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イノベーションインサイト:第33回

イノベーションインサイト:第33回

『英国政府、10億ポンド規模の半導体新戦略発表』、『仏TISSIUM、組織再建製品ローンチへ5,000万ユーロ調達』、『ソフトバンク傘下のBoldly、新型自動運転EVのAuve Tech と提携』、『セコム、Eagle Eye NetworksとBrivoに約1.9億ドル出資』、『「オールインワン」RNA薬剤送達のReNAgade、3億ドル調達』、『排水浄化スタートアップGradiant、2.2億超ドル調達』、『ベトナムのVinESと丸紅、蓄電池事業で提携』、『図面をコードに変換、シンガポールのLocofy.aiが資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第33回」をお届けします。

英国政府、10億ポンド規模の半導体新戦略発表

英国政府は、半導体セクター強化を目標に、向こう10年間で最大10億ポンドを投資する新戦略を発表した。英国はこの半導体戦略により、国内市場の拡大、サプライチェーンの問題解消、国家安全保障上のリスクからの保護などの実現を目指す取り組みの一環として、今後2年間で2億ポンドを拠出し、インフラの改善、研究開発の増加、海外との連携促進を図るという。スナク首相の来日中に行われた今回の発表だが、同時期には、半導体などの重要技術に関する研究開発や相互のサプライチェーン強靱化を含む、日英二国間の科学技術協力促進に向けた協力文書にも別途署名がなされている。また来年には、UK Research & Innovationと日本科学技術振興機構が、共同で最大200万ポンドの投資を行い、半導体の基礎技術について共同研究を行う日英研究者を支援する予定だ。

仏TISSIUM、組織再建製品ローンチへ5,000万ユーロ調達

損傷した組織を再構築し、本来の機能を回復させるポリマーを開発するパリ発TISSIUM が、最新のシリーズDラウンドで5,000万ユーロを調達した。グリセロールやセバシン酸のような安全な天然由来の化合物の組み合わせがベースとなる同社の生合成ポリマー、バイオモルフィックポリマー、プログラマブルポリマーは、末梢神経、循環器、消化器など、複数の治療分野で使用できる。また3D印刷インプラントを作成するための組織接着剤や、局所的なドラッグデリバリーシステムにも活用されている。なお、同社は既に3件のCEマークと64件の特許を取得済みで、現在も37件の特許を出願中だ。今回の資金調達により、TISSIUMは神経とヘルニアの修復における製品の商業化を継続しながら、新たな潜在的用途の拡大を目指す。

ソフトバンク傘下のBoldly、新型自動運転EVのAuve Tech と提携

自律走行システムに特化したソフトバンクの子会社Boldlyが、自動運転シャトルの設計・製造を行うエストニア発Auve Techと提携し、2025年までに50ヶ所で自動運転バスを導入するという日本の取り組みの加速を目指す。「MiCa」と名付けられた8人乗りの新型自動運転EVシャトルバスを製造するAuve Techは、30社以上の候補企業を押しのけ、Boldlyの提携企業に選定された。2020年に日本初の商用自動運転車を導入したBoldlyは、日本で急速に進む少子高齢化社会に対応するため、今年度中に国内の新たな8つのエリアで自動運転バスの運行を目指しており、関係省庁から必要な認可を取得した後、今夏以降にMiCaの商用サービスを開始する予定だ。またBoldlyは、日本の約1,700の自治体をカバーするために必要なルール改正や次世代公共交通システムの予算増額について、政府関係者と協議を進めているという。

セコム、Eagle Eye NetworksとBrivoに約1.9億ドル出資

日本のセキュリティ大手セコムは、米セキュリティ起業家のディーン・ドラコ氏が株式の過半数を所有するとされるプロバイダー2社、Eagle Eye NetworksBrivoに、1億9,200万ドルという大型株式資金を投資したと発表した。テキサスを拠点とするEagle Eye Networksはビデオ監視ソリューションを開発する一方、メリーランド州発Brivoはアクセスコントロールシステムを提供しており、どちらもクラウドセキュリティ業界のパイオニア的存在だ。Eagle Eyeは、大企業など約2~3万社の顧客と既に取引しているが、Brivoのアクセスコントロールサービスも約2,000万人に利用されているという。マクロ経済や政治情勢の影響、そして悪質なオンライン活動の増加もあり、「Physical Security as a Service」と呼ばれるクラウド型ソリューションが、今後数年間は毎年15%ずつ成長すると見込まれている。今回の調達資金は、Eagle Eye、BrivoそれぞれのプラットフォームにAIベースの技術をより多く組み込むための研究開発費に充てられる予定だ。

「オールインワン」RNA薬剤送達のReNAgade、3億ドル調達

過去10年程で、遺伝子からの指示でタンパク質を作る核酸であるRNAから作られる医薬品が、希少疾患治療薬やパンデミックの抑制に貢献したワクチン開発につながった。しかし、細胞のメッセンジャー分子を利用した医薬品の用途は限定的で、治療できない疾患も多いという。この問題を解決すべく、マサチューセッツ発ReNAgade Therapeuticsが、MPMのスタートアップインキュベーション関連会社であるBioImpact主導、今年の米バイオテック最大規模となるシリーズAラウンドで3億ドルを調達した。同社は、組織や臓器に入り込むことができる、COVID-19ワクチンやRNA医薬品に使われている脂質ナノ粒子を開発し、さまざまなアプローチに適した「オールインワン」システムでRNA薬剤送達の実現に挑む。また、合成された環状RNA創薬で話題のOrna Therapeuticsと共同研究も行っている。詳細は明らかにされていないが、ReNAgadeは今後、免疫細胞、腎臓細胞、筋肉細胞を標的とした薬の開発を目指している。

排水浄化スタートアップGradiant、2.2億超ドル調達

ボストン発、産業排水の浄化と再利用で急成長中のGradiantが、Centaurus CapitalとBoltRock Holdingsが主導する2億2,500万ドルの資金調達ラウンドにより、評価額が10億ドルに達したと発表した。同社は、複雑な産業作業向けに低コストの浄水技術を開発し、半導体大手のTSMCや製薬会社のファイザー、コカ・コーラなどを含む顧客の汚染水をリサイクルしている。水不足が人々や地域にどのような被害をもたらすかを目の当たりにして育ったインド出身共同創業者の二人が、MITの博士課程で水の浄化を研究した後創業したGradiantは、約600の水処理施設を持ち、数百件の特許と共に、数々の浄化技術を提供している。顧客が排出する汚染水の98%を再利用可能とし、1日1,000万ガロンの水を使うチップ工場や、超純水を必要とする製薬工場にとっては、気候に関係なく工場を稼働させ、生産コストと工場が環境に与える影響の両方を低減できる可能性がある。水への依存度を大幅に削減することで、持続可能性を飛躍的に高められる同社、今後は中東や欧州の新市場への参入も計画中だ。

ベトナムのVinESと丸紅、蓄電池事業で提携

Vingroupのグループ会社であるVinESと、丸紅の子会社であるMarubeni Green Power Vietnamは、ベトナムにおけるバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の採用促進を目的とした戦略的提携を発表した。これにより、両社はVingroupが所有する複数の事業所におけるBESSの評価、投資、設置、運用を共同で行うことになる。これらのシステムは、省エネソリューション、負荷分散、また、効率的な電力管理を実現するという。これに加え、BESSには将来的に再生可能エネルギーシステムと統合される可能性があり、Vingroupによるクリーンエネルギーへの移行をサポートすることとなる。丸紅側は、第一段階として数十MWh分のBESSを開発する予定であり、その後の段階でも更なる容量拡張を見込んでいる。なお、Marubeni Green Power Vietnamは、ベトナム内において多岐にわたる経験を持つことで知られ、1970年代から12の火力発電プロジェクトに参画し、2021年には商業・工業用途向けに再生可能エネルギーの供給を開始している。

図面をコードに変換、シンガポールのLocofy.aiが資金調達

AIを活用し、図面をコードに変換できるフロントエンド開発アクセラレーションプラットフォームを提供するLocofy.aiが、TPG Capital、Golden Gate Ventures、インドのAccel、Aviondor Groupなどから425万ドルを調達した。FigmaやAdobe XDで作成した図面を、AIを用いてReact、React Native、HTML-CSS、Gatsby、Next.jsのコードに変換できる同プラットフォームには、スタートアップ、企業、フリーランサー、学生グループなど、195ヶ国から約11万名のエンジニアやデザイナーが登録しているという。今回の資金調達により、デザインからコードへの変換プロセスを大幅に簡略化するとともに、プラットフォームのインターフェース拡張により様々なワークフローに対応していく予定だ。また同プラットフォームは現在、Storybook、Github、Netlify、Vercel、またSnackとの統合を果たしており、さらなる将来的なコラボレーション拡大を望んでいる。 植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

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