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必読!海外イノベーション・スタートアップ最新情報:注目8社・最新トレンドまとめ|2025年8月29日版

必読!海外イノベーション・スタートアップ最新情報:注目8社・最新トレンドまとめ|2025年8月29日版

『テルモ、英メドテックOrganOx買収で臓器移植事業参入へ』、『英Paragraf、グラフェン電子機器開発で5,500万ドルを調達』、『石油大手によるCCSプロジェクト「Northern Lights」が稼働開始』、『輸送中のリスク管理に変革を – Overhaulが1億500万ドル調達』、『Keychain、CPGメーカーの効率化に向け3,000万ドル調達』、『Method AI、ロボット支援手術技術開発に向け2,000万ドル調達』、『インドネシアのBlitz Electric Mobility、プレシリーズ資金を確保』、『Naluri、アジアにおけるデジタルヘルス拡大に向け500万ドル調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第148回」をお届けします。

テルモ、英メドテックOrganOx買収で臓器移植事業参入へ

大手医療機器メーカーのテルモが、臓器移植用の肝臓保存デバイスを開発する英国発OrganOxを約15億ドルで買収、完全子会社化すると発表した。オックスフォード大学のスピンオフ企業として2008年に設立されたOrganOxは、肝臓臓器の保存期間延長、そして保存・輸送中の臓器状態をリアルタイムで監視する技術によって、移植成功率を向上することを目指している。OrganOxの肝臓灌流保存システムは、酸素化血液、薬剤、栄養素を体温に近い温度で供与臓器に供給する。これまでに世界中で6,000件以上の肝移植に使用され、2024年の同社売上高は約5,520万ポンドに達したという。テルモは、臓器提供者不足に直面する臓器移植分野には、大きなアンメット・メディカル・ニーズとともに、高い成長余地があるとしている。長年にわたりOrganOxとの協力関係を築いてきた同社は、今年3月にTerumo Ventures通じた戦略的投資を実施したばかりだった。 

 

 

英Paragraf、グラフェン電子機器開発で5,500万ドルを調達

ハンブルクSaaSスタートアップのPlancraftが、最新のシリーズBラウンドで3,800万ユーロを調達した。業界標準の半導体プロセスを用いて製造されるグラフェンベースの電子デバイスを専門とするParagrafが、アラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンドであるMubadalaが主導する最新のシリーズCラウンドで5,500万ドルを調達した。2018年にケンブリッジ大学からスピンアウトして設立された同社の技術は、グラフェンのユニークな特性によりシリコンベースの代替品よりも高速で、より正確に、かつ低消費電力で動作するデバイスを開発する。また、極限環境下でも優れた性能を発揮することから、極低温環境を必要とする量子コンピューティングなどでも活用されている。Paragrafは現在、米国、欧州、中東、アジア全域での事業拡大を進める中、すでに英国ケンブリッジシャー州で2ヶ所、米国サンディエゴで1ヶ所、合計3つの施設を運営している。今回の資金調達により、同社の製造技術拡大と生産能力増強が加速され、グラフェン電子機器市場への本格参入への準備が整う見込みだ。 

 

 

 

石油大手によるCCSプロジェクト「Northern Lights」が稼働開始

石油大手EquinorTotalEnergiesShellによる合弁事業として知られるNorthern Lightsは、欧州で最も注目されている炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの一つであり、産業企業向けに炭素貯留サービスを提供することを目的としている。今週、Northern Lightsはノルウェー大陸棚へのCO2注入による恒久貯留を開始したと発表した。CO2はノルウェーにあるHeidelberg Materialsのセメント工場で回収され、船舶で中間ターミナルへ輸送された。その最終段階として、圧縮ガスを100キロにおよぶ海底パイプラインを通じて、海底2,600メートル下の恒久貯留層へ送り込み始めた。同社によると、年間150万トンのCO2を貯留可能であるものの、この容量は既に「満杯状態」にあることから、既に年間500万トンへの容量拡大を表明している。この拡張には約63,500万ユーロの費用が必要とされるが、うち13,100万ユーロがEUからの補助金でまかなわれる予定だ 

 

 

 

 

輸送中のリスク管理に変革を – Overhaulが1億500万ドル調達

貨物リスク管理技術を提供するOverhaulは、Springcoast Partnersが主導し、Edison PartnersMidCap Financialが支援するシリーズCラウンドで1500万ドルを調達した。調達資金はAIツールの強化、プラットフォーム機能の拡充、買収の推進に充てられる。Overhaulのプラットフォームは、リアルタイム輸送監視、予測インテリジェンス、迅速なインシデント対応を統合し、盗難・損傷・遅延などのリスクを軽減する。可視性を現実の物流課題に対処する実用的な知見に変換することに注力する同社は、予測・アラート・在庫管理の強化に向けAI機械学習への投資を進めている。FreightVerify買収により品目単位の追跡と在庫インテリジェンスが追加され、サプライチェーン技術分野の統合戦略を強化するOverhaulは、99.9%という圧倒的なを達成しながら、薬、医療、テクノロジー、物流、消費財分野のFortune 1001.4兆ドル相当に及ぶ貨物取引にあたっている。 

 

 

 

Keychain、CPGメーカーの効率化に向け3,000万ドル調達

消費財メーカーの業務近代化を目指すKeychainは、Wellington ManagementBoxGroupが主導するシリーズBラウンドで3,000万ドルを調達した。同社のプラットフォーム「KeychainOS」はAIを活用し、調達、サプライヤー管理、購買、在庫監視を効率化する。価格・信頼性・品質でサプライヤーをランク付けし、経時的な変動を追跡。購買注文を自動化し、ポリシー遵守を確保しながらミスを最小限に抑えることが可能だ。ダッシュボードで原材料・包装資材・完成品を監視し、在庫切れや期限切れが近づくとアラートを発する。同プラットフォームは食品安全監査の負担軽減や、小売業者と適格製造業者との連携も支援する。Keychain CEOによると、従来のシステムは現代の複雑な製造プロセスに対応できていないが、AIを活用することによりスマートで迅速な運営手段を提供できるそうだ。現在KeychainOSは月間10ドル超のプロジェクトを処理し、米国小売トップ10のうち8社、消費財大手10社のうち7社にサービスを提供中だ最新調達金は市場拡大と、生産計画・財務追跡の新機能開発に充てられる。 

 

 

 

Method AI、ロボット支援手術技術開発に向け2,000万ドル調達

ボストンMethod AI   は、ロボット支援による癌術向け画像プラットフォーム開発推進のためシリーズAラウンドで2,000万ドルを調達した。同社術は、手術中に連続的な3D超音波画像を提供することで腫瘍可視化の課題を克服するよう設計されている。表層下の解剖マップが生成され、AI生成手術計画に匹敵するリアルタイムガイダンスを提供するというもの。現状の課題として、腫瘍が臓器内に部分的または完全に埋没している際、外科医が切除縁を判断するのが極めて困難となっている。これが腫瘍の不完全切除、合併症、臓器機能喪失などにつながるリスクとなりうるが、Method AIの技術によりこれらの課題を大幅に改善できると期待されているロボット手術は既に臨床試験で再入院率や血栓の減少効果が実証されており、膀胱腫瘍切除で最も一般的に使用されている。世界のロボット手術システム市場は年平均成長率12.1%で拡大し、2034年までに92ドル規模に達すると予測される。そして、医療分野におけるAI市場は、2027年までに190ドル規模に達すると見込まれている。 

 

 

 

 

インドネシアのBlitz Electric Mobility、プレシリーズ資金を確保

インドネシア拠点のEV物流サービス企業Blitz Electric Mobilityは、マレーシアのVynn Capitalが主導し、既存機関投資家であるADB Ventures、FiveFortyAlpha、BonBillo Fund、Peak XVも引き続き参加したプレシリーズAラウンドで資金調達を実施した。本資金は、Blitzの規律ある成長戦略およびインドネシア国内30都市への拡大に活用される。同社は効率性、収益性、拡張可能な運営に注力し、ユニットエコノミクスの強化と長期的な価値創出を目指す。Blitzの資産軽量・技術優先モデルは即時配送ニーズに対応し、社内物流の複雑性を低減、企業向けクリーンな電動インフラの推進を可能にする。B2Bサービスは即時配送・当日配送、ホワイトラベル物流、クライアントブランドによる配送管理を含む。Blitzは既に1,400万件以上の配送を完了し、1,000台以上のEVバイクを導入、累計走行距離は2億2,000万kmに達している。2024年には収益を3倍に拡大するとともに資金消費率を70%削減し、利益率を大幅に改善した。Grabプラットフォームとの統合およびNVIDIAインセプションプログラムへの採用により、Blitzはインドネシアを代表するEV物流プロバイダーとしての地位を強化し、急成長する小包・eコマース市場における主要プレイヤーとしての存在感を高めている。 

 

 

 

Naluri、アジアにおけるデジタルヘルス拡大に向け500万ドル調達 

マレーシア拠点のデジタル従業員健康・ウェルビーイングサービス企業Naluriは、TELUSグローバルベンチャーズのPollinator Fund for Good主導によるシリーズBラウンドで500万ドルを調達した。住友商事アジア投資会社および M Venture Partnersも参加し、シリーズB総額は1,400万米ドルに達した。同社はメンタルヘルス支援、予防的行動医療、慢性疾患管理を従業員向けデジタルプログラムに統合し、健康診断、コーチング、24時間365日の危機対応サポートを提供する。既に銀行、保険、エネルギー、通信、物流、専門サービスなど多業種の大企業顧客にサービスを展開し、既にインドネシア、マレーシア、シンガポール、タイに進出している。TELUS Healthとの新たな商業提携により、Naluriは従業員支援プログラムサービスを東南アジア8市場にも拡大する。企業がコスト管理と生産性向上のため従業員のウェルビーイングに注力する中、Naluriの包括的モデルは、同地域で高まる職場健康ソリューションへの需要を捉えることができる。本資金は、フィリピン・ベトナム進出と並行し、1年以内の黒字化達成に向けた事業支援に充てられる。 

 

 

 

 

植木 このみ
About the Author

植木 このみ

オックスフォード本社を拠点に、日本ならびにアジア大手企業を対象としたマーケティング事業を統括する。2020年より海外エコシステムの最新情報を日本語で提供する「イノベーション・インサイト」を執筆。また欧州におけるイベント企画・運営も担当。

ラフバラー大学にて国際経営学修士号を取得後、ロンドンの日系企業でEMEA在日本企業の経営ビジネス戦略構築をサポートした経験を持つ。

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