『インパクトテックを中心に、北欧各国が躍進 』、『独、気候変動対策で10億ユーロをテック企業に投資 』、『スペーステックのThe Exploration Company、4000万超ユーロ調達 』、『電池メーカーOur Next Energy、3億ドル調達 』、『看護師不足の解決に挑むShiftMed、2億ドル調達』、『ドローン画像処理のZeitview、5500万ドル調達』、『エネルギー貯蔵のVFlowTech、日本VCなどから資金調達』、『シンガポールのFreightify、Sequoia India主導で1200万ドル調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第18回」をお届けします。

インパクトテックを中心に、北欧各国が躍進
Dealroomの最新レポートによると、北欧スタートアップは2022年だけで117億ドルを調達し、2020年よりも50%以上高い数値を記録した。その中でもスウェーデンがトップの57億ドル、次に20億ドルのフィンランド、19億ドルのノルウェーが続いた。エンタープライズソフトウェアのCint、ウェアラブルのOura、フィンテックのDune Analytics、自動運転車製造のEinrideなどをはじめ、この1年間で新たに10社のユニコーンが誕生した北欧では、その総数が78社に達し、エグジットも10億ドル以上の価値となった。セクターごとに見ると、北欧は世界と比較してもインパクトテックへの注力が顕著で、VC資金調達総額の35%(欧州全体の平均は22%)となる43億ドルが同分野に投入されている。この最新の数字は、北欧が世界で最も起業家精神にあふれたテックエコシステムの1つである、という評判を確固たるものにしたと言える。 
独、気候変動対策で10億ユーロをテック企業に投資
ドイツ政府は先週、10億ユーロ規模の新たなグロースファンド、DeepTech & Climate Fund (DTCF)を立ち上げた。このファンドは、ディープテック及びクライメートテックにおいて実証されたビジネスモデルを持つ企業の成長フェーズにフォーカスを置き、インダストリー4.0、ロボット、AI、量子コンピューティング、プロセスオートメーションなどの技術や、デジタルヘルス、新エネルギー、スマートシティ、新素材、バイオテックに関連するビジネスモデルを展開する企業に投資するという。ドイツは近年、スタートアップ支援に向けて新たな動きを見せており、昨年7月にはスタートアップシーン育成を目的に、2030年までに300億ユーロの追加資金を投入することを約束し、初の包括的なロードマップを打ち出した。気候変動に配慮した新技術に資金を提供することで、イノベーション拠点としての国家的立場を強化するとともに、独立したテック企業の発展を支援し、国内での長期的な発展を実現する狙いだ。

スペーステックのThe Exploration Company、4000万超ユーロ調達
仏・独スペーステックのThe Exploration Company が、4000万ユーロ調達というマイルストーンを達成した。SpaceXのライバルとも言われる同社は現在、サステナブルで再利用可能な宇宙カプセルを開発している。Nyxと呼ばれるこのカプセルは、民間や公共の事業者が宇宙への貨物輸送、宇宙ステーションへの物資補給、さらには人の輸送に使用できるという。なお、Pitchbookによると、欧州スペーステック関連企業への投資はこの1ヶ月間だけで6件、その総額は1億4110万ユーロにのぼり、今回の投資は、同業界へのVC投資が急増しているトレンドの一環と言える。この新資本は、初の本格的な宇宙カプセル「Nyx Mission Odyssey」の商業化(2026年打ち上げ予定)、ならびに大気圏内再突入を制御する実証カプセル「Nyx Mission Possible」(2024年に打ち上げ予定)の最終調整と飛行に充てられる予定だ。

電池メーカーOur Next Energy、3億ドル調達
ミシガン拠点の電気自動車用電池メーカーOur Next Energy (ONE)が、シリーズBラウンドで3億ドルを調達した。不動産に特化したベンチャーキャピタル Fifth Wallと、グロースエクイティ投資会社Franklin Templetonが主導した最新ラウンドには、EV技術ソリューションメーカーや再生可能エネルギープロバイダーなどを含む未公表投資家も参加し、評価額が10億ドル以上になった。調達資金とミシガン州からの経済優遇措置助成金2億2000万ドルにより、ONEはLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)パック製品工場の拡張に加え、設備強化を行っていく予定だ。現在既に10社と契約している同社、今後5年間で36ギガワット時相当のバッテリーセル容量を提供する計算となる。経済が減速する中、ONEは景気後退を乗り切り、数年後の大規模生産に着実に備える意向だ。 
看護師不足の解決に挑むShiftMed、2億ドル調達
フレキシブルな仕事を探す看護師のための求人アプリShiftMedが、Panoramic Ventures 主導、Blue Heron Capital 、Audacious Capitalなどが参加した資金ラウンドで2億ドルを調達した。独立した請負業者(契約職)として看護師を扱う多くの人材派遣会社とは異なり、ShiftMedは従業員として看護師を採用している。それにより、所属する看護師の最低賃金、残業、家族および医療休暇などの規定で保護される上、健康保険や歯科保険などの福利厚生を受けることもできる。ある調査では、回答者の3分の2が、人員不足が看護に対する最大の不満であると回答しており、その解決策として、柔軟性とスケジュールのコントロールが要となると言われている。柔軟かつ確約されたシフトを看護師に提供することで、ShiftMedは医療における労働力戦略の改善にチャレンジする。 
ドローン画像処理のZeitview、5500万ドル調達
サンタモニカ発 ZeitviewがValor Equity Partners主導の最新ラウンドで5500万ドルを調達した。2014年設立の同社は、エネルギーとインフラを提供する顧客向けに、運用コストを下げながら資産の性能と寿命を向上させる高度な検査ソフトウェアを提供している。ドローンを使って、風力タービンやソーラーパネルなどの画像や熱測定などのデータを取得し、そのデータをAIアルゴリズムにかける。そしてタービンブレードの損傷などの異常をアルゴリズムでスクリーニング後分類し、問題が発生したときに顧客に知らせる、などの事例がある。再生可能エネルギー大手OEMや、風力、太陽光発電会社、保険会社、不動産管理会社などを顧客基盤としている。洪水、山火事などの自然災害が増加し、その被害を評価するための高度な航空画像ソリューションの需要が高まる現状から、Zeitviewのテクノロジーはさらに応用されていくだろう。

エネルギー貯蔵のVFlowTech、日本VCなどから資金調達
シンガポールに拠点を置き、バナジウムベースのレドックスフロー電池を提供するVFlowTechは今週、日本のリアルテックホールディングスが主導するシリーズAラウンドで1000万ドルを調達したことを発表した。今回確保した資金は、200MWhの生産ラインの立ち上げ、また250kWhのバナジウムベースのモジュール式長時間エネルギー貯蔵ソリューションの製造規模の拡大に充てる予定だ。また研究開発体制の強化に加え、新たなパートナーとともに、トルコ、米国、日本、そしてインドに市場プレゼンスを拡大する。特にEV充電、再生可能エネルギーのピークシフト、グリッドサービス、通信タワー、また24時間体制の自然エネルギー統合などのインフラ構築などの分野で電池の需要が高まる中、同社は現在住宅用として、30kWhと100kWhのユニットを商業展開する一方で、大規模マイクログリッド用としてMWhシステムの生産を完了したばかりだ。 
シンガポールのFreightify、Sequoia India主導で1200万ドル調達
シンガポールを拠点とするFreightifyは先日、Sequoia Capital Indiaが主導したシリーズAラウンドで1200万ドルを調達した。このラウンドには、Nordic Eye Venture CapitalとMotion Venturesも参加している。同社は、貨物輸送会社が顧客に提供するためのデジタルソリューションを開発している。例えば、荷物の送り方を知りたい顧客が、オンラインで必要事項を入力すると、数秒後にその荷物を引き受け可能な運送会社の見積もり一覧で表示される仕組みで、そのユーザビリティーはExpediaやBooking.comなどにも匹敵するという。このプラットフォームは、新たなデジタルオペレーションの手法やソリューションを展開しており、貨物輸送大手も協力に意欲を見せている。既に同社のサービスは45ヶ国、200社以上の貨物輸送企業に利用されており、その収益は昨年度の3倍に達したという。Freightifyは、ペイ・パー・ユース(使用した分だけ支払う)のビジネスモデルで既に収益を挙げている。
植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。