『屋内垂直農業Infarmの快進撃が止まらない』、『あらゆる領域で活用可能な小型衛星Iceyeが資金調達』、『Tech Nationが期待の英国フィンテック企業を選出』、『欧州テック企業の米国拠点設立に対する意欲が減少?』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第26回」をお届けします。
このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
屋内垂直農業Infarmの快進撃が止まらない
垂直農業のパイオニアであるドイツ発
Infarmが、シリーズCで新たに1.7億ドルを調達し、今までの資金調達総額が3億ドルを超えた。JR東日本も出資する同企業のこの成長には、過去1年間で独Aldi、英国のMarks & SpencerやSelfridges、さらに紀伊國屋など世界大手小売業者との提携が大きく貢献していると言える。Infarmの「屋内垂直野菜栽培」システムは、食料品店、レストラン、ショッピングモール、学校など様々な場所で顧客が栽培されている野菜を収穫することで、より新鮮な野菜へのアクセスを可能にする。また同社は、垂直型のデザインにより使用スペースや水の使用量を90%削減する上、ネットワーク全体で使用する電力の90%以上を再生可能エネルギーで確保するクリーンテック企業でもある。また同システムはIoTを搭載し、各ユニットを中央制御センターからモニター・管理することができるため、新たな『Farming-as-a-Service』というビジネスモデルを開拓している。すでに世界10ヵ国、30都市で展開するこの次世代型の栽培システムは、日本でも今年導入されるため、利用者の反応が気になるところだ。
あらゆる領域で活用可能な小型衛星Iceyeが資金調達
合成開口レーダー(SAR)を搭載した小型衛星を開発するフィンランド発
Iceyeが、7400万ユーロを調達した。2014年に設立された同社のSAR衛生は、発信した電波の反射を利用するため、どんな悪天候でも地表画像を鮮明に写すことができる。また2018年に初めて実験衛星を打ち上げてから、100kg以下の小型衛生を使用することで費用を抑えたサービスを提供することに成功してきた。欧州では近年ThrustMeやExotrailなど、あらゆる宇宙ビジネスに携わるスタートアップが台頭してきているが、SARを活用した撮影技術において競合企業となるのは、比較的大規模な衛生事業を展開するAirbus、米
Capella spaceや日本の
Synspectiveである。そんな中でも、同社はこのタイムリーな地表データが洪水・石油流出などの災害状況把握にも役立つことから、現在は北南米の政府機関だけでなく、海運会社や保険会社など幅広い業界の企業にも情報を提供しており、Iceyeはこの業界で一歩リードする企業となりつつある。
Tech Nationが期待の英国フィンテック企業を選出
英国エコシステムを支える
Tech Nationは、6ヵ月にわたり期待の高い企業の成長を促進する最新フィンテックプログラムに選出されたテック企業、計31社を発表した。特にフィンテックにおいて、英国は関連企業が今年だけで146億ドルの投資を受け、さらに輩出ユニコーン数でも計22社と英国に次ぐオランダの6社に大差をつけ、その強さを見せ付けている。今回のプログラムでは、インシュアテック企業など近年の成長が著しいサブセクターも選出対象となった中、参加企業の60%以上がロンドン外に拠点を置いており、英国全体にフィンテックハブが散在していると言える。イントラリンクでは、この英国フィンテックエコシステムの概要と、それを日本企業がどのように活用するべきかという推奨事項をまとめた調査レポート「
Innovation Opportunities in UK Fintech」(日本語:無料ダウンロード)を発表した。パンデミックやデジタルトランスフォーメーションの加速により、今後世界的にフィンテックの重要性がさらに高まると見られ、日本企業もその業界最前線に身を置く英国のフィンテックイノベーターと手を組むことを検討する良い機会なのではないだろうか。
欧州テック企業の米国拠点設立に対する意欲が減少?
大手グローバルVCの
Index Venturesが発表した最新レポートによると、以前のように米国進出に積極的な欧州スタートアップが減少傾向にあるという。今回100社以上の欧州企業への調査と、300社近くの事業拡大戦略を分析した結果、欧州テック企業のたった1/5のみがエンジニアリング拠点の米国移転を選択しているという。これは彼らが米国市場への興味を失っている訳ではなく、米国に技術チームを設置する意欲が弱まってきているということである。実際に、シリーズA以前に米国へ拠点を拡大した企業数は、2014年以前と比べて過去5年間で1/3に減少した。現在、域内企業への投資とユニコーン数が着実に増え続けている上、米国の430万人を上回る600万人のデベロッパー数も記録する欧州は、市場として十分に成長し、豊富な資金と優れた人材へのアクセスが容易になったことで、企業が以前よりもローカル市場に焦点を置くようになり、資金やタレントを求めてわざわざ米国に拠点を設立する必要がなくなったのである。さらにデジタルトランスフォーメーションの加速とともに、欧州テック企業とって、今後は域内からグローバル展開とより効率的なビジネス展開が可能になるかもしれない。
植木このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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