『EV充電アプリのEv.energy、2,600万ポンドを調達』、『微細藻類からタンパク質を生成するBrevel、1,850万ドルを調達』、『CO2をエチレンに変換するDioxycle、1,700万ドルを調達』、『エンタープライズ向けNaaSのNile、約1.7億ドル調達』、『Kriya、遺伝子治療の臨床移行で1.5億ドル追加調達』、『脳卒中の発見助けるAIソフトウェアRapidAI、7,500万ドル調達』、『Mirxes、癌早期発見ソリューションの新市場開拓で資金調達』、『クライメートテックZuno Carbon、250万ドルのシード資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第43回」をお届けします。

EV充電アプリのEv.energy、2,600万ポンドを調達
ロンドンを拠点とするEV充電ソフトウェア・プラットフォームのev.energyが、英国最大の送配電事業者National Gridの投資部門National Grid Partnersが主導するシリーズBラウンドで2,600万ポンドを調達した。Ev.energyのプラットフォームは、時間帯とエネルギー価格に基づいて毎日のEV充電を最適化する。同社は現在、仮想発電所(VPP)を運営する北米と英国で12万台以上のEVを管理している。VPPによって、ev.energyは顧客の資産を利用し、必要な時に電力網の需給バランスを取るためのサービスを電力会社に提供することができる。2018年の設立以来、ev.energyは30以上の公益事業契約を獲得し、充電ブランドや自動車OEMともパートナーシップを締結してきた。同社は今回の資金調達により、グローバルな事業拡大を目指し、株主のエネルギー小売、フリート、自動車、保険のネットワークを活用することで、さらに4億人のエネルギー顧客にアクセスできるようになるという。 
微細藻類からタンパク質を生成するBrevel、1,850万ドルを調達
イスラエルのフードテックスタートアップのBrevelは、微細藻類に基づく代替タンパク質ソリューションのため、1,850万ドルのシード資金を調達した。代替タンパク質市場は、2035年までに2,900億ドル以上に達すると予測されているが、既存企業がニュートラルな味わいで、持続可能かつ手頃な価格の製品を作るのに苦労しているのも事実だ。現在の代替タンパク質市場は、生産コストが低く、味も許容範囲の大豆がリードしているが、持続可能な資源ではない。対照的に、既存の微細藻類ベースのソリューションは、持続可能性は高いものの、高価すぎるか、または味が好ましくない傾向がある。そんな中、Brevelの微細藻類ソリューションは、2つの微細藻類成長方法(光による成長と糖による発酵)を組み合わせたもので、大豆と競る、あるいは大豆を上回る、高収量で安定したタンパク質の生産を実現する。同社は、25m2のシステム1台で、大豆生産より14,000m2、牛肉生産より250,000m2多くのタンパク質を生産できると主張している。 
CO2をエチレンに変換するDioxycle、1,700万ドルを調達
CO2排出から持続可能な化学物質を生産するDioxycle が、最新のシリーズAラウンドで1,700万ドルの資金を調達した。フランスにて2021年に設立された同社は、持続可能なエチレンを生成するために、水、CO2、電力をインプットとして使用する低温電気分解機を開発している。約1,800億ドルの市場規模を持つエチレンは、世界で最も消費量の多い有機化学品であり、繊維、プラスチック、家具、建設資材の生産に使用されている。フランスでも、鉄鋼、コンクリートに次いで3番目に汚染度の高い素材である。CO2排出量削減だけでなく、持続可能なエチレンの価格競争力向上も目指すDioxycleは、その技術により化石燃料と同等、またはそれ以下のコストでエチレンを生産できると主張しており、そのソリューションは持続可能かつ経済的である。今回の資金調達により、同社は最初の産業用プロトタイプを工場で展開する予定だ。

エンタープライズ向けNaaS提供Nile、約1.7億ドル調達
シリコンバレーを拠点にNetwork-as-a-Service (NaaS)を提供するNile は、March Capital と Sanabil Investments共同主導によるシリーズCラウンドで1億7,500万ドルを調達した。Nileはエンタープライズ顧客向けに一からネットワークを構築し、使用量に応じて規模を拡大、もしくは縮小する従量制のサービスを提供している。またネットワークの立ち上げ、稼働、維持に必要なハードウェアとソフトウェアも提供する。Cisco Systems出身のCEOが設立したNileは、スイッチやルーターなどのネットワーク機器を設定する必要性をなくし、セキュリティパッチに加え、ソフトウェアやハードウェアのアップグレードを含むプロセスを自動化するアプローチを取っている。なお、Gartnerは、2024年末までに15%の大手企業がNaaSを採用すると予測している。またNaaS市場も2022年の136億3,000万ドルから、2030年には1,551億ドル強に成長する可能性も指摘されている。 
Kriya、遺伝子治療の臨床移行で1.5億ドル追加調達
パロアルト発、遺伝子治療のバイオテックKriya Therapeuticsは、シリーズC資金調達の一環として1億5,000万ドルを追加し、Patient Square Capital主導のラウンド総額が4億3,000万ドル以上となった。過去3年間で4回の資金調達を行なった同社、2019年の設立以来既に6億ドル以上を確保している。代謝疾患、神経疾患、眼科疾患の治療に焦点を当てた遺伝子治療に取り組む中、代謝疾患のパイプラインでは、糖尿病とグリコーゲン貯蔵疾患の治療薬を開発中であり、神経疾患プログラムにはてんかん向けの候補も含まれている。昨年11月、KriyaはバイオテックRedpin Therapeuticsを買収し、同社の神経系遺伝子治療ポートフォリオの基盤を形成した。新たな資金は、プラットフォームの拡張と並行して、未公開の遺伝子治療を臨床に移行させるために使用される。 
脳卒中の発見助けるAIソフトウェアRapidAI、7,500万ドル調達
世界第2位の死因である脳卒中、動脈瘤などの兆候を脳CTスキャンで発見するために設計されたAI搭載ソフトウェアを開発するRapidAIは、Vista Credit Partners主導のシリーズCラウンドで7,500万ドルを調達した。2012年設立以来、同社は脳疾患の初期兆候を見つけるFDA認可ツールのポートフォリオを構築してきた。Rapid NCCT Strokeは、非造影CT画像から頭蓋内出血と大血管閉塞の疑いを検出する初のFDA認可医療機器だ。あらゆる規模の病院に、より多くの患者に対応するための画像診断と意思決定支援へのアクセスを提供する。アドオンとして、右心室と左心室の比率を計算し、塞栓症の疑いを判断するRapid RV/LVなども認可されている。RapidAIプラットフォームは現在、1,000万件以上のスキャンを分析するために使用されており、現在100ヶ国以上、数千の病院に採用されている。

Mirxes、癌早期発見ソリューションの新市場開拓に資金調達
シンガポールに本社を置くRNA技術企業Mirxes Holdingは、シリーズDラウンドを完了し、5,000万ドルを調達した。2014年設立の同社は、がん早期発見ソリューションを世界的に利用可能にするRNAテクノロジー企業である。これに加え、予防医療と精密医療のための研究・臨床検査サービスを、アジアをはじめとする主要市場に提供している。今回のラウンドには、Beijing Fupu、EDBI、三井物産、NHH Venture Fund、Agency for Science, Technology and Research(A*STAR)などの投資家が参加した。今回調達した資金は、胃がん血液検査プロダクト「GASTROClear」の、東南アジア、中国、また日本を含むアジア太平洋の主要市場における市場拡大に資金を充てるという。またその一部は、「Project CADENCE」の一環として行っている血液ベースの大腸がんスクリーニング検査や、複数がんの早期発見検査など、同社の成熟しつつある臨床パイプラインの開発と商業化の加速に使用される。このプロジェクトは、同社のRNA技術と他の補完性の高いバイオマーカー技術により、死亡率の高い9種のがんを早期発見するための、単一の血液検査を開発することを目的としている。 
クライメートテックZuno Carbon、250万ドルのシード資金調達
クライメートテックスタートアップのZuno Carbonが、Wavemaker Partnersが主導し、Enterprise Singaporeの投資部門Seeds CapitalやBlue InCube Venturesが参加したシードラウンドで、250万ドルを調達した。2020年設立のZuno Carbonは、環境・社会・ガバナンス管理プラットフォーム「Veridis」を通じ、企業の温室効果ガス排出量(GHG)の追跡と報告を支援している。利用企業は、人工知能を搭載したこのプラットフォームを通じて、直接・間接的なGHG排出量を監視するための業務データを記録できる。このプラットフォームは、収集したデータの分析、サステナビリティ・レポートの作成、また実行可能な改善策の提案も行う。既に石油・ガス、物流、不動産セクターで導入され、特にシンガポール、マレーシア、サウジアラビアの企業が、「データ主導の意思決定」の一環として活用しているという。シンガポールを拠点とする同社は、今回の資金を営業・マーケティング活動の強化、コンプライアンスをさらに簡素化するための新機能の立ち上げ、そして脱炭素化を促進するための具体的な行動の支援に充てる予定だ。
植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。