『EC、最新のEuropean Innovation Scoreboardを発表 』『Prophesee、機械が「見る」仕組みに革新を』『Hadean、スケーラブルなメタバースインフラで資金調達』『ベルギーのフランダースエコシステムの実態に迫る』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第129回」をお届けします。
EC、最新のEuropean Innovation Scoreboardを発表
欧州委員会は、EU各国のイノベーションパフォーマンスを明らかにする
European Innovation Scoreboardを発表した。本レポートでは、各国のイノベーションパフォーマンスを4段階の評価別に分類する。今年の評価では、引き続きスウェーデンが最も優れた業績を上げており、これにフィンランド、デンマーク、オランダ、ベルギーが僅差で続いた。昨年と比較すると、オランダは「Strong Innovator」から最高評価である「Innovation Leader」へと評価を上げ、キプロスとエストニアもそれぞれ1段階ランクアップしている。今回の結果は、欧州委員会が欧州各国におけるイノベーション格差の解消や、欧州を「ディープテックイノベーションやスタートアップの最前線に」ポジショニングすることを目的とした
New European Innovation Agenda直後に発表されたものである。
Prophesee、機械が「見る」仕組みに革新を
コンピュータビジョンの応用先は劇的に増加しているものの、大量のビデオ映像をキャプチャし、処理する際の効率化にまだ課題が残る。そんな中、ニューフォモーフィックセンサーを開発するフランスの
Propheseeが先日シリーズCラウンドで新たに5,000万ユーロを調達し、現在までの調達総額は1億2600万ユーロに達した。これにより、ヨーロッパで最も資金力のあるファブレス半導体スタートアップとなった。同社の技術は1秒間に数枚の写真を撮るだけの従来のカメラ方式とは異なり、ヒトの目、脳の働きを模倣したAIによるセンサーソリューションを活用している。ここ数年は、ソニーなどの主要パートナーとともに市場牽引力を獲得しており、このパートナーシップでは
次世代HDビジョンセンサーを開発している。今回の資金調達により、Propheseeは次世代ハード、ソフト製品の開発と商品化に注力していくという。
Hadean、スケーラブルなメタバースインフラで資金調達
バーチャル世界は家庭用ゲーム、教育、建築、旅行業などを筆頭に、今やほとんどの業界に不可欠なものとなっている。そんな中、分散型空間コンピューティングに特化したロンドンの
Hadeanは、バーチャル世界の普及に必要なインフラを提供している。同社は、シリーズAラウンドで、中国のTencentを含む著名な投資家から3,000万ドルを調達したことを発表した。プロダクトはメタバースインフラで、サーバーの制限を気にすることなく、相互運用可能でセキュアな没入型3D環境を作成できるようになるという。既に教育分野や法人向けのデジタルツインプロバイダ、さらにエンターテインメント業界においてはMinecraft、Pixelynx、Sony、Gamescoinなどの大手企業と複数年の契約を結んでいる。Hadeanは今回の資金調達により、ゲーム業界や政府機関、各領域における企業との取り組みに加え、web3やメタバースへの応用を強化していく予定だ。
ベルギーのフランダースエコシステムの実態に迫る
ベルギー北部に位置するフランダース地方は、新たなスタートアップエコシステムとして存在感を増している。Dealroomのレポートによると、同地方は人口100万人あたりのスタートアップ数が330と欧州で最も密度の高いエコシステムの一つだ。またアントワープやゲントなどの主要都市を中心に、2000以上のスタートアップ、また200以上のスケールアップを抱える。さらにフードデリバリーソフトウェアを提供する
Deliverectや、ヒト抗体治療薬を開発する
ARGEN-Xなど5社のユニコーンを生み出している。フランダースエコシステムは特にヘルステックやバイオテクノロジーに優れており、同地域へのVC投資の30%以上を占める上、欧州で最も研究開発資金が豊富な地域の一つであり、
IMECを筆頭に、デジタルテックやナノエレクトロニクスを専門とする研究所がある。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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