ブログ

2025年度の振り返り:グローバル市場の変化がもたらす日本企業への機会

作成者: 植木このみ|Mar 27, 2026 11:45:00 AM

2025年度、グローバル市場は地政学的な不確実性と技術革新の加速という二つの潮流の中で大きく変化しました。弊社が年間を通じて参加したイベントにおいても、市場リスクを背景とした「サプライチェーンのレジリエンス確保の重要性」が共通テーマとなっていた一方で、エネルギー、AI、ディープテックといった領域において、社会実装と産業化を前提とした競争が本格化していることを実感した一年でもありました。

本稿では、英国を拠点とするシニア・マーケティング・マネージャーである植木このみが、イントラリンクの活動を振り返りつつ、弊社メンバーがグローバルテックイベントで見た2025年度の重要トレンド、そして今後の日本企業に対する示唆について整理します。

 

「技術」から「実装」へ産業構造転換の兆し

2025年度に弊社メンバーが参加したグローバル・テックイベントを振り返ると、テクノロジーの潮流が「技術」から「実装」へと移行していることが明確に見て取れます。

20255月にオランダ・ロッテルダムで開催されたWorld Hydrogen Summit 2025では、特に上流から下流に至るサプライチェーン構築と企業間パートナーシップの重要性が再認識され、今後の事業展開の鍵となることが浮き彫りとなりました。また、水素に加えてアンモニアが物流およびエネルギーキャリアとして現実的な選択肢となりつつあり、欧州での位置づけの強まりもうかがえました。

一方、6月に開催されたLondon Tech Weekでは、「AI=国家インフラ」という英国政府の明確な姿勢が示され、追加投資、教育・雇用への導入、スタートアップ支援など、AIの社会実装に向けた包括的な取り組みの進展が明確になりました。その実現には、計算資源、電力、冷却、規制といった基盤整備が不可欠であり、生成AIの普及に伴う透明性・監査性・バイアス対策も重要な課題として提示されました。また今年2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC(Mobile World Congress)でも、AIが通信インフラ、デバイス、ネットワーク運用に組み込まれ、実用的なビジネスツールとして活用されている事例が多数示されていました。AIは将来技術ではなく、すでに収益化や効率化を支える基盤へと移行している様子が強く強調されていました。

AIといえば、20261月に米国ラスベガスで開催された世界最大級の家電・テクノロジーイベントCESも忘れてはいけません。昨年のCESでもメインテーマとなっていたAIですが、今年は「デジタルAI からフィジカルAI」に重点が置かれ、欧州同様にAIの「実装段階」への移行とAIエコシステム競争の可視化が鮮明になりました。

このトレンドは、アジアでも見受けられ、11月のシンガポールSWITCH(Singapore Week of Innovation & Technology)では、AIをはじめ、量子技術、ライフサイエンス、サステナビリティを軸としたディープテック・ハブとしての地位確立に向け、国家的コミットメントと国際連携への意欲が表明されました。東南アジアの成長が新たな段階に移行する中で、シンガポールは研究、資本、市場を結びつける中核拠点として、グローバル企業との連携機会も拡大しています。

これらの世界的主要テック・イベントは、AIをはじめとする先端技術の社会実装が進み、デジタル領域から現実世界へと応用範囲を広げていることを決定づける機会となったと言えるでしょう。

 

イントラリンクの活動から見た市場変化

1. 新興市場への高い関心

もちろん、上記のようなテックイベントへの参加も海外トレンドを把握する意味で重要ですが、常に世界中から大手企業、スタートアップ、政府組織の海外市場進出・新規事業開発を支援する弊社も、この1年の活動を通して様々な市場変化を目撃してきました。

最も顕著な変化として、欧米などの先進国での展開に加え、巨大な市場規模と急速な経済成長を見せる東南アジアやインドをはじめとする新興市場への関心の高まりが挙げられます。しかし、発展中のこれらの地域は規制や商文化の違い、経済・インフラ環境のギャップ、さらに市場の細分化などを理由に特にローカライゼーションが難しく、その市場参入実行に課題が残るケースが多く見られるのも事実です。

これは、昨年11月に弊社が駐日インド大使館の後援を受けて東京で開催したイベントでも感じたことでした。日本企業から70名以上の皆様に参加いただいた同イベントでは、インド市場への関心の高さが明らかとなった一方で、同市場へのGoto -Market戦略構築に必要な情報と経験へのアクセスが日本国内では不十分であり、現地でのローカライゼーション支援を必要とされる日本企業の方々が多くいらっしゃることが改めて浮き彫りとなりました。

このような背景から、イントラリンクはインドのニューデリーとムンバイに新たに拠点を設立し、現地プロジェクトチームを増員するとともに、東南アジアにおいても新規事業開発を専門としたコンサルティングサービスを展開するOrissa Internationalの買収に踏み切りました。これにより、同新興成長市場における弊社の事業基盤の強化とともに、日本企業にさらなるアクセスと現地における市場参入を支援できるよう体制を整えています。

2. 結果が求められる欧米市場

安定した市場と最先端のイノベーションをもたらす欧米も、引き続き重要な市場であり続けています。しかし、日本企業のこれらの市場への関わり方にも、大きな変化が訪れています。以前は、最新技術の発掘をベースとしたイノベーション創出の目的地として欧米エコシステムを活用するケースが目立っていたものの、近年は数多くの日本企業が海外での売上拡大に向けた新たな収入源をもたらす市場として、これらの地域における新規事業開発の機会を模索しています。そして、日本企業のビジネスを長年支えてきた欧米市場であるからこそ、いかに「具体的な結果」をもたらすかに焦点が置かれ、その達成に試行錯誤を重ねる日本企業の方々のお話を伺う機会が多くありました。

そのような状況を踏まえ、弊社は欧州では2つのイベントを開催しました。昨年7月には英国ロンドンにて、欧州で活動する投資家や政府関係者を招き、新規産業創出と経済成長の原動力となりつつあるディープテックに焦点を当てたイベント、また10月には、ドイツ・デュッセルドルフにてNiterra EMEA GmbH様​とOKI Europe様をゲストに迎え、欧州市場を攻略するための戦略的アプローチについて、各社の新規事業開発事例とともにご登壇いただいたイベントを主催しました。両イベントを通じて現在のグローバルビジネス環境下における欧州市場の重要性、そして今後同市場が事業開拓・成長に与える影響、またそれらによるリターンを理解・考慮することが、日本企業の長期的な成功につながるビジネス構築に向けた有益な機会をもたらすという示唆を、現地に身を置かれる日本企業の皆様にご提案することができました。

他方、日本の大手企業だけでなく、スタートアップや中小企業による進出も増えてきた北米市場も、そのダイナミックな市場環境と、欧州同様に新たな収入源としての新規事業開拓・展開の目的地になりつつある状況が、日本企業の事業戦略にも変化を促しています。これに伴い、弊社はシリコンバレーにおいて日本発スタートアップの北米責任者や、デロイトトーマスベンチャーサポートでの戦略考案に関する職務を務めてきた青木マイクを北米事業開発統括に任命し、同地における日本企業の新規事業開拓や戦略構築へのコンサルティング支援をさらに強化しています。

3. テクノロジーを軸とした海外連携の加速

こうした日本国外での取り組みとあわせて、日本市場進出を目指す海外テック企業にも支援を提供する弊社は、国内における日本企業の連携加速にも貢献しました。英国企業のUniversal Quantumと産業技術総合研究所(AIST)、Natcapとあいおいニッセイ同和損害保険Reactive Technologiesと北海道電力公社(HEPCO)、さらに米国企業のmxHEROとIIJの提携を通じて、改めて海外からの最新技術が日本企業の事業拡大に大きな役割を果たしている事例を目の当たりにし、テクノロジーを軸とした連携の重要性を再認識する機会となりました。

 

AI実装フェーズで勝つための日本企業の戦略と市場機会

さて、このように様々な出来事があった2025年度ですが、振り返ってみると、改めてAIをめぐる事業機会の変化が強調された一年でした。

これまでAIの価値はアルゴリズムそのものにありましたが、現在はそれを支えるインフラや統合力へと重心が移っており、電力、冷却、半導体、通信といった周辺領域を含めた「実装力」が、今後の競争を左右すると言えるでしょう。

この変化により、事業機会は単なる可能性ではなく、すでに具体的な市場として立ち上がり始めています。AIの社会実装の進展に加え、エネルギーとデジタルの融合、サプライチェーンの再編が進む中で、日本企業が参入できる領域もより明確になってきています。また各国で企業や投資家と話す中でも、これらの領域で需要が高まり、海外からのパートナーを探す動きが広がっていることが見えてきました。特に優れた品質管理や精密な技術をもつ日本企業に広がる機会には、以下のような領域が挙げられます。

    • AIデータセンター向けインフラの高度化
    • 通信ネットワークにおけるAI統合
    • 水素・アンモニアに関するサプライチェーン構築および輸送・貯蔵技術
    • エネルギーとデジタルの融合領域
    • 半導体設計および省電力エッジコンピューティング
    • AIの信頼性確保ソリューション

 

これらの機会は、単独ではなくエコシステムの中でこそ最大化されます。日本企業にとっては、「どの技術を持つか」だけでなく、「どの市場・パートナーと組むか」が競争力の鍵となります。

 

具体的な結果をもたらすために踏むべきステップ

縮小し続ける国内市場から「Go Global」が前提となる中で、海外市場は既存・新規事業の展開やM&Aを通じて新たな収益を生み出す場へと変化しています。国外への展開なしに、長期的かつ持続可能な成長を実現することは、ますます難しくなっています。

しかし、具体的な成功を収めるためには、適切な市場参入戦略の構築が不可欠です。先行市場である欧米に加え、高いポテンシャルが期待される東南アジアやインドなどの振興市場において、それぞれ異なる規制環境や政策、ビジネス文化を踏まえた適切な市場選定、そしてローカライゼーション設計と現地での実行力が、成功の鍵を握ります。

これらのステップを踏みながらの海外事業開発は、決して一朝一夕に成し遂げられるものではありません。持続可能な成長を続けていくためには、短期間での大きな成果のみに基づくものではなく、長期間にわたって大小の成果が少しずつ積み重なって成し遂げられるものであることを肝に銘じる必要があります。そうした成果を蓄積していくためには、現地に根ざした経験と事業開発に関する専門性を持つパートナーとの協働も検討できるでしょう。

イントラリンクは、日本企業のグローバル市場における新規事業開発・展開に、戦略から実行まで一貫したハンズオン型のサポートを提供しています。2026年度も、皆様の挑戦に寄り添いながら、支援の幅をさらに広げてまいります。本稿ならびに弊社サービスにご関心がございましたら、こちらからお気兼ねなくお声がけください。