『ポーランドのテック企業、好調な資金調達 』『欧州、デジタルサービスのルール強化』『ソフトバンクが支援するロボティクスユニコーン』『がん治療を進めるスタートアップ、英Epitopea 』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第107回」をお届けします。
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ポーランドのテック企業、好調な資金調達
2022年に入って4ヶ月が経過し、ポーランドはVC資金調達においてこれまでで最高の年になりそうな勢いである。PFR VenturesとInovo Venture Partnersによる新しいレポートでは、2022年の最初の3ヶ月間に総額約2億6700万ドルのVC投資(98件の取引)を追跡している。年率換算すると、ポーランドのスタートアップ企業は2022年に初めて11億ドルを超える資金を集める可能性があるということになる。今年最大のラウンドは、ポーランドとフィンランドのマイクロサテライト企業であるICEYEが2月に約1億2700万ドルを調達したものである。注目すべきは、海外投資家の割合も劇的に増えているということだ。前年同期はわずか21%だったのに対し、2022年は1~3月の取引額全体の45%がポーランドのVCと海外投資家との共同投資である。これは、イギリス、フランス、ドイツ以外の欧州のテックハブにおいて、勢いが加速していることの表れである。
欧州、デジタルサービスのルール強化
欧州連合は、オンラインプラットフォーム、検索エンジン、オンラインマーケットプレイス、その他のデジタルサービスを対象とした新しいデジタルサービス法(DSA)に関する画期的な「暫定合意」を発表した。この新しい法的枠組みは、偽物の販売、ヘイトスピーチ、プライバシー、サイバー脅威、市場支配、競争の制限などの問題に取り組むことを目的とし、世界中の規制当局にとって良い判断基準となる可能性があるとされている。DSAは2024年の第1四半期に完全発効する予定だが、大規模なオンラインプラットフォームについては、より早く適用される可能性もある。詳細はまだ決まっていないが、立法者は、この法律が消費者にさらなる安全を提供し、中小企業が市場でより有利な立場に立てるようにすることで、デジタル経済の革新を促進することを期待している。
ソフトバンクが支援するロボティクスユニコーン
世界中の経済がAI技術やロボティクスの普及によって影響を受けており、そうしたソリューションを開発するスタートアップは大きな投資を集めている。その一例として、中国とドイツのロボティクスのユニコーン企業であるAgile Robotsが中国のFoxconn Industrial Internet(FII)から3000万ドルの資金調達を行った。これはFIIによるAgile Robotsへの2回目の戦略的投資であり、FIIのAgile Robotsへの累計出資額は3450万ドルとなった。これに先立ち、同社はSoftBank Vision Fund 2が主導するシリーズCラウンドで2億2000万ドルを調達している。航空宇宙、エネルギー、輸送の研究のための国立センターであるドイツ航空宇宙センター(DLR)からのスピンオフとして2018年に設立されたAgile Roboticsは、医療、家電、自動車、農業、サービス分野などの産業で応用される次世代のインテリジェントロボットを開発している。
がん治療を進めるスタートアップ、英Epitopea
近年、がん医療の研究はより効果的で正確、かつ低侵襲ながん治療に向けて目覚しい発展を遂げている。その一例として、英国に拠点を置くEpitopeaは、免疫療法による治療を推進するための資金調達を行った。このメドテックスタートアップ企業は、モントリオール大学の研究を基に、様々な種類のがんに見られる腫瘍特異抗原(TSA)に着目し、幅広い患者集団を治療するためにすぐに利用可能ながん免疫療法を開発している。TSAは悪性細胞を標的とし、非がん細胞は傷つけずに治療することが可能である。今回の資金調達により、同社は研究開発プログラムをさらに推進するとともに、経営陣を増強する予定である。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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