『The State of European Food Tech 2021』、『バイオエコノミーを促進する新資材企業』、『ユニコーンを輩出し続けるイスラエル』、『EU専門機関がスペーステックへ出資』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第52回」をお届けします。
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The State of European Food Tech 2021
パンデミックにより落ち込みを見せるセクターも多い中、デリバリーやサステイナブルな食品への需要増加、サプライチェーンの効率化などにより、フードテックは勝ち組セクターとして名を挙げている。2020年の投資額は240億ドル、欧州フードテック企業トップ10の企業価値総額は4,330億ユーロに上り、15社以上のユニコーンを生み出してきた。初期段階では、デリバリーをはじめとした食品の流通と消費に関わる分野を中心としてきたが、近年はバリューチェーン全体にわたる次世代技術やソリューションが台頭し、農場管理、ロボット工学、代替タンパク質などが顕著な投資を受けてきた。またパンデミックによる品切れなどでサプライチェーンにおける新技術の必要性も浮き彫りとなり、その自動化や屋内・垂直農業テックへの投資も増加している。フードテックの中でもB2Cは急速にスケールアップしてきたものの、今後はB2Bも大きなチャンスを生み出すと期待されている。
バイオエコノミーを促進する新資材企業
世界中でバイオエコノミーの重要性が高まる中、塗料とインク用のバイオベース顔料を開発する仏トゥールーズ発
PILIが、400万ユーロの資金調達を行なった。PILI独自の発酵・化学プロセスは、石油ではなく、わらなどの再生可能原材料を活用することで、繊維、プラスチック、塗料、インク用の着色料生産におけるCO2排出量と燃料使用量を大幅に削減することを目指している。さらに今週、
フィンランド企業4社が合同で大豆モラセス(糖蜜)から堆肥化可能なバイオプラスチック生産技術の商業化を発表した。これにより、今までは食品に適さないため処分されていた大豆加工後に残った糖蜜を、砂糖やトウモロコシベースのポリ乳酸の代替品となる持続可能なバイオプラスチックに変換することができる。建物の断熱材などに使用される予定の同素材は、本格的な生産に向け、2023年末を目処に大規模プラント稼働を目指すという。
ユニコーンを輩出し続けるイスラエル
最新レポートによると、イスラエルは2021年だけで17社、合計で61社のユニコーンを輩出し、そのエコシステムの勢いは増し続けているようだ。先週だけでも、サイバーセキュリティの
Orca Securityと
Wizが、またe-コマースマーケティングプラットフォームの
Yotpoが1億ドル以上の資金を調達し、そのステータスを獲得した上、ウェブマネタイゼーションの
ironSourceと社会的投資プラットフォームの
eToroが、イスラエル史上最高額でのIPOを発表したばかりだ。近年は特に海外からの投資も増加するだけでなく、その他大規模ラウンドや経験豊富な起業家による活動の活発化など、複数の要因がポジティブに働き、このような強固な環境を作り出しているという。サイバーセキュリティ、クラウドデータ、フィンテック、e-コマース、AIなどに強い企業が集まるイスラエルへの期待が高まる。
EU専門機関がスペーステックへ出資
今週、EUによるスペーステック企業への出資が相次いで発表された。アムステルダム発
Hiberは、その世界初グローバルIoT衛星ネットワークで、EIC(欧州イノベーション会議)が2.7億ユーロのファンドから最大額を出資する3社のうち1社に選定された。Hiberはセンサー、アンテナ、コネクティビティ、ダッシュボードを全て含んだエンドツーエンドのIoTソリューションをSaaS形式で提供し、油田や大型船舶、散在する家畜などの遠隔監視を低コストで実現する。一方、既に4回の打ち上げを成功させ、その発展により英国で最も先進的なロケット開発企業となったエジンバラ発
Skyroraも、ESA(欧州宇宙機関)から資金を調達した。EUはこれらの取り組みを通して、グローバル規模でスペーステックにおける重要な役割を果たすことを目指しているという。
植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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