『Apple、エジンバラ大学…立て続く大型設備投資』、『低価格のグリーン水素製造、H2Pro』、『丸紅、ウルトラキャパシタのエストニア企業に出資』、『AI駆動のがん検出技術、Ibex Medical Analytics』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第49回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
Apple、エジンバラ大学…立て続く大型設備投資
今週、Appleがミュンヘンにシリコンデザインセンターを新たに設立すると発表した。ミュンヘンには既に
多くのテック企業が研究開発施設を構えており、Appleも欧州最大のエンジニアリングハブとして40ヶ国から1500人以上のエンジニアを配置し、パワーマネジメントデザイン、アプリケーションプロセッサなどに注力してきた。Appleは今後3年間で同施設に10億ユーロ以上を投資し、5Gとワイヤレス技術の開発を促進する。また
弊社イノベーションネットワークパートナーであるエジンバラ大学も、環境、オフショアエネルギー、製造、ヘルスケア、生活支援、アグリテックなどに焦点を置くロボット工学及びAIに特化した
National Robotariumを設置するという。この施設は、同領域では英国最大、最先端の施設となる予定で、来年春の始動を目指すという。
低価格のグリーン水素製造、H2Pro
再エネ由来の電力により水を電気分解して生成されるグリーン水素(ゼロエミッション)の
H2Proが、ビル・ゲイツ氏が率いる
Breakthrough Energy Ventures、Hyundai、住友商事などから新たに2200万ドルを調達した。2019年にイスラエルに設立されたH2Proは、グリーン水素生産における最も実用的な方法として知られるアルカリ水電解に似たプロセスを2つのステップに分割することで、エネルギー使用量を削減する。同社によると、これにより$2.5〜$6.8/kg(2019年)という高額なグリーン水素のコストを、2030年までに$1/kgまで抑えることができるようになるという。現時点では、まだプロトタイプで100g/日の生産量にとどまり、従来の大型水電解技術には大幅に劣るものの、2023年までにはイスラエルに大規模なグリーン水素生産工場を設置する予定だ。
丸紅、ウルトラキャパシタのエストニア企業に出資
エストニアに拠点も構える丸紅が、
Skeleton Technologiesへの出資と戦略的パートナー提携を通じ、日本を含むアジア市場における同社のウルトラキャパシタの販売と次世代蓄電技術の用途・顧客開拓を行うと発表した。弊社が以前にアジア進出を支援したこともあるSkeleton社は、高出力、高速充放電、長寿命、安全性、リサイクル性といった優れた特徴を持つ蓄電装置の欧州最大メーカーであり、欧米の大手自動車及び重電メーカーを中心にウルトラキャパシタを提供してきた。一方、蓄電容量を向上できる次世代製品開発も行なっており、リチウムイオン電池の代替となる、また燃料電池との併用することでシステムの低コスト化、効率性・持続可能性改善にも取り組んでいる。丸紅はこれにより、世界が目指す脱炭素社会の構築に貢献することを目指すという。
AI駆動のがん検出技術、Ibex Medical Analytics
生検でがん細胞をより効率的に検出するためのAIイメージング技術を開発する
Ibex Medical Analyticsが、シリーズBラウンドにて3800万ドルを調達した。あらゆる組織タイプの診断を可能にする同社のGalenソリューションは、AIによるアルゴリズムを使用し、がんをより正確かつ迅速に診断し、生検標本から新しい洞察を得ることで、至急レビューする必要がある部分を病理医に通知できる。同社はこれにより、病理医の生産性を40%向上できると主張している。Ibexは今後、今回の調達資金をもとに欧米市場への進出と研究開発を促進するとともに、パートナー企業とがん管理や創薬段階で使用される予測アプリケーション用のAIマーカーの開発に取り組んでいくとしている。
植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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