『仏のテックエコシステム、資金調達のオンパレード』、『世界で最も革新的な国のほとんどの欧州諸国が上位に 』、『環境に優しいエネルギー貯蔵企業、Cheesecake Energy 』、『女性発スタートアップに特化した”fintech innolab”』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト：第78回」をお届けします。
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仏のテックエコシステム、資金調達のオンパレード
2021年前半、フランスの起業家や投資家は、前例のない9桁台の資金調達のオンパレードを経験し、既に過去最高の資金調達を達成していたが、
Sorare、
Mirakl、
Vestiaire Collective、
Sundayの4社が9桁の資金調達を行った事によりさらに加速した。この資金調達はフランススタートアップシーンの進歩を証明している。また、メガファンディングラウンドは、投資家が世界的に成功し、高い評価を正当化するようなスタートアップがフランスで誕生していることへの自信を表している。さらに今回の資金調達は、フィンテック、SaaS、AI、マーケットプレイスなど、さまざまな技術分野で力を発揮しているエコシステムの多様性を浮き彫りにした。ほんの数年前まで、世界的なファンドマネージャーの注目を集めるような成熟企業があまりなかったフランスにとって、これは大いなる成長と言える。
世界で最も革新的な国のほとんどの欧州諸国が上位に
世界知的所有権機関（WIPO）は、「
2021年グローバル・イノベーション・インデックス」を発表した。この指標は、人的資本、制度、技術、創造的成果、市場やビジネスの洗練度などの基準に基づき、130カ国のイノベーションレベルを評価したものである。2021年の指標では、世界的な景気後退やコロナウイルスの流行にもかかわらず、一部の分野、特に公衆衛生や環境に関連する分野でイノベーションが開花していることが明らかになった。スイスは100点満点中65.5点を獲得してランキングのトップに立ち、今回で11回目の受賞となった。スイスに続き、スウェーデン、英国、オランダ、フィンランドなどの欧州諸国が上位を占めている。この勢いは今後も続きそうな気配である。
環境に優しいエネルギー貯蔵企業、Cheesecake Energy
英国のエネルギー貯蔵のスタートアップ企業である
Cheesecake Energy Ltd.は、The Imperial College Innovation Fund (ICIF)が主導する約130万ドルのシード投資ラウンドを発表した。インパクトのある名前を持つ同社は、世界で最も環境に優しいエネルギー貯蔵技術を開発しており、特に輸送や重工業などの重要な分野での脱炭素化の加速に役立つという。同社の技術は、中・長期のエネルギー貯蔵のコストを下げ、風力や太陽光などの再生可能エネルギー源を信頼性の高いオンデマンド電力に変えることを可能にする。また、同社の画期的なシステムであるeTankerは、熱エネルギー貯蔵と圧縮空気を使用し、既存の自動車、石油・ガス機器のサプライチェーンから得られる長寿命で実績のある産業用部品を再利用することで、現在入手可能な最も安価なバッテリーよりも30～40％低いコストを実現している。
女性発スタートアップに特化した”fintech innolab”
BarclaysとAnthemisは、女性が創業したフィンテックのスタートアップに資金とメンタリングを提供する「
Female Innovators Lab」を欧州に設立した。2019年に設立されたこのラボは、BarclaysとAnthemisのアーリーステージ投資の専門知識と幅広いフィンテックネットワークを組み合わせて、女性の創業者を最も早い段階で特定し、会社を設立して規模を拡大するための資本と支援をマッチングする。Pitchbookのデータによると、パンデミックが女性やマイノリティが創業した企業に過度の悪影響を与えたため、女性創業者のためのベンチャー資金は2020年の第3四半期に3年ぶりの低水準に達し、欧州では2020年、女性のみで設立された企業はベンチャー投資のわずか2.1％を占めた。このラボの戦略的な支援によりスケールアップを可能にし、成長の障壁を取り除くことが期待される。
橋本 綾華
Open Innovation Group, Intralink Limited
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