『ソフトバンク、英半導体のGraphcoreを完全子会社化』、『BMWとNTTデータ、DX加速に向けルーマニア拠点を開設』、『英CCUSスタートアップ44.01、シリーズAで3,700万ドルを調達』、『Skild AI、多様なロボットに対応するAI頭脳で3億ドル調達』、『Standard Bots、誰もが利用できるロボットアームで6,300万ドル調達』、『水処理膜技術のZwitterCo、5,840万ドル調達』、『SK Telecom、Singtelと提携して次世代通信技術とソリューションを開発』、『シンガポールのKeppel DC REIT、日本でデータセンターを1.5億で取得』を取り上げた「イノベーションインサイト:第92回」をお届けします。

ソフトバンクグループは、英国発半導体メーカーのGraphcoreを買収し完全子会社とした。Graphcoreは2016年に設立されて以降、AIを活用した「インテリジェンス・プロセッシング・ユニット(IPU)」という新しいタイプのプロセッサを開発する。これは既存のGPUより高効率で、複雑な機械学習モデルを実行する能力を持つ。英国ブリストルに本社を置く同社はこれまでに約7億ドルを調達、ケンブリッジ、ロンドン、ポーランドのグダニスク、台湾の新竹にもオフィスを構える。AIハードウェアの需要は世界的に急増しており、ソフトバンクはこの機会を活かしてAIに90億ドルを投資することを目指している。この買収により、Graphcoreはスケールアップに必要な資金を得るとともに、SoftBankの大手顧客へのアクセスも可能となる。Graphcoreはまた、ソフトバンクのグループ企業、例えばArmとの協力も期待されている。

ドイツの自動車メーカーBMWが、日本のNTTデータのルーマニア支社と提携し、ルーマニアのクルジュ=ナポカ市に新たなITソフトウェアハブを開設する。新ハブ「BMW TechWorks Romania」は、2027年までに最大1,000人を雇用し、BMWのサプライチェーンのためのITシステムや、自動車生産拠点をデジタル化するBMWのiFactory向けのシステムを提供する計画だ。BMW TechWorks Romaniaは、すでにドイツ、南アフリカ、アメリカ、ポルトガル、中国にあるBMWのグローバルITハブネットワークに加わることになる。クルジュ=ナポカ工科大学(UTCN)もこの提携において重要な役割を果たし、AI研究所を通じて優れたIT人材と技術を提供する予定だ。クルジュ=ナポカは現在テックハブとして急速に成長しており、同市には自動車業界の大手であるコンチネンタルやボッシュの研究開発センターもあり、ボッシュは製造施設も同時運営している。

オマーンと英国を拠点とするCCUSスタートアップの44.01が、CO2を地下に貯留するソリューションのために3,700万ドルのシリーズA資金を調達した。この資金調達ラウンドには、Equinor Ventures、Air Liquide Venture Capital、Amazon’s Climate Pledge Fund、住友商事などの有名企業が参加している。2020年に設立された44.01は、大気中から直接捕捉したCO2や、除去が難しい産業プロセスからのCO2を塩水や廃水に溶かし、それを地下に注入して岩に変える技術を持つ。鉱物化は通常数千年かかる自然のプロセスであるが、44.01はこれを12ヶ月以内に短縮できる。同社は、現在オマーンとUAEで2つのパイロットプロジェクトを進行中であり、将来的には世界中での展開を狙う。新たに調達した資金は、44.01が商業規模のプロジェクトを開発し、国際的な展開を拡大するために利用される。


ロボット用のAI搭載頭脳を開発するSkild AIのBezos Expeditionsなどが主導するシリーズA資金ラウンドで3億ドルを調達し、評価額は15億ドルに達した。Skild AIは、多様なタスクを異なるシナリオで実行できる「共有汎用脳」を構築しており、物体の操作、移動、ナビゲーションなどの機能を持つロボットに装備可能であるとしている。このAIインテリジェンスは、家庭内や産業環境で物体を器用に操作するように設計された高度なコンピューター・ビジョンを持つ人型ロボットや、あらゆる物理的環境でナビゲート可能な耐久性の高い四足歩行ロボットなどにも統合できるという。従来、ロボットの頭脳は専門化され、狭い範囲のタスクを実行することのみに集中していたが、Skild AIはこの現状を変えるべく、多様なロボットにも接続でき、異なる操作を実行できる高汎用性AI頭脳の開発に邁進する。

ニューヨーク発 Standard Botsは、General Catalystが主導し、Amazon Industrial Innovation FundとSamsung Nextが参加したシリーズBラウンドで6,300万ドルを調達した。同社は、高度で適応性の高いロボットを誰もが利用できるようにすることを使命としており、小さな個人商店から大企業まで、どのような会社でも簡単に活用できるロボット工学を開発中だ。ハードウェアとソフトウェアを設計する同社、既に18kgの可搬重量と1.3mのリーチを持つ協働ロボットアーム「RO1」を発表済みだ。同社によると、これらのロボットは、複雑な組み立てや食品調理、食器洗いなど、従来のロボット工学ではほとんど手つかずだった用途や産業でも利用できるという。ロボットに加え、AIを活用してロボットの能力を強化するモデルも開発している。人間の実演を観察することで、ロボット自身が複雑な作業を学習できるようになるそうだ。複雑な溶接治具の取り付けから衣類の折り畳みまで、その適用範囲は、多岐にわたる。

先進的な膜技術を通じて水処理プロセスを変革する ZwitterCo は、Evok Innovations主導にて5,840万ドルのシリーズB資金調達ラウンドを完了した。ろ過膜は水処理において広く使われているが、過去半世紀にわたってこの分野での革新的な進展はなかった。同社は新しい双性イオン化学を用いた膜を導入し、有機汚染に対する高い免疫耐性を生み出す。水中に含まれる物質の吸着で膜が徐々に詰まる「ファウリング」後も、効率的かつ持続的に機能し続けることができるという。過去2年間で同社製品は世界中で50以上の産業施設に設置され、顧客の大幅なコスト削減と新たな収益源の開拓をサポートした。例えば、水不足地域のバイオ加工メーカーは、同社技術で発酵廃水の80%をリサイクルすることに成功し、持続可能なタンパク質製品の生産を拡大した。北米最大級のバイオマス由来天然ガス施設では、肥料濃縮プロセスにZwitterCoの膜が統合され、1日あたり40万ガロンの清水を生成した。


シンガポールの通信企業Singtelと韓国の通信事業者SK Telecomが提携し、次世代の通信技術とソリューションの開発を進めることになった。両社は覚書(MoU)を通じて、今後2年間で通信ネットワークの性能、セキュリティ、顧客体験を向上させることを目指し、AIやオーケストレーションツール、バーチャルネットワークといった分野での革新を狙う。これらは6Gへの進化に向けて重要な要素となる。さらに、バーチャル化やネットワークの革新に関するホワイトペーパーを作成し、5Gお6Gの提供を視野に入れる世界の通信事業者にとって有益な情報を提供する予定だ。この提携は、AIを活用したインフラストラクチャーの開発や、サービス復旧能力の強化にも焦点を当てている。両社はフィンテック、スマートモビリティ、ゲーム、Web3などの分野におけるシームレスなサービス統合を実現するため、通信APIとオープンゲートウェイの開発を先導することを目指す。

シンガポール上場のKeppel DC REIT Managementが、東京にあるハイパースケールデータセンターを1億4,900万ドルで取得し、日本市場への進出を果たした。この買収は、2019年に完成した敷地面積190,166平方フィートの東京データセンター1を対象としており、Keppel DC REITが急成長する日本のデータセンター市場を開拓する第一歩となる。この施設は、フォーチュン・グローバル500企業および大規模データセンター事業者に、一括借り上げ契約で賃貸されており、西東京に戦略的に位置している。残りのリース期間は約7年であるが、この買収により同社のポートフォリオ占有率を高め、主要なデータセンターハブにおける高品質資産へのエクスポージャーを増加させると期待されている。これは、Keppel DC REITの地理的フットプリントを多様化し、アジア太平洋および欧州市場における地位を強化する戦略を支援するものである。
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