『欧州各国政府によるディープテックへの支援』、『個別化された予防ケアを促進するバイオセンサー』、『2021年1Q、欧州からは27社のユニコーンが誕生』、『ソフトバンクが大幅出資する倉庫自動化企業』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第53回」をお届けします。
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欧州各国政府によるディープテックへの支援
2019年からデュープテック企業及びVCファンドへの投資を強化してきたフランスが、公的投資銀行Bpifranceを通して、5年間のディープテックファンド規模を13億ユーロから20億ユーロに拡大するという野心的な取り組みを発表した。今年3月に欧州イノベーション会議が革新的な最先端技術に対する100億ユーロの予算を確保した一方、独政府が大規模なスタートアップ支援策であるFuture Fundの一環として10億ユーロをディープテックに充てる、またエストニア政府も新たなディープテックファンド
SmartCapを設置するなど、近年はディープテックを対象にした各国政府による出資が立て続いている。さらに英国政府も加え、これらのプレーヤーの多くが、量子コンピューターやAIなどセクター別の資金調達イニシアチブも実施しており、欧州におけるディープテックの今後のさらなる勢いに期待が高まる。
個別化された予防ケアを促進するバイオセンサー
非侵襲型のセンサーから得る血流データに基づき、健康状態の理解を促進する英Zedsenが、新規資金調達に成功した。
Zedsenは皮膚の表面上でバイオセンサーを使用し、材料の誘電率と電導率を測定する3次元電磁界を作り出すことで、複雑なアルゴリズムと組み合わせた際に体内の傾向を非侵襲的にモニタリングすることができる。そして内部及び外部データの組み合わせを分析することで、ユーザーは自身の健康状態をより正確に理解するとともに、小規模なライフスタイルの変更を促すことで、長期的なメリットをもたらすことができるという。その潜在的な使用事例としては、糖尿病予備軍の発見から生殖能力の追跡まで多岐にわたる。また収集されたデータは、健康、フィットネス、ダイエットに関する高度にパーソナライズされた洞察も提供できる。同社は、この意味のある生物学的洞察と管理可能なライフスタイルの変化を通じて、個別化された予防ケアの促進を目指している。
2021年1Q、欧州からは27社のユニコーンが誕生
最新の調査によると、2021年の第一四半期、欧州(イスラエルとトルコを含む)で新たに27社のユニコーンが誕生したという。最も多くのユニコーンを生み出したのは、先週も伝えた通り、セキュリティやクラウド関連企業が多く活躍するイスラエルで、8社がそのステータスを獲得した。次に英国とドイツがそれぞれ5社、オランダとスウェーデンが2社と続き、トップ5入りを果たした上、オーストリア、デンマーク、フランス、スイス、トルコが各国1社ずつのユニコーンを輩出した。セクター別にみてみると、フィンテックが近年続く勢いを失うことなくリードする一方、多額の資金と優秀な人材が集まるサイバーセキュリティ、eコマース、SaaS、食料品デリバリーなどがそれを追う形となった。なお、今回ユニコーン入りした全企業のプロファイルは、Tech EUの以下リンク先に記載されている。
ソフトバンクが大幅出資する倉庫自動化企業
今週、ソフトバンクが、迅速で費用効果の高いロジスティクスを可能にするノルウェーの
AutoStoreの株式40%を28億ドルで取得した。既に複数の日本企業と提携しているAutoStoreは、独自の『cube storage automation』技術により、ロボットによる倉庫内のストレージスペースの最大化を実現し、最大4倍の在庫の保管を可能にする。既に35ヵ国に20000台以上のロボットを配置している同社は、Siemens、米電子機器小売業者のBest Buy、英食料品チェーンのAsdaなどを顧客に持ち、そのキュービックデザインソリューションにより、eコマース、食料品、産業、ヘルスケア業界に自動化された保管及び検索システムとサービスサプライチェーンを提供している。なお、今回のソフトバンクからの大幅出資により、同社は今後アジア領域での展開を加速するとしている。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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