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イノベーションインサイト:第49回

イノベーションインサイト:第49回

『H2 Green Steel、大規模工場設立に向け15億ユーロ調達』、『日系VCのNordicNinja、第2号ファンドをクローズ』、『EIC 、CO2と電気から牛乳を生成する新プロジェクトへ出資』、『ソフトバンク支援受け、自律走行トラックStack AV設立』、『EVバッテリーリサイクルのAscend Elements、約5.4億ドル調達』、『Imbue、「強固な推論」導くAIモデル構築で2億ドル調達』、『シンガ2大大学とTemasek、新プログラムでディープテックを後押し』、『インドネシアの製造プラットフォームManuva、800万ドル調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第49回」をお届けします。

H2 Green Steel、大規模工場設立に向け15億ユーロ調達

ストックホルム発グリーン・スチール・メーカーのH2 Green Steelが、スウェーデンのボーデンに世界初の大規模グリーン・スチール工場を建設するため、15億ユーロを調達した。バッテリメーカー、Northvoltの共同創業者が2020年に設立した同社は、エンド・ツー・エンドのデジタル化を実現する上、化石資源を使用しない電力、そして石炭の代わりにグリーン水素を使用する完全統合生産プロセスでグリーン・スチールを製造している。この新工場は、従来の高炉技術で生産される鉄鋼よりもCO2排出量を最大95%削減した鉄鋼を供給できるという。なお、H2 Green Steelの顧客は、パイプ・チューブ、乗用車・大型商用車、白物家電、建設製品など多岐にわたり、同社は今後、基礎素材生産における産業規模での脱炭素化を加速したい意向だ。

日系VCのNordicNinja、第2号ファンドをクローズ

北欧を拠点にクライメートテック企業へ投資するベンチャーキャピタルNordicNinjaが、2億ユーロの第2号ファンドのクローズを発表した。国際協力銀行(JBIC)と、バルト三国で最大のファンドマネジメント会社であるBaltCapによって2019年に共同設立された同VCは、既存投資家であるホンダ、オムロンをはじめとする多数の日系戦略投資家に加え、欧州の機関投資家からも支援を受けている。約1億ユーロの第1号ファンドからはBoltEinrideVeriffVoiStarshipをはじめとする産業変革に貢献する企業へ出資してきた。現在までに、モビリティと輸送業界を中心に20件の投資を実施し、そのうち3社がユニコーン入りを果たしている。この新ファンドにより、NordicNinjaは引き続き、日本のサステナビリティ、およびデジタル・イノベーション加速への貢献が期待される欧州クライメートテック、デュープテックのアーリーステージ企業へのコミットメントを継続する予定だ。

EIC、CO2と電気から牛乳を生成する新プロジェクトへ出資

フィンランド発Solar Foodsは、CO2と水素を栄養素として、食用高タンパク質「ソレイン」を生成する微生物を独自開発している。今月初め、欧州イノベーション会議(EIC)は、Solar Foodsが率いるコンソーシアムが提案した550万ユーロの「HYDROCOWプロジェクト」に出資した。この資金は、同コンソーシアムが今後4年間、持続可能なミルク生産技術を開発するために活用される。複数のパートナー大学や企業も参加する同プロジェクトでは、まずRWTHアーヘン大学の包括的な代謝モデルとフローニンゲン大学の最新の遺伝子組み換え技術を活用することで、電気を使って水からCO2と水素を牛乳の主要成分であるβラクトグロブリンに変換する微生物の工学化に取り組む。その後試験段階では、FGen AG(スイスのGinkgo Bioworks Inc.の子会社)の超高速スクリーニング・プラットフォームを利用して、迅速なタンパク質分泌に最適な菌株を選定する。そして、Solar Foodsがその菌株の独立栄養成長条件下におけるタンパク質分泌に関する検証を行う予定だという。

ソフトバンク支援受け、自律走行トラックStack AV

ソフトバンクから10億ドル以上と言われる資金提供を受け、サプライチェーンを「根本的に変える」ことに賭けた自律走行トラックスタートアップStack AVが立ち上がった。フォードとフォルクスワーゲンが昨年閉鎖した自動運転事業、Algo AIを運営していた幹部たちが率いる同社、Algoの本拠地でもあったペンシルバニア州、ピッツバーグを拠点とし、150人体制ですでにテスト車両も走行中だという。反復的なルートと高速道路走行によるドライバーレス配送は、以前から自動化の可能性を示しており、ソフトバンクは消費者のオンライン商取引への移行が進む中、パンデミック時に浮上した物流やサプライチェーンの問題を解決するため、Stack AVへの支援に新たな機会を見出したとされる。商業化の時期は明らかにされていないが、貨物輸送専門のAlphabetのWaymoや、同じピッツバーグ拠点のAurora Innovationなどと競合することになる。

EVバッテリーリサイクルのAscend Elements、約5.4億ドル調達

使用済み電気自動車のバッテリーからカソード(正極)を製造するAscend Elementsが、5億4,200万ドルを調達した。この調達ラウンドは、Decarbonization Partners、シンガポール拠点Temasek、カタール投資庁が主導し、Hitachi Venturesを含む投資家が加わったもので、クリーンテック分野では今年最大規模。Ascendは、ケンタッキー州ホプキンスビルに工場を建設し、古いリチウムイオン電池をスライス・選別して得られる「黒い塊」を正極前駆体(pCAM)と正極活物質(CAM)に加工する。同社は昨年、米エネルギー省から得た4億8,000万ドルの助成金も含め、同州の施設建設に約10億ドルを投じる予定だ。この施設が稼動すれば、年間75万台のEVに対するバッテリー材料供給に十分な能力を持つことになる。同社は、今後バッテリーに関わるエネルギー転換において、持続可能性の向上に向けて中枢を担うと期待されている。

Imbue、「強固な推論」導くAIモデル構築で2億ドル調達

サンフランシスコを拠点のAIラボImbue(旧Generally Intelligent)は、Astera Institute、Nvidia、Notion共同創業者Simon Lastなどを含む投資家が参加したシリーズBラウンドで2億ドルを調達し、同社の評価額は10億ドルを超えた。この資金調達により、推論とコーディングが可能なAIシステム開発の加速に注力する予定だ。Imbueのモデルは推論用にオーダーメイドされており、「優れた推論パターンを強化」するためにデータで訓練され、推論時間中にはるかに多くの計算量を費やすテクニックを使用しているという。具体的には、Imbueは1,000億以上のパラメータを持つモデルをトレーニングしており、推論に関する社内ベンチマークで良い結果を導くよう最適化されている。今回の資金調達で同社の調達総額も2億2,000万ドルに達し、ここ数ヶ月のAIスタートアップの中でCohere(4億4,500万ドル)、Adept(約4.2億ドル)など、最も資金調達額の多い企業のひとつとなった。

シンガポールTemasek、NTU、NUS、新プログラムでディープテックを後押し

シンガポールの有数大学であるNanyang Technological University(NTU)とNational University of Singapore(NUS)が、Temasekと提携し、両大学の研究成果から生まれるディープテック・スタートアップの支援を目的としたパイロットプログラム(約5,500万ドル)を開始した。共同声明によると、このプログラムは、エネルギー転換、バイオテクノロジー、コンピューティング、認知技術など、世界的に需要の高い分野を対象とする。Temasekは、主にXora Innovation(初期段階のディープテック企業に投資するプラットフォーム)を通じて4,770万ドル、NTUとNUSはそれぞれ約360万ドルをプログラムに出資する。これらの組織はまた、参画スタートアップにそれぞれのビジネスやメンターとのネットワークへのアクセスを提供する。当プログラムでは、毎年少なくとも2社のスタートアップを立ち上げ、長期的な世界的成長に向けたサポートを提供する一方、NTUとNUSは共通の知的財産ライセンスフレームワークとプラットフォームを開発し、スピンオフ企業への大学技術のライセンス供与と活用を加速させる予定だ。

インドネシアの製造プラットフォームManuva、800万ドル調達

インドネシア発の製造プラットフォームで、中小規模の製造業者による既製品、カスタムメイドのパッケージやセミブランド商品の製造を支援するManuvaが、最新の資金調達ラウンドで800万ドルを調達した。2018年設立の同社は、中小企業メーカー、消費者向けブランド、またその他バイヤーのパッケージ調達における効率、規模、品質の管理能力を強化するため、段ボール箱、スナックボックス、紙袋、そしてプラスチックカップなどのパッケージングソリューションを提供している。100社以上の製造パートナーを通じ、現在6つのプライベートブランドで300種類以上のパッケージのSKUを製造し、7,000以上の小売業者と100以上の企業顧客に提供中だ。同社は、今回の資金調達により、生分解性パッケージを製品ラインに加えるとともに、ジャワ島、バリ島、またスマトラ島での流通網を拡大する。 植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

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