『UiPathに続け!急成長を続けるCEEエコシステム』、『目をスキャンするだけの糖尿病判定技術 』、『フィンテックと持続可能性を融合するスウェーデン企業』、『IoEに対応した半導体ファウンドリ』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第81回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
UiPathに続け!急成長を続けるCEEエコシステム
先週のスペインエコシステムに続き、今週はルーマニア発UiPathのサクセスストーリーでも注目を集める中東欧(CEE)地域の成長にフォーカスしたい。AVG、Avast、 Skypeなどの存在で台頭してきたCEEは、近年の
Bolt、
Wise、
GitLab、
Pipedriveなどの登場により、現在までに特に強みを持つエンタープライズソフトウェアを中心にユニコーン数が34社、テック企業の企業総額も2010年の19倍となる1,860億ユーロ以上に達している。また今年のVC投資額も既に40億ユーロと、過去最高だった2019年の倍額以上になると予想されている。これは他地域でよく見られるメガラウンドではなく、シリーズB以前のアーリーステージ企業への投資による影響が大きいという。その中でも特にエストニアの活躍は顕著で、デジタルアプローチの推進に基づいた好ましいビジネス環境により、1人当たりの国内スタートアップ数(1048社)や投資額(€1967)が欧州一とも言われており、CEE全体における経済成長に伴う勢いから今後も目が離せない。なお、
ワルシャワや
タリンのエコシステムを特集したテックハブブログシリーズもリンク先から閲覧可能。
目をスキャンするだけの糖尿病判定技術
糖尿病といえば、患者が定期的な血糖値レベルの測定のため、痛みや不快感を伴う指先からの自主採血を行う必要がある。近年は非侵襲的な血糖値モニタリング装置も登場はしているものの、まだ開発途中であるのが現状である。そんな中、英国発
Occuityが、目をスキャンするだけという革新的な非接触型の光学式血糖値計測装置の開発に乗り出し、クラウドファンディングプラットフォームのSeedrs上で、約280万ポンドの調達に成功した。850を超える投資家が世界37ヵ国から集まった今回は、目標金額だった180万ポンドが開始後たった24時間で達成されたという。同社の技術は、時間の経過とともに目に蓄積する終末糖化産物(AGE)の濃度を検出し、機械学習と組み合わせることで、被験者が非糖尿病、糖尿病予備軍、または糖尿病であるかどうかをたった数秒で示すことができる。一切のコンタクトが不要であるため、薬局、介護施設など非臨床環境での使用も可能となる。また糖尿病関連にとどまらず、緑内障、近視、アルツハイマー病の早期発見など様々な分野での活用も期待されている。
フィンテックと持続可能性を融合するスウェーデン企業
スウェーデンはフィンテックとサステイナビリティのホットスポットとして既に幅広く知られているが、その強みを活かす形で融合した、環境問題に貢献するスウェーデンのグリーンフィンテック企業をいくつか紹介したい。
・Doconomy:先月この分野で欧州最大となる1700万ドルを調達し、マスターカードやUNなどとも提携する同社は、金融取引による地球環境への影響を測定・可視化し、消費者の行動変容を促進する。
・Datia:M&Aなどに際し、投資家や企業が法律を遵守しながらESGへのポジティブインパクトを与えられるよう、持続可能性データを自動化し、具体的な数値や目標に変えるデータプラットフォーム。
・Normative:サプライチェーンからの間接排出を含むCO2排出量を計算するエンジンを運営。排出量のホットスポットを強調し、それらを排除するためのイニシアチブも提案する。
・Trine:個人や企業のアフリカの新興国における太陽光発電への投資を促進。
IoEに対応した半導体ファウンドリ
超低コストで柔軟な集積回路(FlexICs)を作り出すプラットフォームを開発するケンブリッジ発
PragmatIC Semiconductorが、最新のシリーズCラウンドにて8000万ドルの調達に成功した。人間の髪より薄いものの、高度な柔軟性と頑丈さを兼ね備えるFlexICsは、他の電子部品と簡単に統合する形で、新しいソリューションの開発に活用されている。また設計者が同社のファウンドリサービスを使用することで、従来のシリコンICと比較しても、わずかなコストと時間で独自のアプリケーションに適切なデバイスを開発できる。この技術は、既にRFIDやNFCなどを中心に何兆ものスマートオブジェクトと消費者のエンゲージを実現するとともに、コンシューマーグッズ、ゲーム、小売、製薬、セキュリティなど、さまざまな分野で採用されてきた。今回の資金調達により、Internet of Everything向けのFlexICsの需要に対応するため、同社は2ヶ所となるFlexLogIC fabを設立し、効率的で安全な半導体サプライチェーンを実現するためにFab-as-a-Service(FaaS)を提供していく予定だという。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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