『欧州委員会と欧州投資基金が9000万ドルのBlueInvest Fundを立ち上げる』、『変わりゆく年の中でイスラエルのスタートアップエコシステム向上』、『英Manus、パーキンソン病を検出するためのデジタルペンを開発』、『クボタ、ドローンで果樹収穫するイスラエル企業に出資 』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第43回」をお届けします。(
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欧州委員会と欧州投資基金が9000万ドルのBlueInvest Fundを設置
欧州委員会は、欧州投資銀行(EIB)グループの欧州投資基金(EIF)と提携し、
BlueInvest Fundを立ち上げた。BlueInvest Fund は欧州投資基金が運用し、革新的なブルーエコノミーを戦略的にターゲットにして支援する株式ファンドに資金を提供する。ブルーエコノミーには、海洋環境に関わる企業から、海洋経済に貢献する商品やサービスを生産する陸上企業まで、さまざまな経済活動が含まれている。海は気候変動の影響を受ける最初の場所で、漁業や水産養殖から洋上風力、波浪・潮汐エネルギー、ブルーバイオテクノロジー、その他多くのイノベーション関連分野に至るまで、あらゆる海洋産業において気候変動の緊急事態に対処するための多くの解決策を秘めている。このセクターは、
欧州グリーンディールで発表された2050年までのカーボンニュートラル経済への転換において重要な役割を果たすことができるとされている。革新的な中小企業やスタートアップがこの資金の恩恵を受け、気候中立の実現に貢献できるようになるという点で大いに期待できる。
変わりゆく年の中でイスラエルのスタートアップエコシステム向上
イスラエルは比較的小さな国でありながら、膨大な数のテクノロジー系スタートアップを輩出してきた。ここ10年間でイスラエルは前進し、2013年に10億ドル以上でグーグルに買収された
Wazeのような画期的なスタートアップ企業を輩出してきたことで有名である。疑問を抱く文化、国軍の伝統、高等教育、英語の普及、リスクへの貪欲さ、チームスピリットなどが混在しているため、動きの速い企業が登場するには肥沃な場所となっている。過去10年間で、イスラエルの起業家のためのスタートアップへの資金提供は400%増加し、2019年はスタートアップの資金調達が30%増加、M&Aの活動が102%増加した。「
Israeli Tech Review 2020」によると、イスラエルのテック企業は2020年に578件の取引で前年比27%増の99.3億ドルを調達し、記録的な資金調達を達成している。
英Manus、パーキンソン病を検出するためのデジタルペンを開発
エディンバラに拠点を置くメドテック企業
Manusは、パーキンソン病や他の神経症状を検出するためのデジタルペンを開発し、約160万ドルの資金を調達した。同社はスコットランドで最も有望なアーリーステージのメドテック企業の一つであり、人々の生活に大きなインパクトを与える可能性を秘めている。今年中に発売する予定のNeuroMotor Penにはセンサーが搭載されており、手足のわずかな動きを分析する分析ソフトウェアとリンクしている。また、NeuroMotor Penは、デジタルペンに内蔵されたセンサー技術とソフトウェア、およびデシジョンサポートシステムを搭載した分析エンジンを組み合わせたユニークな特許取得済みのCEマーク付き医療機器である。それは、脳スキャンに代わる低コストの代替手段として、迅速かつ安価で、非侵襲的な援助になるだろう。
クボタ、ドローンで果樹収穫するイスラエル企業に出資
クボタはドローンを活用した果樹収穫サービスを手掛けるイスラエルのスタートアップ企業、
Tevel Aerobotics Technologies(以下「 Tevel社」)に出資したと発表した。果樹や野菜栽培は機械化が遅れており、今後の成長を期待している分野である。Tevel社のサービスはA I技術を活用して収穫かごが載った地上ユニットと有線でつながったドローンが自動で果実を収穫し、自動で熟した果実を見分けて収穫した後、収穫カゴへと運び込むという仕組みになっている。地上から収穫するロボットと比較して、ドローンは高所や地上からではアクセスしにくい場所にも届くことができるため、取り残しなく効率的な収穫作業を行うことを可能にする。こうしたTevel社の技術は、機械化が遅れた果樹栽培に拍車をかける存在になることであろう。

植木 このみ
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