『生分解性プラスチックのPolymateria、2,000万ポンドを調達立』、『EV充電サービスのVirta、アジア事業拡大に向け資金調達 』、『スイスのバイオテック業界、過去最高のパフォーマンス 』、『インパクトテックDivert、グリーンボンド資金で新施設建設』、『ベクトルデータベースのPinecone、1億ドル調達』、『Foresight、超高感度がん検出技術で5,900万ドル調達』、『住友商事、代替タンパク質のNutrition Technologiesと戦略的提携』、『仏ZEBOX、シンガポールにSCMハブ設立』を取り上げた「イノベーションインサイト:第30回」をお届けします。 
生分解性プラスチックのPolymateria、2,000万ポンドを調達
英Imperial College Londonのスピンアウト企業で、生分解性プラスチックを開発するPolymateriaは、シンガポールのABC Impactと、ベトナムのIndorama Venturesが、同社のアジアにおける商業化加速を目的に参加した最新のシリーズBラウンドで、2,000万ポンドを調達した。同社によると、従来のプラスチックは完全に分解されるまでに数十年から数百年かかるのに対し、Polymateriaが開発するパッケージング製品は、1年未満で90%以上分解されるという。またプラスチックが分解される際、マイクロプラスチックや有害物質の残留物がなく、水、CO2、バイオマスのみが残る点でも環境への負担を削減している。Polymateriaは今回の資金調達により、新市場への参入、研究所への投資、商品化を加速していく予定だ。 
EV充電サービスのVirta、アジア事業拡大に向け資金調達
EV充電プラットフォームプロバイダーのVirtaは、欧州とアジア太平洋地域における事業拡大のため、8,500万ユーロの資金を確保した。ヘルシンキ発の同社プラットフォームにより、利用者はコアビジネス、あるいは付加価値サービスとして、EV充電エコシステムにおける事業の立ち上げ、スケールアップ、運用が可能となり、現在既に世界35ヶ国、1,000社以上のEV充電事業者が、Virtaのプラットフォーム上で充電サービスを運営している。Virtaによると、2022年の年間売上高は、前年比112%増の3,900万ユーロで、2023年には4回連続で「Financial Times 1000 Europe's Fastest Growing Companies」にも選出されている。今回の新規資本は、2年後までに欧州とアジア太平洋地域での充電取引量を5倍以上に増強するために活用される一方、2025年末までには、Virtaプラットフォームの発電容量も現在の約2,000MWから、大型原子炉10基分に相当する12,000~15,000MWにまで増加すると予測されている。 
スイスのバイオテック業界、過去最高のパフォーマンス
Swiss Biotech Associationが発表した最新レポートによると、2022年にスイスのバイオテック業界が売上高、投資額、雇用者数で過去最高の数値を記録したことがわかった。昨年の同国発バイオテック企業の売上高は75億ドル以上、研究開発への投資額も30億ドル以上に達した。また、優れた業績を称えるため、Swiss Biotech Associationは、ヘルスケア分析プラットフォームのSophia Geneticsと、抗体治療薬開発のHumabs BioMed/Vir Biotechnologyに、Swiss Biotech Success Stories Awardsを授与した。同レポートによると、2022年末時点で、欧州バイオテック企業の約20%がスイスに拠点を置き、その決め手として、中心部の立地、近代的なインフラ、ビジネスに適した環境、多様な人材プールなどを挙げているという。今回の調査により、スイスが特にバイオテック企業にとって魅力的なテックハブであることが再度明確になったと言える。

インパクトテックDivert、グリーンボンド資金で新施設建設
マサチューセッツ発インパクトテックDivertは、カリフォルニア州公共金融公社(CalPFA)を通じて発行された6,300万ドルのグリーンボンドを確保し、資金源となる化石燃料代替エネルギー製造施設を立ち上げる。65,000平方フィートに及ぶカリフォルニア州ターロック施設は、メタン発酵の手法により、小売業者やその他企業から廃棄される食品を回収し、カーボン・ネガティブな再生可能エネルギーに変換、埋立地で有害なメタンが発生するのを防ぐ。さらにDivertは、廃棄物を削減する方法や、まだ食べることができる食品を寄付する方法についての洞察を与えるデータ分析も企業に提供する予定。2024年の本格稼働後は、年間10万トンの廃棄食品を処理し、毎年最大23,000トンのCO2を相殺すると期待されている。同社は現在、5,400の食品小売店から出る米国内の廃棄食品約0.5%を管理しているが、今後これを5%まで拡大する狙いだ。 
ベクトルデータベースのPinecone、1億ドル調達
OpenAIのGPT-4のような大規模言語モデル(LLM)に長期記憶を提供するニューヨーク発Pineconeは、7億5,000万ドルの評価額で、Andreessen Horowitzが主導した1億ドルのシリーズB資金を調達した。Pineconeは2021年にベクトル特化型データベースを導入、AIモデルからのベクトル埋め込みをインデックス化し、高速でスケーラブルなアプリケーションを構築できるマネージドサービスを提供している。今日のジェネレーティブAI時代において、Pineconeはエンジニアがチャットボットと自社のデータを結びつけ、正しい答えを提供できるよう支援している。昨年秋のChatGPTの登場でPineconeは急成長し、このツールは瞬く間にAIアプリケーションのソフトウェアスタック、特にメモリレイヤーにおいて不可欠な存在となった。同社の顧客層は、Shopifyをはじめ、あらゆる業界や規模で爆発的に増加している。LLMの使い方に関する開発者の関心と研究が高まる中、Pineconeは今後もAIコミュニティにおける話題の中心となるだろう。 
Foresight、超高感度がん検出技術で5,900万ドル調達
コロラド発、がん検出検査を開発するForesight Diagnosticsが、Foresite Capital主導、The University of Colorado Healthcare Innovation Fundなども参加したシリーズBラウンドで約5,900万ドルを調達した。Foresightの特許技術であるPhasED-Seqは、循環腫瘍DNAを超高感度で検出するために、フェーズドバリアントのシーケンスを活用する。同社は最近、体内に残り、疾患の再発を引き起こす可能性がある少数の癌細胞を指す、微小残存病変(MRD)検査プラットフォームの有用性実証のための取り組みを拡大している。今月初め、Foresightは米国がん研究協会の年次総会で、PhasED-Seqが大部分の血液サンプルで100万分の1以下の検出限界を達成したと発表した。この分析感度の向上は、早期肺がん患者の手術後MRD検出における臨床感度の約2倍に相当する。今回調達した資金でForesightは、自社がん再発検査プラットフォームの臨床開発ならびに商業化の加速に注力する。

住友商事、代替タンパク質のNutrition Technologiesと戦略的提携
マレーシアを拠点に昆虫由来の代替タンパク質などを開発するNutrition Technologiesと、同社の既存投資家である住友商事が戦略ビジネスパートナーシップを締結した。住友商事はこれにより、ペットフードや養食魚用飼料など幅広い分野に活用されるNutrition Technologiesの技術に関する日本での独占販売権を獲得し、国内における市場開拓や高付加価値製品の開発を進めていく。食料需要の増大やタンパク質供給への圧力が高まる中、同スタートアップが原料とするアメリカミズアブ(Black Soldier Fly:BSF)は、熱帯性の種であるため、熱帯の環境下で素早く効率的に成長する。同社はハエの育成や繁殖のために空調を必要する欧州の競合他社とは異なり、東南アジアの温暖な気候を活かしながら、製造コストやCO2排出量の削減を実現している。さらに、加工食品を製造する際に発生する木くずをメーカーから購入し、ハエの餌とすることで、木くずのリサイクルによるCO2排出量削減にもつなげている。なお、同社は現在、マレーシアに2ヘクタール規模の工場を所有し、欧州、アジア、南米向けに製品を出荷している。 
仏ZEBOX、シンガポールにSCMハブ設立
仏大手海運会社のCMA CGMが、サプライチェーン業界にさらなるイノベーションをもたらすために設立した国際的なアクセラレーターネットワークであるZEBOXが、シンガポールにAPAC本部を設置した。Enterprise Singaporeやシンガポール海事港湾庁などの政府機関が支援する同拠点は、インドネシア、マレーシア、台湾、日本、韓国といった市場にも目を向けている。ZEBOXは既に欧州や北米を中心に5ヶ所にハブを構えているが、今回シンガポールを選んだ理由として、4,000以上のスタートアップや企業がAPAC本社を構えている点、また主要航路の中継点に位置する同都市国家の戦略的ロケーション、透明な法・金融制度、強力なデジタルインフラなどによってアジアの大部分と世界につなぐグローバルな物流ハブとして機能している点を挙げた。なお、このインキュベータープログラムは、メンタリングや資金だけでなく、BNP Paribas、CEVA Logistics、Infosysを含むZEBOXの大企業パートナーとソリューションを検証するためのテスト環境を提供するという。
植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。