『Unseenlabs、海洋監視技術で8,500万ユーロ調達』、『板ガラス業界で欧州初、CO2回収実証実験にNSGが参加』、『EU、包装廃棄物削減に向け暫定合意』、『テックジャイアント着目のFigure AI、6億ドル超調達』、『職場の安全性向上を目指すIntenseye、6,400万ドルを調達』、『自動車型eVTOLのAlef Aeronautics、2025年ローンチに向け始動』、『シンガポール発フィンテックのFluid、520万ドル調達』、『マレーシア中央研究機関MRANTI、今後の注力分野を発表』を取り上げた「イノベーションインサイト:第73回」をお届けします。

フランスを拠点に海洋監視ソリューションを開発するUnseenlabsが、8,500万ユーロを新規調達し、これまでの調達資金総額も1億2,000万ユーロに達したことを発表した。Unseenlabsは、船舶から発信される無線周波数信号を検出する11基の衛星を軌道上に配備している。これらの信号は、船舶の正確な位置特定を可能にするため、船主、保険会社、漁業団体、政府などが船団監視、環境保護、捜索救助、航路最適化をはじめとするさまざまな用途で活用している。今回の資金調達により、同社は2025年末までにさらに10基の衛星を配備し、観測能力を拡大する予定だ。また、特に米国やアジア市場での国際的なプレゼンスを強化し、石油・ガス、保険、オフショア・エネルギーなどの分野での地位を固めることを目指している。

ガラスメーカーの日本板硝子(NSG)グループが、英国グリーンゲートの板ガラス製造工場において、板ガラス業界で欧州初となるカーボンキャプチャーの実証実験を開始した。この検証は、ガラス製造、エネルギー廃棄物、セメントの3つの難燃性産業における低コスト炭素回収ソリューションの展開加速を目的に、英国の炭素回収スタートアップC-Captureが主導する270万ポンド相当のXLR8 CCSプロジェクトの一環として実施される。具体的には、C-Capture独自の溶媒ベースの炭素回収装置が、工場のフロート窯に設置され、排ガスからCO2を分離するというもの。同検証は、実際の産業用途でC-Captureの技術を評価するために数ヶ月間続く一方、XLR8 CCSプロジェクトとしては他にも、プロジェクト・パートナーであるガラス研究開発センターのGlass Futures、建材会社のHeidelberg Materials、廃棄物エネルギー会社のEnergy Works Hullが所有する工業用地で、さらに5件の炭素回収実験が実施される予定だ。

EUは今週、現行の包装及び包装廃棄物指令(PPWD)の改定について暫定的な合意に達し、廃棄物防止目標を課すとともに、特定の不要な包装を禁止し、再利用目標を設定する措置を打ち出した。この提案には、包装材を2030年までに5%、2040年までに15%削減するという目標が掲げられている。2030年以降は、使い捨てプラスチックによる果物や野菜の包装や、プラスチック製のソース小袋の使用も禁止される(紙製は使用可能)。さらに、「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFASも、食品に接触する包装への使用が禁止される。新しい規則では、2029年までに加盟国は少なくとも90%のペットボトルと缶の分別回収を保証しなければならない。これを達成するため、各国はデポジット・リターン制度(DRS)を実施する、またはその免除のため2026年までに80%の回収率を証明する必要がある。本案の正式な採択には、EU各国と議会の承認が必要となる。


人型ロボットを開発するFigure AIが先週、26億ドルの評価額で、Microsoft、Amazon、Nvidiaなどのテック大手から6億7,500万ドルの新規調達に成功した。同ラウンドには、他にもIntelやSamsungのVC部門、Open AI、LG Innotek、ジェフ・ベゾスのExplore Investmentsなどが参加した。2022年設立のFigure AIは、Figure 01と呼ばれる多目的ロボットを開発している。Figure 01は、人手不足が深刻な製造業、海運・物流業、倉庫業、小売業などさまざまな業界で、危険が伴う業務をこなす。先週発表されたデモ動画では、2本足で歩く同社のロボットが、5本指の手を使ってプラスチックの木箱を拾い上げ、さらに数歩進めてベルトコンベアーに箱を載せる様子を見ることができる。この追加資本は、人型ロボットの開発と商業的拡大の加速に使用される。なお、Figure AIは、Figure 01が同社の最終目標である「日常的なタスクを自律的にこなす」ためには、より強固なAIシステムを開発する必要があるとしている。

AIを活用した産業安全ソリューションを開発するNY発Intenseyeは、最新のシリーズBラウンドで6,400万ドルの調達に成功した。同社は、2021年のAXA XLとのパートナーシップを含め、The HartfordやUSIなど数多くの保険会社と緊密に連携しており、同業界顧客にサービスを拡大している。その中核となるのが、職場の安全における主要な指標を継続的に監視する企業対応のコンピュータビジョンAIプラットフォーム。マニュアル監査では見落とされがちなこれらの指標は、業務上で起こりうる負傷や病気に先行する危険な行為や状態を特定する上で、極めて重要な役割を果たす。昨年だけで3,600万件以上の指標を特定したIntenseyeのソリューションは、効率性の向上やコンプライアンスの確保に加え、職場の事故を軽減する有意義な変化を推進する力を顧客に与えている。今回の資金注入により、intenseyeは、様々なユースケースを最適化するための大規模言語モデルとモバイルサポートを取り入れ、技術エコシステムをさらに強化する意向だ。

Teslaの初期投資家であるティム・ドレイパーとSpaceXの支援を受けるAlef Aeronauticsが、同社の電動垂直離着陸機(eVTOL)の予約注文が2,850台に達した今、2025年のローンチを目指すと発表した。現eVTOL市場における既存モデルのほとんどがジェット機に似ているデザインで、側面に翼が取り付けられていたり、ヘリコプターのような大きなローターが付いていたりするのに対し、MWC 2024でハーフサイズモデルとして公開されたAlefのModel Aは、実際の自動車に似た装備で、車内を空気が流れるようにメッシュシェルで内側のローターを保護している。Alefの車両は、各車輪に4つの小型エンジンを搭載し、通常の電気自動車のように、時速25〜35マイルで道路を走行することを主目的として設計されているが、車の前後に装着され、それぞれ異なる速度で独立して回転する8つのプロペラを使用することで、時速110マイルの巡航速度で、あらゆる方向に向けて空を飛ぶこともできる。重さ約380kgの同モデルは、超軽量車としてゴルフカートのような小型電気自動車に分類されるため、2025年の発売に向けて、主要な規制当局の認可を取得しやすくなると想定されている。


シンガポールを拠点に、B2B取引向けの後払い決済などを支援するFluidは、Insignia Ventures Partnersが主導するエクイティラウンドで520万ドルを調達した。2023年初めに設立されたFluidは、今回のラウンドにより製品機能を拡大し、業界を問わずより大規模なサプライヤーを同社のプラットフォームに取り込む計画だ。B2B決済の70%以上が後払いや信用取引であることに着目した同社は、後払い方式にはリスクが伴うため、サプライヤーは尻込みしがちである点を指摘する。しかし、これは顧客の制限につながることから、企業成長を妨げる可能性もあり、難しい判断を迫られることとなる。一方バイヤー側にとっても、サプライヤーの選択肢が狭まり、調達と支払いのプロセスが間延びしてしまうリスクがある。Fluidのプラットフォームでは、サプライヤーが信用条件に合致したバイヤーを引き受けられるようにする一方で、バイヤーが購入資金を別途調達できるようにすることで、両方面からこの課題にアプローチする。

マレーシア科学技術&イノベーション省傘下のアクセラレーターであるMalaysian Research Accelerator for Technology & Innovation(以下MRANTI)が、今後のフォーカス分野として自律化技術、ライフサイエンス、サステナビリティ、5G、また第4次産業革命技術を掲げた。自律化技術では、ドローンやロボット、自律走行車などに注目するとともに、ライフサイエンスにはヘルステック、アグリテック・バイオテックなどを含むという。同時に、MRANTIは国家としての5G技術の実証基盤となるほか、サステナビリティ技術の探求も行う予定。Technology Park MalaysiaとMalaysian Global Innovation and Creativity Centerの統合を通じて設立されたMRANTIは、マレーシアの中心的な研究商業化機関として、コネクターやインキュベーターとしての役割を果たし、統合インフラ、プログラム、サービス、設備などのリソースを提供することで、革新的な新技術の開発をアイデアから商業展開まで支援する。

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