『サイバー脅威対策の仏Filigran、5,800万ドルを調達』『EIT、イノベーション・技能プログラムに10億ユーロ近くを投入』『AIデータセンターの「より賢く、より効率的」な稼働を支援するため、Phaidraが5,000万ドルを調達』『AR手術ナビゲーションと医療画像診断のMediViewが資金調達』『Supabaseが1億ドルを調達、企業価値も50億ドルに』『マツダ、西ジャワに4,000億ルピア投資(約2億4,000万ドル)』『下水からエネルギー生成へ、世界4ヶ所のみで稼働する技術』『韓国LG、インド現地法人が上場完了』を取り上げた「イノベーションインサイト:第154回」をお届けします。

フランス発サイバーセキュリティ企業のFiligranが、Eurazeo、Insight Partners、Accel、Deutsche Telekomが参加した最新のシリーズCラウンドで5800万ドルを確保し、資金調達総額も1億ドルを突破した。2022年に設立されたFiligranは、拡大するサイバー脅威とリスク予測を支援するオープンソース・プラットフォームの開発を進めている。現在は、サイバー脅威インテリジェンス向けのOpenCTIと、サイバー攻撃シナリオをシミュレートするOpenBAS2種類の製品を提供しており、すでに欧州委員会やFBIを含む6,000以上の官公庁・民間組織に採用されているという。新たな調達資金は、ダイナミックなサイバーリスク管理およびコンプライアンスツールである別商品、OpenGRCの開発に充てられると同時に、日本とサウジアラビアでの現地法人設立、さらに米国およびDACH地域での事業拡大に活用される予定だ。

欧州イノベーション・技術機構(EIT)が、2026年から2028年にかけて欧州全域におけるイノベーション、起業家精神、技能育成を促進するため、EIT史上最大の資金規模となる9億7,800万ユーロの支援パッケージを承認した。2008年に設立されたEITは、大学、研究センター、企業、投資家、さらに公的機関や非営利組織が連携する知識・イノベーションコミュニティ(KIC)を通じて、ビジネス、教育、研究を融合させながら、持続可能なエネルギーから健康、デジタル化、食糧に至るまで、さまざまな課題に取り組んでいる。これらの資金はKIC間で以下の通り配分される: (1) EIT Health::6,730万ユーロ、(2) EIT Raw Materials:7,480万ユーロ、(3) EIT Food:1億2,530万ユーロ、(4) EIT Urban Mobility:2億690万ユーロ、(5) EIT Manufacturing:1億6,320万ユーロ、(6) EIT Culture & Creativity:1億3,160万ユーロ。また追加の7,930万ユーロはKIC横断活動に、1億3,000万ユーロはEIT高等教育イニシアチブに充てられる方針だ。

AIを活用したデータセンター運用最適化に取り組むシアトル発Phaidra(元DeepMindエンジニアが設立)は、Collaborative Fundが主導し、Helena、Index Ventures、Nvidia、Sony Innovation Fundなどが参加したシリーズBラウンドで5,000万ドルを調達した。同社は電力供給や液体冷却、ワークロード管理など、複雑に絡み合うデータセンター内のオペレーションをAIエージェントが制御することで、人手やルールベースの手法を超える効率性を実現する。センサーからのリアルタイムデータをもとに、パフォーマンス、コスト、持続可能性のバランスを継続的に学習しながら最適化する仕組みだ。同社は、AI時代におけるデータセンターを「より賢く」運用することを掲げ、消費電力や環境負荷の低減を目指す。今回の調達資金は、Nvidiaとのパートナーシップ拡大や技術開発、グローバル顧客の獲得に充てられる。AIの急拡大により計算需要と電力消費が急増する中、同社は持続可能でインテリジェントさらにスケーラブルなインフラ構築を支援する。

拡張現実(AR)を活用した外科ナビゲーションのMediView XRは、GEヘルスケアが主導し、 Cleveland ClinicやMayo Clinic などが参加したシリーズAラウンドで2,400万ドルを調達した。今回の資金は、製品の商業化や臨床評価、グローバル展開、そして継続的な技術開発に活用される。MediViewは、 Cleveland Clinicの知財を基盤に開発したFDA認可のナビゲーションプラットフォームを展開。CTとリアルタイムの超音波画像を融合させた3Dの解剖構造を、患者の身体上にARで直接重ねて表示することで、医師に「X線のような視界」を提供する。これにより、従来の2D画像では困難だったリアルタイムの画像誘導が可能となり、生検や腫瘍焼灼術などの低侵襲手術における精度と安全性を高めている。また、同社のプラットフォームにはAIが組み込まれており、画像処理や手術計画を高速化。ハンズフリーでの操作を実現し、医師の負担を軽減しながら、チーム間の連携と治療成果の向上にも寄与する。MediViewは、AI・AR・高度画像技術を融合したこの技術で、精密医療の簡素化と普及を目指す。今後は戦略的パートナーシップを活かしながら、医師による介入計画とナビゲーションのあり方を根本から変えていく構えだ。

シンガポール拠点のデータベース企業Supabaseは、AccelとPeak XVが共同主導したシリーズEラウンドで1億ドルを調達し、企業価値も50億ドルに到達した。Figma Venturesなどが参加し、前シリーズDからわずか4ヶ月後の実施となった本ラウンドにより、同社の累計調達額は5億ドルを突破した。Supabaseはコミュニティ向けの共同投資枠を設け、オープンソース理念の再確認を図る方針である。 新たな資金は、大規模データ集約型アプリケーションに対応するエンタープライズ版プラットフォーム「Multigres」の開発加速に充てられる。この取り組みを牽引するため、同社はVitessの共同開発者であるSugu Sougoumarane氏を採用。Postgresのコントリビューターや主要オープンソースツールの創業者らが加わる強力な開発チームを拡大している。また現在、世界で400万人超の開発者を支援し、PwC、マクドナルド、Github Nextなど10万社以上の顧客に利用されている。AI駆動型アプリケーションの主要バックエンドとしての地位を確立しつつあり、開発者がオープンソースの柔軟性を保ちながら、業界を問わず迅速にスケール可能な環境を提供している。
韓国LG電子のインド現地法人が行った13億ドル規模の新規株式公開(IPO)は、入札初日で公開買い付けが完了した。時価総額約87億ドルと評価されるこのIPOは、インドの金融サービス会社タタ・キャピタルをはじめ、インドにおけるIPOが活発な時期に実施され、同国のIPO市場の活況が伺える結果となった。ブルームバーグによると、今年1-9月末のインドにおけるIPO調達額は112億ドル、世界で4番目の規模に達しているという。なお、取引所データによると、今回の株式公開は1.04倍の応募倍率で、いわゆる非機関投資家が主導する需要が顕著で、彼ら向けに確保された株式に2.3倍にのぼる応募があった。LGは国内市場でWhirlpoolやSamsungと競合し、2024年時点での市場規模が382億ドルを記録する中、2029年まで年率12%の成長が見込まれている。


インド南部に位置するティルヴァナンタプラムに位置するムッタタラ下水処理場は、下水処理場から処理された汚泥を再利用してエネルギーを発生させる先進的の万能処理装置ユニットの稼働開始に伴い、第二段階の開発段階に入る予定だという。このシステムは病原体を除去し、廃水、生物汚泥、その他の廃棄物から貴重な資源を回収し、これらを電力や浄水、また肥料や建設資材として利用可能な灰などの副産物に変換するもので、現時点で世界わずか4ヶ所でしか稼働していない。なお、本事業は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの資金提供、ならびにAnkur Scientific Private Ltdの技術支援のもとで推進される予定だ。
韓国LG電子のインド現地法人が行った13億ドル規模の新規株式公開(IPO)は、入札初日で公開買い付けが完了した。時価総額約87億ドルと評価されるこのIPOは、インドの金融サービス会社タタ・キャピタルをはじめ、インドにおけるIPOが活発な時期に実施され、同国のIPO市場の活況が伺える結果となった。ブルームバーグによると、今年1-9月末のインドにおけるIPO調達額は112億ドル、世界で4番目の規模に達しているという。なお、取引所データによると、今回の株式公開は1.04倍の応募倍率で、いわゆる非機関投資家が主導する需要が顕著で、彼ら向けに確保された株式に2.3倍にのぼる応募があった。LGは国内市場でWhirlpoolやSamsungと競合し、2024年時点での市場規模が382億ドルを記録する中、2029年まで年率12%の成長が見込まれている。
