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イノベーションインサイト:第48回

イノベーションインサイト:第48回

『フィンランドの包装資材メーカーPaptic、2,300万ユーロ調達』、『「最もスピンアウトを成功させた」英国の大学とは?』、『独Nuventura、SF6フリーのスイッチギア技術で2,500万ユーロ調達』、『Redwood Materials、米バッテリーサプライチェーン拡大で10億ドル調達』、『セールスインテリジェンスツールの Apollo.io、1億ドル調達』、『クライメートテックCH4 Global、2,900万ドル調達』、『シンガポールのヘルステックSaaSMiyahealthが770万ドル獲得』、『POSシステムスタートアップQashierが1,000万ドル獲得』を取り上げた「イノベーションインサイト:第48回」をお届けします。

フィンランドの包装資材メーカーPaptic、2,300万ユーロ調達

フィンランド発のPapticが、木質繊維をベースとした包装資材で2,300万ユーロのシリーズA資金を調達した。このラウンドは、インパクトVCファンドのEuropean Circular Bioeconomy Fund (ECBF)、米国の化学企業Ecolab、また日本のItochu Fibre Ltd.が主導した。2015年に設立された同社は、買い物袋や包装袋、製品パッケージ、乾物の食品包装、衣類の包装、ポリ袋などのパッケージにおけるプラスチックの代替を目指しており、同社の素材は2018年より工業規模での利用が可能となっている。これまでにも多くの成功を収めている同社は、4年連続で毎年売上高を2倍以上に伸ばしており、2026年までに売上高1億ユーロを目指している。今回得た資金は、素材ポートフォリオの拡大と、軟包装向け素材のさらなるグローバル展開に充てられる。これに加え、2030年までにカーボンニュートラルを実現するという同社のコミットメント支援にも充当される予定だ。

「最もスピンアウトを成功させた」英国の大学とは?

Octopus Venturesが作成した Gateways to Growth: The Entrepreneurial Impact Reportによると、スコットランドに拠点を置くUniversity of Dundeeが、「最もスピンアウトを成功させた大学」として英国でトップに選ばれた。2位はQueen’s University Belfast、3位はUniversity of Cambridge、4位はCardiff University、5位はUniversity College Londonだった。このランキングは、特許数、スピンアウト企業の設立、また直近ポートフォリオの成功などの要素によって決定された。University of Dundeeの場合は、大学発スピンオフとして過去最大級となるAI創薬スピンオフ Exscientiaの22億ポンドのIPOが含まれており、これが大きく貢献したとされる。Octopus Venturesの基準を用いると、ロンドン、オックスフォード、ケンブリッジのいわゆる「ゴールデン・トライアングル」地域外に拠点を置く大学がトップ10のうち6つを占め、有名なテック・ハブ以外の大学の能力の高さを実証している。

独Nuventura、SF6フリーのスイッチギア技術で2,500万ユーロ調達

ベルリンを拠点とし、SF6フリーのスイッチギア技術を開発するNuventuraが、シリーズAラウンドで2,500万ユーロを調達した。SF6(六フッ化硫黄)は二酸化炭素の25,200倍の地球温暖化パワーを持つ、世界「最強」の温室効果ガスとされる。2017年設立の同社は、SF6断熱材をドライエアに置き換えることによる電力業界の脱炭素化を目指しており、環境に優しいSF6フリーの中電圧(MV)ガス絶縁開閉装置を開発している。同社の技術は送配電設備(スイッチギアなど)の電気部品を絶縁し、電流の流れをオン・オフするために使われる。Nuventuraは技術をライセンス供与できるスイッチギアメーカーをターゲットとしており、メーカーはコアモジュールを購入し、自社の設計に組み込むこともできるという。今回の調達資金は、製品ポートフォリオの拡大と、製造拠点のグローバル展開に充てられる。

Redwood Materials、米バッテリーサプライチェーン拡大に向け10億ドル調達

元Tesla CTOのJB Straubel氏がEV電池リサイクル構想具現化のため設立したRedwood Materialsが、シリーズDラウンドで10億ドル以上を調達した。今回得た資金は、国内サプライチェーンの拡大、また顧客がリチウム、ニッケル、コバルトなどのバッテリー材料を初めて米国内で購入できるようにすることに充てられるという。世界のリチウムとコバルトのそれぞれ59%と75%を中国が加工・精製しているのに対し、カナダと米国はそれぞれ3%と3.5%である。このギャップに対処し、米国内でクローズドループのサプライチェーンを構築するため、Redwoodはネバダ州のリサイクル施設で電解銅箔を生産予定であり、2025年までに、100万台のEVに電力を供給するリチウム電池の正極活物質と負極箔の生産を見込んでいる。さらに同社は、今年末までに銅箔の生産を開始予定で、Teslaのネバダ州ギガファクトリーにバッテリーを供給するパナソニックが、既存のパートナーシップの一環として初めての銅箔の顧客となる。

セールスインテリジェンスツールの Apollo.io、1億ドル調達

サンフランシスコ拠点のApollo.ioが、Bain Capital Ventures主導で、Sequoia Capital、Nexus Venture Partnersなどの既存投資家も参加したシリーズDラウンドで1億ドルを調達した。同社は過去2年間で900%以上の売上成長を達成し、現在50万以上の組織、300万人以上のユーザーをサポートしている。Salesforceの2022 State of Sales Reportによると、営業の現場はますます複雑化しており、営業チームは案件をまとめるために平均10種類のツールを使いこなしているという。Apollo.ioは、セールス・インテリジェンス、エンゲージメント、そして実行ワークフローを統合したオールインワン・プラットフォームを提供することで、プロセスの簡素化を目指す。独自のB2Bバイヤーデータベースを元に構築されたこのプラットフォームは、AIを活用してGo-to-Market戦略を導き、リードの算出、取引成立、そして業績向上を支援する。同社はサービスのさらなる拡充を目指しており、今回得た資金は従業員の倍増に充てる予定だ。

クライメートテックCH4 Global、2,900万ドル調達

ネバダ州発、畜産業における温室効果ガス排出の抜本的削減を目指すクライメートテックCH4 Globalは、シリーズBラウンドで2,900万米ドルを調達した。このラウンドは、DCVC、DCVC Bio、またCleveland Avenueが主導し、気候変動に強い関心を持つ他投資家も参加したもので、これまでの調達総額は約4,700万米ドルに達する。この熱気は、主に牛のげっぷから発生する腸内メタンを大幅に削減するための、安全で実行可能なソリューションに対する市場の需要を反映したものと見られる。同社の代表的製品Methane Tamer™は、紅藻類を家畜の飼料に添加することで、微生物が植物質物質を分解・消化するプロセスで生成される家畜のメタン排出量を最大90%削減し、同時にメタン排出によって失われる飼料のエネルギーも削減する。養殖・生産施設CH4 Global EcoParkの開発により、CH4 Globalは6大陸すべてにおいて重要なパートナーとともに拡大する態勢を整えた。同社は、肥育牛、肉牛、酪農、放牧酪農など特有のニーズを満たすため、独自の飼料サプリメント製品を開発している。

シンガポールのヘルステックSaaSMiyahealthが770万ドル獲得

シンガポールに本社を置くヘルステックSaaS企業のMiyaHealthは、「資金調達の冬」とされる中、240万SGD(178万ドル)のプレシリーズA延長ラウンドを終了し、資金調達総額は1,040万SGD(770万ドル)となった。2019年設立の同社は、ヘルスケアを強化するデジタルインフラを構築・運営している。同社はMiyaPayor、MiyaPatient、またMiyaProviderの3つの製品スイートを提供しており、いずれもMiyaHealthのAIと機械学習によるデータ取得、処理、相互運用能力をヘルスケア・エコシステム全体で活用している。昨年、同社は、ポーランドのBioton社との重要なパートナーシップを開始し、独自製品であるMiyaPatientとそのAI駆動型アバターMiyaAvatarを適用させた糖尿病管理プラットフォームを作成し、医師が遠隔で患者を管理するのを支援している。現在、ポーランド全土の学術センターと協力してパイロット段階にあり、今年後半に展開される予定だ。MiyaHealthはまた、フィリピンとインドネシアで、MiyaPayorとMiyaProviderについて、複数の十年間に及ぶ契約を締結する最終段階にあるという。

POSシステムスタートアップQashierが1,000万ドル獲得

DealStreetAsiaのData Vantageがアクセスした提出書類によると、シンガポールを拠点とするスマートPOSシステム・プロバイダーのQashierがシリーズA資金調達ラウンドで1,000万ドルを調達した。同社が創業された2019年当初は、小売店やレストランにPOSソリューションを提供し、1台のスマートなデバイスで業務と決済の両方を管理できるようにしていた。それ以後、同社製品は在庫管理、スタッフ管理、顧客ロイヤルティサービス、また非接触型QR注文などのデジタルソリューションを統合した本格的なコマースプラットフォームへと進化した。現在、Qashierはシンガポール、マレーシア、フィリピン、タイという4つの主要市場で6,000以上の加盟店を抱えている。 植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

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