスト、マンチェスター、エディンバラなど各方面から集まっている。英国を筆頭とする欧州のサイバーセキュリティ関連エコスステムにも引き続き注目が集まる。
植木このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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