『欧州の3Dプリンティング産業ブーム到来』、『西QUIBIM、医用画像データとAIによるコロナ検知技術を開発』、『英Polymateria、環境に配慮した新プラスチック分解法を開発』、『アムステルダムが地元の大学と提携してA I研究所を設立』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第17回」をお届けします。
このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
欧州の3Dプリンティング産業ブーム到来
人体組織からオーダーメイドの服まで、枠を越えた欧州の3Dプリンティング産業が活況を呈している。欧州特許庁の最新データによると、大企業だけでなく、小規模な企業もエコシステムの一躍を担っているため、3Dプリンティングに関連した欧州の特許出願数が年間36%のペースで増加しているという。最近の
例として、ドイツのスタートアップ企業
Headmade Materialsが、低コストの金属製3Dプリンティング技術で約220万ドルを調達した。同社は「Cold Metal Fusion」と呼ばれる新技術を生み出し、顧客が低コストで金属部品を3Dプリントできるだけでなく、設計、部品製造、プロセス統合のサポートも受けることができるようになった。様々な用途に沿ってどの業界にも役に立つ欧州の3Dプリンティング技術の日々の成長に注目していきたいところである。
西QUIBIM、医用画像データとAIによるコロナ検知技術を開発
スペインのバレンシアを拠点に人口知能を専門とするスタートアップ
QUIBIMが、Covid-19検出ソフトウェア開発のために約930万ドルを調達した。同社はX線やCTスキャンなどの医用画像からデータを抽出し、病気の早期発見につながる異常やバイオマーカーを見つけるアルゴリズムを開発している。これは負荷の高い放射線技師の負担を軽減する効果もあるという。また、肺を直接可視化するため、組織から情報を得ることも可能となり、現在活用されているPCR検査よりもはるかに正確で効率の良い検査方法となると期待されている。QUIBIMの創設者兼CEOのAngel Alberich-Bayarri氏は、この技術は現在の検査技術を補完する重要な技術になり得ると述べた。
英Polymateria、環境に配慮した新プラスチック分解法を開発
ロンドンを拠点とする
Polymateriaは、自動的に生分解することで痕跡を残さない、環境に配慮したプラスチック分解法の開発のため約1900万ドルを調達した。バイオトランスフォーメーションと呼ばれるその新技術は、一般的なプラスチックを完全に生分解し、環境に害を与えずにマイクロプラスチックをゼロにすることができるため、使い捨て製品だけでなく、生分解性を兼ね備えるリサイクル製品にも活用される。インペリアルカレッジと研究を重ねるチームが支える同社は、最近Innovate UKなど複数の政府組織から資金提供を受け、PET用のバイオトランスフォーメーション技術と、家庭用及び産業用の両方で堆肥化の国際基準を満たす初となる石油ベースのプラスチックの開発を行っている。
アムステルダムが地元の大学と提携してA I研究所を設立
アムステルダム市は、地元の総合大学であるアムステルダム大学(UvA)とアムステルダム自由大学(VU)と提携し、Amsterdam Science Park内に、新しい社会的人工知能研究所となる
Civic AI Labを設立した。各組織から金銭的な支援が行われるこの研究所では、博士号の取得に向けて取り組む5人の研究者が、教育、福祉、環境、モビリティ、ヘルスケアの分野でのAI応用を研究する。この研究所はまた、新しい技術やその倫理的で包括的な技術の利用に関する質問を持つ住民や企業のための情報ポイントとしても機能し、彼らがAIによって掴めるチャンスとリスクの両方を認識することをサポートするとしている。
橋本綾華
Open Innovation Group, Intralink Limited
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