『日本企業のイスラエル投資が過去最高を記録』、『生産だけでなく、AIで設計もできる最新マシーン』、『超高出力技術の最先端バッテリー、Nyobolt』、『スマートシティを促進するAIセンサーと制御システム』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第47回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
日本企業のイスラエル投資が過去最高を記録
2020年は日本とイスラエルの経済関係にとって記録的な年となった。日本企業は昨年だけで、前年比20%増となる11億ドルをイスラエル企業に投下した。中東情勢との政治的な兼ね合いもあり、長年保守的な立場をとってきた日本企業だが、イスラエルに拠点を置く日本企業は現在90社(2016年:15社)、さらにイスラエルで運営・投資を行うVCファンドは15社(2016年:2社)にのぼり、2015年以降にそのディール数と投資額が急上昇している。なお、2020年に最も活発だったトップ企業は、三菱商事(約3.1億ドル)、住友商事(約1.2億ドル)、SBIホールディングス(2900万ドル)であったものの、損保ジャパン、東京海上などの保険会社や、MUFG、みずほなどの大手銀行によるイスラエル企業との提携や同国のVCファンドへの積極的な投資が続き、今後もその投資規模は成長を続けると予測されている。
生産だけでなく、AIで設計もできる最新マシーン
ミュンヘン発
Hyperganic は、AIを活用してあるものが持つ品質に関する情報をアルゴリズムにフィードすることで、ロケットエンジンからティーポット、代替となる人口骨など、あらゆる『もの』を設計・生成する技術を開発する。例えばヘルメットの場合、ヘッドスキャンに合わせて実物が生成されるため、そのフィット感は完璧であり、さらに事故に関する統計を考慮することで、誰かが自転車から落ちた場合にヘルメットを分析し、新しいデータをアルゴリズムに入れることで改善を図ることもできる。これにより、自動化・分散化された『デジタルファクトリー』でのあらゆる物体生成が可能になるため、輸送によるCO2排出量も削減できるサステイナブルなソリューションを開発する同社は、特にシンガポールをはじめとするアジアから高い関心を集めているという。
超高出力技術の最先端バッテリー、Nyobolt
英ケンブリッジ大学からスピンアウトした
Nyoboltが、その先駆的なバッテリー技術のグローバル展開に乗り出した。同社はレアメタルであるニオブベースのアノード材料を使用した独自プロセスで、記録的な高出力、超高速充電、高エネルギーを提供するバッテリーを開発する。このテクノロジーは、幅広い温度で作動し、耐久性も高いため、リチウムイオンバッテリーなど多くの既存技術が直面する課題に対応することができるという。NyoboltはTesla、Samsung、Dysonなどで研究開発を行なってきたチームとともに英国だけでなく、米国やアジアでも技術的及び商業的プレゼンスを急速に拡大しており、先日確保に成功した1000万ドルの資金をもとに新施設の設立や、その独自技術の実装と商用アプリケーション統合に不可欠な顧客対応チームを成長させる予定だ。
スマートシティを促進するAIセンサーと制御システム
AIによる都市のスマート化、安全性及び持続可能性向上を目指すロンドン発
Vivacity Labsが、最新のシリーズAラウンドで500万ポンドの調達に成功した。同社は、英国全体に数千個にのぼるAIセンサーを設置し、『Smart Junctions』と呼ばれる信号制御システムとともに移動手段、交通の流れ、移動パターンに関する詳細な匿名データを24時間年中無休で収集し、移動ネットワークを最適化することで都市インフラを改善するための戦略的決定をサポートする。現在は、マンチェスターやケンブリッジをはじめとする地方自治体や政府機関と提携することで、各都市の交通及びインフラの構築と最適化に取り組んでおり、政府主導のスマートシティプロジェクトに適したソリューションとして英国内で活用されている。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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