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海外イノベーション・スタートアップ最新情報:最新トレンドまとめ|2025年10月3日版

海外イノベーション・スタートアップ最新情報:最新トレンドまとめ|2025年10月3日版

『Nscale、欧州史上最高額となる11億ドルのシリーズB資金を調達』、『仏Waat、住宅・商業ビルでのEV充電インフラ拡大で1億ユーロ調達』、『高齢者向けテクノロジーのInspiren、1億ドルを調達』、『LLM搭載検索で採用を変革するJuicebox、3,000万ドルを調達』、『INAとEDC、カナダ・インドネシア間投資機会拡大に向け戦略的提携を締結』、『海洋ロボティクスNeptune Robotics、日本郵船らから5,200万ドルを調達』、『金融業界の発展に向け、Sahamati LabsとGoogle Cloudが提携』、『888VC、インドのディープテック支援に向け1,460万ポンドのファンドを設立』を取り上げた「イノベーションインサイト:第153回」をお届けします。

Nscale、欧州史上最高額となる

11億ドルのシリーズB資金を調達

英国発Nscaleは、欧州におけるAIインフラ整備加速を目的に、最新のシリーズBラウンドで11億ドルを調達した。同ラウンドは欧州史上最高のシリーズB資金とされ、ノルウェーの産業投資グループであるAkerが主導、Nokia、Dell、Nvidiaを含む複数の企業が参加した。2024年に設立された同社は、AIデータセンターの開発を専門とし、自社所有およびコロケーション・データセンターにおいて、垂直統合型のコンピューティング、ネットワーク、ストレージ、管理ソフトウェア、AIサービスを提供している。現在すでにAkerと提携し、ノルウェーでOpenAIAIデータセンター「Stargate Norway」、また英国においても「Stargate UK」の開発を進めている。今回の投資は、強力な基盤AIモデルのトレーニングと実行に必要な高性能コンピューティング・インフラに対する継続的な需要を強調する結果であり、その投入資金は、Nscaleの欧州、北米、中東における大規模AIインフラの展開推進に充てられる予定だという。 

 

 

 

仏Waat、住宅・商業ビルでの

EV充電インフラ拡大で1億ユーロ調達

フランス発EV充電スタートアップのWAATは、DWSBpifranceから1億ユーロの投資を確保した。競合他社のElectraなどが急速充電ステーションに注力する一方、WAATは実際のEV充電の約80%が集中する住宅・商業ビルをターゲットとしている。2018年設立のWAATが開発する中核技術は、動的負荷分散に焦点を当てることで、建物の電力システムに過負荷をかけずに、複数の車両へ充電電力を効率的に分配する。これにより、建物の所有者は高額な電力設備の増強を回避できる。同社のプラットフォームは、単一のインターフェースを通じて設置調整、メンテナンス計画、ユーザー管理も一括して処理する。なお、今回の資金調達により、WAATはフランス国内ならびに欧州での成長加速、そして技術ソリューションのさらなる開発を進めるという。その一例として、機械学習を活用し、動的負荷分散ソリューションを強化することで、充電時間やコスト、さらに電力網への影響の最適化も図る計画で、今後2030年までに25万基の充電ポイントの運営を目指している。 

 

 

高齢者向けテクノロジーのInspiren、1億ドルを調達

米国ではベビーブーマー世代の高齢化が進み、2030年には65歳以上の人口が7,300万人を超えると見込まれている。介護施設運営者は、入居者のケアの高度化、人手不足、サービス品質への高い期待に直面しているが、技術革新は追いついていないのが現状だ。こうした課題に対処すべく、元グリーンベレー隊員で心臓胸部看護師でもあるマイケルワン氏が2016年に創業したのがInspirenである。同社はこのたび、Insight Partnersが主導し、AvenirおよびPrimary Venture Partnersが参加するシリーズBラウンドで1億ドルを調達。累計調達額は1億5,500万ドルに達した。Inspirenのプラットフォームは、入居者の安全、スタッフの最適配置、データ分析、緊急対応などを統合して提供し、プライバシーを保ちながら動作を感知する独自デバイス「AUGi(オーギー)」を中核に据えている。Inspiren導入した介護施設では、転倒事故の減少やケア品質の向上といった明確な成果が報告されている。資金人材実績の三拍子がそろった今、Inspirenは全米規模での展開を加速させ、高齢者ケアのあり方を再定義しようとしている。 

 

 

 

 

LLM搭載検索で採用を変革するJuicebox、3,000万ドルを調達

AIを活用した採用検索エンジンを手がけるJuiceboxは、Sequoia Capitalが主導するシリーズAラウンドで3,000万ドルを調達。累計資金調達額は3,600万ドルとなった。同社の提供する「PeopleGPT」は、履歴書やWebサイト、公開プロフィールなどを自然言語で解析し、従来のキーワード検索とは異なる、人間らしい推論に基づく候補者検索を実現する。Juiceboxは2022年にY Combinatorでデビューし、製品開発を経て2023年末にPeopleGPTをリリース。わずか4人のチームながら、すでに2,500社以上に導入され、年間経常収益(ARR)は1,000万ドルを突破している。Cognition、Ramp、Perplexityといった企業も導入している。自動での候補者連絡や面接調整といった機能も備えた同ツールは、採用担当者の業務を効率化。AI時代の人材獲得競争において、スタートアップの“定番ツール”として定着しつつある。

 

INAとEDC、カナダ・インドネシア間投資機会拡大に向け戦略的提携を締結

Export Development Canada(EDC)と Indonesia Investment Authority(INA)は、両国間の投資協力を強化し、持続可能な経済発展を促進するため、総額約5億9,200万ドル規模のマーケットリーダー・パートナーシップに関する覚書を締結した両機関の共同声明によれば、このMOUはインフラ、クリーンテック・再生可能エネルギー、アグリフードといった重点分野において、両国企業を結ぶ融資ソリューションや共同事業機会の創出を目的とした協力枠組みを定めているEDCはグローバルな資金調達能力を有し、INAは現地での投資判断権限と市場知見を持つ。このパートナーシップにより、両国企業に新たな成長機会を提供するとともに、社会経済協力の深化を図る。今回の合意に基づき、EDCはINAの投資案件向けに最大8億2,500万カナダドルの資金枠を設定し、両国の重点分野におけるプロジェクト推進を可能にする。 

 

 

 

 

海洋ロボティクスNeptune Robotics、日本郵船らから5,200万ドルを調達 

海洋ロボティクスNeptune Roboticsは、Granite Asiaが主導し日本郵船も戦略的投資家として参加したシリーズB資金調達ラウンドで5,200万ドルを調達した。同社は、人間のダイバーよりも3〜5倍速く船体清掃を行う水中ロボットを開発している。この技術により、最大級のばら積み貨物船の船体清掃を24時間未満で完了することが可能であり、昼夜を問わず稼働できる。さらに、透明度の高い水域から濁った環境、さらには時速4ノットの潮流下においても展開可能である。従来ダイバーが担っていた高リスクの作業を代替することで、安全性と効率性を大幅に向上させる。 

 

金融業界の発展に向け、Sahamati LabsとGoogle Cloudが提携

Sahamati傘下のイノベーション部門でアカウント・アグリゲーター(AA)エコシステムを推進する業界連合として活動するSahamati LabsAAフレームワークへのAI統合に向けて、Google Cloud Indiaとの提携を発表した。この提携には、融資、保険、資産管理の分野で拡張可能なAI主導型ソリューションを開発するAI Centre of Excellenceの設立が含まれ、今後Google CloudのジェネレーティブAI機能を活用し、予測分析、パーソナライズされた金融アドバイス、高度な不正検知を提供していく。Google Cloudのプライバシー保護技術は、機密性と規制順守も確保する一方、インド言語への対応強化により、金融包摂が大規模に推進され、アクセスの民主化促進が期待される。 

 

 

888VC、インドのディープテック支援に向け1,460万ポンドのファンドを設立

初期段階のアクセラレーター兼VCである888VCは、約1,460万ポンド規模の初の代替投資ファンド(AIF)を設立すると発表した。今後3年間で、1社あたり約16万~34万ポンドを投資し、インドを拠点としつつグローバル展開が可能なスタートアップを対象とする方針である。本社をバンガロールに置く888VCは、資金提供に加え、指導、メンタリング、ネットワーク支援を行っており、同社ポートフォリオ企業の時価総額はすでに3億7,200万ポンドを超えている。新ファンドはインド証券取引委員会(SEBI)にカテゴリーI AIFとして正式登録済みである。このカテゴリーは社会的・経済的に望ましい事業を支援するファンド向けに設計されており、優遇措置や規制上の特例が適用される。従来、インドのディープテック分野はフィンテックやeコマース、消費者向けベンチャーに比べ初期段階での資金調達が難しかった。888VCはこの課題を打破し、インドにおけるディープテック変革の中心的存在となることを目指している。 

植木 このみ
About the Author

植木 このみ

オックスフォード本社を拠点に、日本ならびにアジア大手企業を対象としたマーケティング事業を統括する。2020年より海外エコシステムの最新情報を日本語で提供する「イノベーション・インサイト」を執筆。また欧州におけるイベント企画・運営も担当。

ラフバラー大学にて国際経営学修士号を取得後、ロンドンの日系企業でEMEA在日本企業の経営ビジネス戦略構築をサポートした経験を持つ。

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