『オートフォーカス機能搭載眼鏡のIXI、Amazonなどから資金調達』、『DePoly、スイスにPETリサイクル工場設立に向け2,300万ドル調達』、『英国と日本、量子技術での協力強化で覚書締結』、『クリーンな鉄電解抽出のElectra、1.8億ドル調達』、『企業の非構造化データ活用を支援、Reductoが資金調達』、『AI活用コンシューマーリサーチのListen Labs、2,700万ドル調達』、『企業をブラウザ上の脅威から守るSquareX 、$2,000万ドルを調達』、『フィリピンのLenderLink、リアルタイム信用情報機関構築で資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第131回」をお届けします。

フィンランドを拠点に処方箋対応の眼鏡を提供するIXIが、Amazon Alexa Fundも参加したシリーズAラウンドで$3,600万ドルの資金調達に成功した。2021年に設立された同社は、着用者の老眼に対して焦点を自動調整し、透明化機能を備える低消費電力のメガネを開発している。この機能は、眼鏡のフレームに組み込まれた非常に小さなデバイスが目の動きを追跡し、液晶レンズを自動調整することで実現されて、これにより着用者は焦点が合った物体をはっきりと見ることができる。またテンプル(つる)に組み込まれた直径約4mmのバッテリーが1日分の使用に十分な電力を供給する一方、マイクロコントローラーと無線接続機能は鼻パッドに、レンズ駆動用の電子回路もレンズの縁に沿って埋め込まれている。さらに眼球追跡用の赤外線センサーは、レンズのプラスチック部分にシームレスに統合されている。IXIは新たな調達資金を活用し、ソリューション開発加速と商業化を開始する予定だという。

PETとポリエステルプラスチックのリサイクル技術の開発に取り組むスイス発クリーンテックのDePolyが、シード資金として$2,300万ドルを調達した。2020年設立の同社が提供するソリューションは、これらのプラスチックを元の構成成分であるPTAとMEGのモノマーに分子レベルで分解する。生成されるPTAとMEGはバージングレードであり、化石由来の代替品としてサプライチェーンを乱すことなく使用できる。DePolyによると、これは従来の機械的リサイクル方法とは異なり、プラスチックを単に破砕して低品質の材料に再加工するものではなく、最終製品のCO2排出量を最大66%削減できるという。すでにファッションのOdlo、消費財のPTI、化粧品のBeiersdorfなどと提携している同社は、今回の調達資金をスイスに年間500トンの生産能力を持つデモ施設建設に充て、2025年夏にその稼働を開始する計画だ。

今週、英国と日本が量子コンピューティング分野における協力強化に向けた覚書を締結した。量子サイバーセキュリティへの£121mの投資など、すでに量子技術支援に複数の措置を発表している英国政府は、これらの取り組みの強化を目的とした戦略的パートナーシップの確立を目指している。この覚書で両国は、視察団の派遣をはじめとする学術界と民間部門の連携促進、政策立案における連携強化に向けた定期的な議論の開催、研究インフラや試験施設のアクセス共有など、多岐にわたる分野での協力を行うことで合意した。また量子技術の商業化を加速するため協力し、産業コンソーシアムやVCファンドと連携することで、量子技術への民間資金と投資レベルを向上させることを目指す。今回の合意は、急速に発展する量子技術分野における国際協力の促進において、重要なマイルストーンとなった。


コロラド発、鉄鋼製造の脱炭素化に特化したスタートアップElectraは、鉄の精製に革新的な電解抽出技術を拡大するため1億8,600万ドルを調達した。電解精錬は、銅やニッケルなどの金属の精錬に伝統的に使用されてきた技術で、クリーンな電気と低温を利用して鉱石から純粋な鉄を抽出するプロセスだ。世界のCO₂排出量の7〜9%を占める鉄鋼生産業界において、石炭焚き高炉に代わる低炭素代替手段として脱炭素化に重要な役割を果たす可能性が期待されている。年間500トンのクリーン鉄を生産する最初のデモ施設で2029年までに商業規模の操業開始を支援するための同資金調達ラウンドには、Capricorn Investment Group、Temasek、Breakthrough Energy Venturesに加え、Rio Tinto、BHP、トヨタ通商が参加した。Electraの技術は、水素を基にした直接還元鉄やMITのスピンアウトBoston Metalの溶融酸化物電解技術の競合となり、数世紀にわたる鉄の製造方法を置き換えるクリーンでスケーラブルなインフラとして、1兆ドル規模の産業を再構築する目標を掲げている。

サンフランシスコを拠点にAIワークフロー向けの資料取り込みに特化したReductoは、Benchmark主導のシリーズAラウンドで2,450万ドルを調達した。MITの卒業生2名によって設立された同社は、AIチームがPDFやエクセルなどの形式から構造化されていないデータを解きほぐし、LLMのハルシネーションや不正確な出力の根本原因を解消する手助けをしている。Reductoプラットフォームは、複雑な文書を正確でLLM対応の入力データに変換し、AWS、Google、Microsoftの既存ツールと比較すると精度と速度で20%以上の優位性を示すという。過去1年間だけでAirtableやScale AIを含む顧客向けに数億ページを処理した実績もあり、文書処理速度が3倍に増加、チャンキングに関連するエンジニアリング時間が90%削減されるなど、大幅な成果が報告されている。Reductoのコンピュータビジョン駆動型モデルは「人間のように文書を読む」ことで、信頼性の高い下流AIパフォーマンスを実現する。

AIを活用した顧客調査スタートアップListen Labsは、事業拡大および開発強化のためSequoia Capitalをリードインベスターとするシード及びシリーズAラウンドで2,700万ドルを調達した。Listen LabsはAIを活用して音声ベースの顧客インタビューを実施し、回答をレポートに要約する。依頼元企業がビジネス上の質問を共有すると、AIがインタビューの設計、適切な参加者の選定、回答の分析までを全て ハンドリングする。製品テストや新規市場探索など、ユーザーがどのような目的で利用しても、Listen Labsは24/7稼働し、数時間で洞察を提供することができる。デモグラフィックや地域を問わず数百万人の事前審査済みインタビュー対象者にアクセスできるため、企業は広告やメッセージ戦略から新製品コンセプトやユーザビリティまで、あらゆるテーマについて人々の意見を迅速に把握できる。Google、Microsoft、SKIMS、Nestléなどが既に利用しており、インタビューでの会話を洞察に変換し、レポート、ハイライトリール、パワーポイントプレゼンテーションなどで提供する。


シンガポールを拠点とするサイバーセキュリティ企業のSquareXは、同分野への投資に特化した米国のSYN Venturesが主導した最新のシリーズAラウンドで$2,000万ドルを調達した。同社のブラウザ拡張機能は、業界初のブラウザ検出と対応(Browser Detection and Response:BDR)ソリューションとして、複雑な変更管理を必要とせず、専用の企業ブラウザと同等の機能を提供しつつ、あらゆるブラウザを企業向けの安全なブラウザに変換する。この独自のアプローチにより、企業はブラウザのセキュリティを根本から変革し、悪意のある拡張機能、フィッシング、生成AIによるデータ漏洩、内部不正など、多様な脅威をブラウザ環境内で直接、より効果的に管理することで、ユーザー体験を損なうことなく攻撃対象領域を大幅に削減することができる。

信用データインフラの改善に取り組むLenderLink Philippinesが、同社初の資金調達ラウンドとなるオーバーサブスクライブのシードラウンドで$125万ドルを調達した。貸付機関による不良債権削減を支援する同社は、APIを優先したプラットフォームを通じて、これらの機関が消費者信用リスクデータをリアルタイムで報告・アクセスできるようにすることで、消費者貸付の現代化を目指している。また高いデフォルト率による借入コストの増加に対処することで、急速に成長するフィリピン国内の消費者貸付市場において、消費者金利の引き下げと金融包摂の拡大を促進する道筋を築いている。これにより、LenderLinkは貸金業者に高度なリスク評価ツールを提供することでさらなる成長を促進する一方、借り手にはより公平な融資アクセスを実現する。
