『欧州におけるサステイナビリティ革命』、『オリンパス、イスラエルメドテック企業買収へ』、『プライバシーフレンドリーな不正防止技術、Identiq』、『ヒト幹細胞モデルのNewcells Biotechが資金調達』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第48回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
欧州におけるサステイナビリティ革命
欧州エコシステムがサステイナビリティで世界をリードする理由として、そのエコシステムを支えているのがスタートアップだけに限られない点が挙げられる。市民レベルでも約95%が環境保護を重要視する欧州では、EUのグリーンディールや各国のネットゼロ政策など国家レベルの活動に加え、昨年にカーボンニュートラルを達成したBoschや2025年までに100%循環型パッケージの使用を目指すDanoneなどの大企業による活動により、その国民性があらゆる段階で確立されている。さらに欧州イノベーション会議(EIC)もグリーンディールに準じた64企業に3億ユーロを投入した上、ネットゼロを掲げる欧州スタートアップも昨年だけで21億ポンド(前年比129%増)を調達。その違いは、米国(16%増)や中国(30%減)と比較しても明らかある。最近は、欧州VCもポートフォリオのECG評価を強化する動きを見せており、日本企業もこの流れを活用したいところだ。
オリンパス、イスラエルメドテック企業買収へ
今週、オリンパスが泌尿器事業における低侵襲治療製品ポートフォリオ強化のため、イスラエル発
Medi-Tateの全発行済株式取得のための交渉を開始すると発表した。Medi-Tateは2007年の設立以降、CEマークとFDAの認証済みである『iTind』をはじめとする良性前立腺肥大症(BPH)向けの低侵襲治療デバイスの開発・製造を行うメドテック企業で、既に欧州や米国に展開している。オリンパスは経営戦略の一環として泌尿器科を含む領域における「治療機器事業への注力と拡大」を掲げており、Medi-Tateへは2018年から出資を行なってきた。一時的に尿道に留置するナイチノール製のワイヤーデバイスとして、排尿障害の改善をサポートするiTindの採用により、オリンパスは同事業のさらなる成長を目指すという。
プライバシーフレンドリーな不正防止技術、Identiq
独自のセキュリティ技術を開発するイスラエル発
Identiqが、シリーズAラウンドにて、Sony Innovation Fundなどから4700万ドルを調達した。2018年に設立された同社は、顧客データを第三者と共有することなく、プライバシーを保護しながら不正を防ぐという独自のアプローチを取っている。例えば、Identiqのクライアント(オンラインストア)をショッピングユーザーが初めて使用した際、そのクライアントはIdentiqのネットワーク内の他ストアに、その特定のユーザーを知っているか、また信頼できるかどうかを尋ねることができる。このP2Pネットワークは、暗号技術を用いることで個人ユーザーデータを収集することなく、クライアントが新規顧客を匿名で精査し、不正・スキャムなどの悪意のある人物・行為を排除することを可能にする。同社によると、同ソリューションは既にFortune 500社にも採用されており、今後はさらなるグローバル展開を目指す予定。
ヒト幹細胞モデルの英Newcells Biotechが資金調達
英ニューカッスルをベースに細胞生物学と幹細胞における独自技術(iPSC)を活用して、ヒト組織モデルを構築するライフサイエンス企業の
Newcells Biotechが、500万ドルの資金調達に成功した。この先駆的なモデリング技術は、人間による治験の前に、薬の安全性、有効性、また薬理学に関するデータを生成する能力を向上することができる。実際に、世界中の製薬会社に初期の創薬プロジェクトにおけるリスク削減に効果的なデータを提供してきたという。同社は今回の資金調達により、肝臓と肺のモデル開発を加速させる予定で、これにより新型コロナウイルスとその治療法に関する研究を前進できる可能性もあると示唆している。また北米における腎臓及び網膜治療モデルの商品化と販売も開始する予定だ。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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