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欧州イノベーションインサイト: 第88回

『最新レポート「State of European Tech 2021」が発表に』『ブロックチェーンハブ、クリプトバレーのいま』『水素航空機の現状と最新プロジェクト 』『光学センサーとAIを使用した食料生産最適化技術』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第88回」をお届けします。 (配信希望はこちらから) このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。

最新レポート「State of European Tech 2021」が発表に

今年も欧州大手VCのAtomicoから、最新のエコシステムレポートが発表された。今回は豊富なエコシステム情報の中から厳選した内容をお届けする。    ・欧州への総投資額は、年末までに1200億ユーロを突破:昨年の400億ユーロから約3倍に跳ね上がり、1000億ユーロを超えるのは史上初。  ・2021年最大ラウンドは、Northvolt:欧州を代表するバッテリー技術が2年連続でトップに。  ・エコシステムの総合価値は、3兆ドル超え:過去3年で、3倍に拡大。エグジットだけでも、2750億ドル相当の企業価値を生み出した。  ・今年だけで98社のユニコーンが誕生:昨年までは223社。B2Bユニコーンが増加傾向に。デカコーンも2倍以上となる26社に。  ・最も投資を集めた国・都市トップ5は、昨年と変わらず:1位から英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、オランダ。都市別に見ても、同国の首都がトップ5を独占。  ・地域にとらわれない投資家の増加:企業所在国に限らず、欧州各国から、また米国とアジアからの投資が常識になりつつある。特に大規模ディールでその変化が顕著に。  ・1番の成長セクターはフィンテック:昨年は若干そのペースが落ちたものの、返り咲きを見せた。 

ブロックチェーンハブ、クリプトバレーのいま

クリプトバレーは、先進的な技術開発と法的枠組みにより発展したスイス全土とリヒテンシュタインにおけるブロックチェーンクラスターである。この地域に拠点を構えるブロックチェーン企業は960社にのぼり、11社のユニコーンを含むトップ50企業の評価額は合計で2549億ドルに達するという。クリプトバレーには域内外から起業家、エンジニア、投資家などが集結し、不動産、流通、再エネ、輸送、デジタル識別、ガバナンス、社会福祉、健康管理、娯楽など幅広いセクターでブロックチェーンの活用を目指している。特に非金融分野では、ビッグデータを活用して音楽業界の収益増大やコスト削減を実現するUtopia Music、ブロックチェーンとAR・認証技術でアートワークのデジタルフィンガープリントを作成する4ARTechnologies、製品輸送時の環境条件を記録するセンサーデバイス開発のmodum.ioなどが活躍している。また同地域発スタートアップとVISA、IBM、Appleなどの大企業との提携も増加傾向にあり、日本企業との提携事例が待ち遠しい限りだ。 

光学センサーとAIを使用した食料生産最適化技術(Agritech, Hot Startup)

ロンドンに本社を置くアグリテック企業Gardinは、シードラウンドで1080万ドルを調達した。同社は機械学習と遠隔光学センサーを組み合わせ、個々の植物の健康状態に関する詳細なデータを生産者に提供している。従来植物の健康状態は主に肉眼で検査されてきたが、同社はこれらの検査を植物の生理的パフォーマンスに基づいたはるかに高度な測定に置き換えた。複数のパイロットプログラムでは、Gardinのセンサーが水不足などの異常を正確に、かつ農学者が手作業で気づくよりも何日も早く検知できることが明らかになった。植物と生息環境との共生関係をより高い信頼性と精度で判断することにより、生産者は生産量だけでなく農場全体の業務を最適化できるため、データの蓄積により栽培プロセス全体の非効率を排除することをGardinは目指している。この技術は温室や屋内・垂直農法などの環境制御型農業に焦点を当てており、この分野の企業に対して安定した販売パイプラインを構築している。なお、同社は2020年の創設以来、既に1,200万ドルを調達している。

水素航空機の現状と最新プロジェクト(New Project, Aviation)

カーボンフリーの輸送手段のうち最も開発が困難なものの一つが航空機といわれる中、Aerospace Technology Institute(ATI)が主導するFlyZeroプロジェクトは、液体水素を動力源とする中型旅客機のコンセプトを発表した。この航空機は、279名を乗せてロンドンから米サンフランシスコまでをノンストップで、ロンドンからニュージーランドのオークランドまでを1度の燃料補給で飛行できる。同機は翼長54メートル、ターボファンエンジン2基を搭載し、現在の航空機と同等のスピードと快適さを提供しながらもCO2排出量はゼロになるという。後部胴体の低温燃料タンクは-250度の水素を貯蔵し、胴体前方の2つの小さなチークタンクは燃料使用時に機体のバランスを保つ役割をもつ。とはいえ、商用水素航空機の実現にはまだ時間が必要だ。燃料補給のインフラはまだ存在せず、水素は灯油ベースの燃料に比べて高価な上、機内に貯蔵するのも難しい。しかし、他分野でも水素へのシフトが進み、供給コストが下がる可能性が高いことを理由に、ATIは2030年代半ばには水素航空機が現在の飛行機よりも経済的な選択肢になるかもしれないと予想する。 植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

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