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イノベーションインサイト:第62回

イノベーションインサイト:第62回

『英Pragmatic、業界過去最大ラウンドとなる大型資金調達』、『資源循環トレーサビリティシステムのCircularise、積水化学と提携』、『欧州初、OpenRANベースの完全仮想化5Gネットワークが稼働』、『T-Omega、ピラミッド型浮体式風力タービンのプロトタイプ発表』、『Gecko Robotics、AI駆動型ロボットで1億ドル調達』、『X-energy、クリーンエナジーの先進原子炉で2億ドル以上を調達』、『インドネシアのKLINIK PINTAR、500万ドル調達』、『TikTok、インドネシアTokopediaに15億ドル投資』を取り上げた「イノベーションインサイト:第62回」をお届けします。

英Pragmatic、業界過去最大ラウンドとなる大型資金調達

英国の半導体メーカーPragmaticが、最新のシリーズDラウンドで、欧州半導体スタートアップとして過去最大の資金調達ラウンドとなる約2億600万ドルを調達し、その調達総額も4億ドルを超えた。2010年設立のPragmaticは、人間の髪の毛よりも細く、従来のシリコンチップよりもはるかに安価で、高速、かつ環境に優しいフレキシブル集積回路(FlexIC)技術を開発している。今回の調達により、同社は世界的な需要の高まりに対応するため、製造能力拡大を推進する。短期的には、英ダーラムにある製造施設に第3、第4の製造ラインを建設する一方で、今後5年間で、英国内に少なくとも8つの製造ラインを建設、500人以上の高度技術を要する雇用を創出する予定だという。各ラインは数十億個のチップを生産することができ、コンシューマー、産業、ヘルスケアなど、さまざまな領域において、斬新で急成長が期待されるアプリケーションを実現する。

 

資源循環トレーサビリティシステムのCircularise、積水化学と提携 

オランダ発ブロックチェーンベースのサプライチェーントレーサビリティシステムの開発を行うCirculariseが、積水化学工業と資本業務提携契約を締結した。これにより、Circulariseは化学品市場での事業拡大を促進し、まもなく実施されるシリーズBラウンドの基盤を整えたことになる一方で、積水化学は、三菱化学、丸紅、伊藤忠商事、旭化成など、日本の大手既存投資家やパートナーに加わる形となった。両社は今後、積水化学のサプライチェーンにおいて、デジタル製品パスポートの試験運用と質量バランス・トレーサビリティ・ソフトウェアのテストを行う共同プロジェクトに取り組む予定だという。2016年に設立されたCirculariseは、化学、プラスチック、電池材料、金属業界などを対象としたデジタル製品パスポートと質量バランス簿記ソフトウェアを専門としている。このプラットフォームにより、企業はスコープ3排出量を可視化し、EUの「持続可能な製品に対するエコデザイン規則案」や「企業持続可能性報告指令(CSRD)」などに対応することができる。

 

欧州初、OpenRANベースの完全仮想化5Gネットワークが稼働

ドイツの通信事業者1&1は、技術パートナーである楽天および米Mavenirと提携し、OpenRANに基づく欧州初の完全仮想化5Gネットワーク「1&1 O-RAN」の商用サービスを開始した。2021年8月から長期パートナーシップを締結している1&1と楽天にとって、今回のニュースは数年前に始まったコラボレーションのマイルストーンとなった。従来のネットワーク・アーキテクチャとは対照的に、このアプローチはソフトウェアとハードウェアを分離、コンポーネントを柔軟に組み合わせることができるため、支配的なベンダーへの依存を排除し、1&1は80以上のプロバイダーと連携することができるという。このプロジェクトでは、Mavenirがコア・ネットワーク技術を提供する一方、楽天がシステム・インテグレーターとしてネットワーク制御を手掛け、すべてのネットワーク・コンポーネントが円滑に相互作用するように支援する。両社は、このプロジェクトが、クラウド・ネイティブで自動化され、オープン・インターフェースに基づくべき将来の通信業界の発展におけるマイルストーンになると考えている。

 

T-Omega、ピラミッド型浮体式風力タービンのプロトタイプ発表

T-Omegaのピラミッド型浮体式風力タービンは、洋上風力発電のコストを極限まで抑えるという唯一の観点に焦点を置いて設計され、先週、1/16スケールのプロトタイプがマサチューセッツ州ニューベッドフォード沖でローンチされた。同社のアイデアは非常にシンプルで、洋上風力タービンが陸上風力タービンから継承している大きなセンターポールをなくすというもの。そして、四隅に浮かんだピラミッドの土台につながる4本の斜めの支柱を使用することで、海底にアンカーで固定されても若干のたるみを持たせ、風向きの変化に応じて全体が浮遊することができる。その結果、材料費削減による初期コストの大幅削減、専門設備を必要としない製造と配備作業、容易な設置とメンテナンスによるランニングコストの削減など、さまざまな利点が期待されている。

 

Gecko Robotics、AI駆動型ロボットで1億ドル調達 

ピッツバーグ発ロボティックス企業のGecko Roboticsは、US Innovative Technology FundとFounders Fundが主導するシリーズCのエクステンション・ラウンドで1億ドルを追加調達した。これは、1,320億ドルにのぼる新型潜水艦建造計画の一環として、Geckoが米海軍の原子力潜水艦建造迅速化を支援すると発表した1ヶ月後に発表された形だ。同社のロボットは、人工知能ソフトウェアと、産業構造物や設備、インフラの欠陥を探索できるスキャナーを搭載可能な探査車とともに動作する。さらに、ガスや石油のパイプラインなど人間の技術者やオペレーターが容易に立ち入ることができない危険な場所や狭い場所に進入し、高度なデータや情報を提供できるように設計されている。そしてセンサーデータを活用し、デジタル・ツインがデータに関する洞察とともにクラウドで構築され、重大な問題になる前に潜在的なメンテナンスや修理の必要性を先取りすることができるという。

 

X-energy、クリーンエナジーの先進原子炉で2億ドル以上を調達

先進的な小型モジュール式原子炉と燃料技術を開発するX-energyは、8,000万ドルの追加調達に成功し、シリーズCラウンドでの調達総額が2億3,500万ドルに達した。メリーランド州に拠点を置く同社は、独自のTRISO-X燃料と移動式マイクロリアクターとともに、高温ガス冷却先進小型モジュール炉であるXe-100を開発している。米エネルギー省の先進原子炉実証プログラム(Advanced Reactor Demonstration Program)の支援を受け、X-energyはテキサス州にあるDowが所有する施設にXe-100を配備する予定だという。この配備は、安全で信頼性が高く、炭素排出ゼロの電力と蒸気を供給することを目的としており、北米で初めて工業用地に配備されるグリッド規模の改良型原子炉となる。さらにこのプロジェクトには、次世代原子炉用のTRISO-Xハイアッセイ・低濃縮ウランベース燃料を製造する国内初の商業施設の設立も含まれている。

 

インドネシアのKLINIK PINTAR、500万ドル調達 

ジャカルタに本社を置くヘルステックスタートアップのKlinik Pintarは、Altara Venturesが主導するシリーズA1ラウンドにおける500万ドルの資金調達を発表した。このラウンドには、大手医療情報IT企業のInfocom、既存投資家のGolden Gate Ventures、Skystar Capital、およびVenturraも参加した。Klinik Pintarはインドネシアのデジタル・クリニック・ネットワークで、統合された医療エコシステムに接続しやすい環境を作ることで、クリニックを強化することを目標としている。同社のソフトウェア・プラットフォームであるAplikasi Klinik Pintar(AKP)は、インドネシア保健省(SatuSehat)、国民健康保険プログラム(PCare BPJS)、および民間保険ネットワークに接続されている。AKPはまた、クリニックの在庫システムと統合された直接調達も提供しており、グループ購入価格での医薬品、消耗品、機器の発注を可能にし、クリニックがより持続可能な営業利益率を達成できるよう支援している。なお、同社は今年、グレーター・ジャカルタ地域に2つ目の神経科専門クリニックを開設する予定だ。

 

TikTok、インドネシアTokopediaに15億ドル投資

人気SNSプラットフォームTikTokの運営会社であるByteDanceが、インドネシアの大手ハイテク企業GoToのEコマース部門であるTokopediaと、TikTokのEコマース事業の現地部門であるTikTok Shop Indonesiaを統合する新しい合弁会社に、段階的に15億ドルを出資する。これにより、TikTokは新会社の75.01%の株式を保有することとなる。この取引は2024年の第1四半期に完了する予定だ。TikTokは、2021年にTikTok Shop Indonesiaを立ち上げ、今年10月時点で国内ユーザー数が約1億600万人超え、米国に次いで世界2位となった。またインドネシアは、アクティブな総合的なソーシャルメディアユーザー数で中国、インドに次ぐアジア第3位の1億6700万人の市場で、全人口の60.4%がこれらのプラットフォームを利用しているという。さらにインドネシアは、東南アジアのEコマース業界において圧倒的な存在感を示している。その価値は昨年、600億ドル近くに達すると推定され、この地域全体で生み出された収益の約3分の2に相当する。今後、TikTok、Tokopedia、GoToはインドネシアeコマース部門の変革を目指す。

 

 

植木 このみ

Corporate Development Services, Intralink Limited

 

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