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イノベーションインサイト:第50回

イノベーションインサイト:第50回

『仏Verkor、ギガファクトリー建設で約20億ユーロを調達』、『金属くずリサイクルのMetaloop、1,600万ユーロ調達』、『ノルウェー、太陽光で北極圏遠隔地のグリーン移行を推進』、『EV向けリチウム硫黄電池Lyten、2億ドル調達』、『Writer、企業向けジェネレーティブAIで1億ドル調達』、『サステイナビリティプラットフォームPulsora、2,000万ドル調達』、『シンガポールAwak Technologies、約2,000万ドル調達』、『スニーカー・マーケットプレイスNovelship、950万ドル調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第50回」をお届けします。

仏Verkor、ギガファクトリー建設で約20億ユーロを調達

フランス発バッテリーメーカーのVerkorは、仏ダンケルクにある同社初のギガファクトリー建設を加速させるため、20億ユーロ以上の資金を調達した。この大型資金には、8億5,000万ユーロのシリーズC資金や、欧州投資銀行からの6億ユーロの融資、さらに欧州委員会の最終承認が必要なフランスからの補助金6億5,000万ユーロが含まれている。このギガファクトリーは、年間16GWhの初期生産能力で、EVやエネルギー貯蔵施設向けのパウチ型および円筒型のバッテリー・モジュールを生産する。2025年までに稼動予定で、約1,200人の直接雇用と約3,000人の間接雇用を創出すると言われている。なお、Verkorは既にルノー・グループとの長期的な商業提携を含む、ティアワン・パートナーとの契約を締結している。

金属くずリサイクルのMetaloop、1,600万ユーロ調達

今月、EUはグリーン移行を実現にするために必要なリチウム、ニッケル、コバルトなどの重要鉱物を確保するため、廃棄物を減らし、リサイクルを強化する計画を発表した。そんな中、金属くずリサイクル・ソフトウェアを開発するオーストリア発Metaloopが、1600万ユーロ以上のシリーズA資金を確保した。2016年に設立されたMetaloopのソリューションは、金属くずの売り手と買い手のマッチメイキングから、物流、リサイクル、資金調達、取引先発掘などをサポートする。デジタル化がなかなか進まない金属取引業界をナビゲートすることが難しい状況下でも、Metaloopのプラットフォームを通じて、製錬所、製鋼所、鋳物工場などのバイヤーが未開拓の金属くずを発掘することができる一方で、Metaloopもフルフィルメント、契約、ロジスティクス編成を引き受ける。同社は現在約50人のチームを擁し、約600社の顧客にサービスを提供しているが、今回の資金調達により、チーム拡大と、プラットフォームの開発をさらに進めていく予定だ。

太陽光で北極圏遠隔地のグリーン移行を推進

ノルウェーは、本土から800km以上離れたスヴァールバル諸島に、世界最北の地上ソーラーパネルを設置した。このパイロット・プロジェクトは、北極圏の遠隔コミュニティのグリーン。エネルギー移行支援を目的に、今週から、360枚のソーラーパネルが観光客向けホテルに改装された旧ラジオ局Isfjord Radioに電力を供給し始める。同プロジェクトが成功すれば、北極圏で今も電力網に接続されておらず、ディーゼル発電機に頼り続ける1,500の施設やコミュニティで、今後この技術が活用される可能性があるという。ディーゼルは購入や輸送にコストがかかるが、北極圏の夏は日照時間が何ヶ月も続くため、雪や氷の反射力、低温による効率向上というメリットとともに、豊富な太陽光を活用することができると期待されている。

EV向けリチウム硫黄電池Lyten、2億ドル調達

カリフォルニア発、EV用軽量リチウム硫黄電池を製造するLytenが、Prime Movers Labが主導し、既存の投資家Stellantis、FedEx、Honeywellなどが参加したシリーズBラウンドで、2億ドルの資金を調達した。リチウム硫黄電池は、リチウムイオン電池よりも大きなエネルギーを貯蔵できる可能性が見込まれている。特記すべきは、リチウムイオン電池の主要ミネラルであるニッケル、マンガン、コバルト、グラファイトが、同社電池に含まれない。理論的には、リチウム硫黄電池が普及すれば、EVの航続距離が伸びると同時に、環境に与える影響も軽減できる。また硫黄がニッケルなどよりも安価である点も無視できない。さらに他のEVバッテリー企業との差別化要因として、使用済みバッテリーのリサイクルに重点を置かず、IoTセンサーの開発に領域を広げているという点が挙げられる。スマートホーム技術に投資している米大手Honeywellが、Lytenの最新調達ラウンドに参加したのもそのためだという。

Writer、企業向けジェネレーティブAIで1億ドル調達

サンフランシスコ発、企業向け「フルスタック」ジェネレーティブAIプラットフォームを開発するWriterは、ICONIQ Growthが主導し、WndrCo、Balderton Capital、ならびに既存顧客であるAccentureとVanguardなどの企業が参加した最新のシリーズBラウンドで1億ドルを調達した。今回調達した資金は、Writerの「業界特化型」テキスト生成AIモデルの開発に充てられる。Writerの大規模な言語モデルは、インシデントレポートやメール、製品説明やビジネス概要まで幅広いコンテンツを生成し、OpenAIのChatGPT Enterpriseや、Typefaceのような急成長中のユニコーンと競合する。競争が激しいジェネレーティブAI業界だが、一部企業はChatGPTが生成するアウトプットの質が十分でなかったため、Azure OpenAIからWriterに乗り換えているという。2020年に設立されたWriterは、Uber、Spotify、Samsung、L'Orealを含む150の企業顧客を持ち、収益は過去2年間で10倍に増加している。

サステイナビリティプラットフォームPulsora、2,000万ドル調達

総合的なサステイナビリティ管理のために設計されたオールインワン・プラットフォームで、以前はpulsESGとして知られていたPulsoraが、2,000万ドルのシリーズA資金を調達した。Galvanize Climate Solutions主導による最新ラウンドは、Aramco Ventures、JetBlue Venturesなどに加え、既存投資家のFINTOP Capital、Builders VC、SOMPO Holdingsなども支援した。今日のビジネス環境では、ステークホルダーや消費者からの持続可能な慣行に対する要求が高まっており、企業はサステイナビリティとESGのアウトプットを追跡、開示、強化する必要性に直面している。Pulsoraは、こうした企業に、データ収集から監査ログ、分析に至るまで、サステナビリティ管理プロセス向け統一プラットフォームを提供する。120億ドル規模の急成長を遂げるサステナビリティ管理セクターの中でも、革新的なソリューションとして認知されつつあるPulsoraは、企業が複雑なサステナビリティ管理業務を極力簡素化できるよう支援する。現在、ESGポートフォリオのパフォーマンス向上を目指すプライベート・エクイティ企業から、サステナビリティ指標の一元化を望む大企業まで、既に400社以上に利用されている。

シンガAwak Technologies、約2,000万ドル調達

末期腎臓病に対する再生技術を用いた透析に注力するシンガポール発メドテック企業のAWAK Technologies(AWAK)は先日、シリーズBラウンドで2,000万ドル以上の資金調達に成功した。このラウンドはVCのLion X VenturesとVickers Venture Partnersが共同で主導した。また、Advanced MedTech、米ヘルスケアVCのEckuity Capital、そしてヘルスケア分野で数十億ドルの運用資産を持つ投資事務所なども参加した。同社によると、また、在宅透析を促進する補完的な製品や、慢性腎臓病患者の在宅ケアを改善するためのデジタルソリューションの統合など、新製品の開発も推進する予定だ。

 

スニーカー・マーケットプレイスNovelship、950万ドル調達

NovelshipはEast Ventures、iGlobe Partners、およびGSR Venturesが主導するシリーズBラウンドで950万ドルを調達した。2018年設立の同社は当初、アジアで最も急成長しているマーケットプレイスとして、 100%オーセンティックのスニーカーや限定アパレル、限定品やデジタルグッズを売買するバイヤーとセラーのためにスタートした。人気ヒップホップアーティストSnoop Doggとのコラボレーションを通じたコレクション拡大に続き、NovelshipブランドのTシャツ、靴下、靴ひも、そして靴底プロテクターなどの新しい自社製品も発表した。現在、同社はアジアを代表するファッションアイコンとなるため、毎年倍増している顧客基盤拡大に伴い、より多くの商品調達に取り組んでいる。その結果、2022年度には掲載商品が150%増加し、女性中心のSKUだけでも140%という著しい急増が見込まれた。その年間平均成長率(CAGR)も、売上高で37%、取引高で55%と顕著に表れているようだ。

植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

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