ある推計によると、先週シカゴで開催されたRSNA 2018(第104回北米放射線学会)では、150社が何らかの形でAIテクノロジーを活用したデモンストレーションを行ったそうです。個人的には、ここ最近勢いを増しているAI(人工知能)やML(機械学習)を活用した診断技術を商業的に採用する動きが出始めており、この領域のスタートアップ企業はグローバル展開を目指す自社の計画にアジアを組み込む必要性が出てきた、という印象を受けました。 RSNAの機械学習展示エリア(Machine Learning Showcase)では、アジアを拠点とするいくつかの企業が人目を引いていました。特に注目を浴びている中国からは、AIアルゴリズムを手がけるスタートアップが10社以上出展し(こちらの記事によると、中国を拠点とする画像AIを手がけるスタートアップ約40社のうち、Yitu Health(依图医疗)、InferVision(推想科技)、12 Sigma(图玛深维)、Deepwise(深睿医疗)、Curacloud(科亚医疗)、Huiyihuiying(汇医慧影)、LinkingMed(连心医疗)、Synyi AI(森亿智能)など)、続いて韓国からスタートアップ3社(Lunit(ルニット)、DeepNoid(ディープノイド)、VUNO(ビューノ))が出展、日本からは1社(LPixel(エルピクセル))が出展しました。日本からは他に、大手の画像機器ベンダーやソフトウェアベンダーも参加しました。 また、アルゴリズム開発者に販売ルートを提供することを目的とする、AIアルゴリズム「プラットフォーム」を手がける企業からも興味深い話を聞くことができました。最も牽引力があるのはおそらくTerarecon(テラリコン)のEnvoyAI(エンヴォイAI)(同社エクスチェンジは28社を掲載、提供されているAIアプリ数は69個、うちアメリカ食品医薬品局(FDA)認証取得済みは17個)で、続いてBlackford Analysis(ブラックフォードアナリシス)(9個/FDA認証取得済みアルゴリズム9個)やQmenta(キューメンタ)(3個/FDA認証取得済み0個)などがあります。アルゴリズム開発者は他にも、顧客やデータへのアクセスを得るためにPACS(医療用画像管理システム)ベンダーや画像機器ベンダーとも手を組んでいます。 規制面では、FDAが2017年7月のデジタルヘルス・イノベーション行動計画(Digital Health Innovation Action Plan)でAIを活用した診断用製品を過去最高の件数を認証したことから、米国内外に拠点をおく数多くのアルゴリズム開発者が米国を最初の選択市場としています。中国の国家薬品監督管理局(NMPA(旧CFDA))は、AIを利用した診断用製品を少なくとも2つ承認しており、2018年8月時点で医療機器カタログを更新したばかりです。韓国の食品医薬品安全庁(MFDS)は、少なくとも1つの製品を承認しており、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、新しいAIアプリケーションに対応する規制を策定中です。 今回の重要ポイントは、医療用のプラットフォーム、ソフトウェア、およびハードウェア企業が、海外の革新的なAIアルゴリズム開発者と手を組むチャンスだということです。日本には「日本生まれ」のAIアルゴリズムスタートアップが少ないのに対し、富士フイルム、キヤノン、コニカミノルタなどの有力な医療用画像ハードウェアおよびソフトウェアベンダーが多数あるのがとりわけ興味深いです。
About the Author ソロモン バーゲン-バーテル(Solomon Bergen-Bartel) バイオテクノロジーや医療品、自動車、ソフトウェア、半導体、無線通信システムなど50を超えるイントラリンクのクライアントとの仕事に従事してきたソロモンは事業展開、資金調達の分野に携わり、中国、台湾、韓国、日本のプロジェクトチームを率いてきた。