要旨
本イベントでは、Singapore EDB(シンガポール経済開発庁)とイントラリンクが、フィジカルAI・ロボティクス分野におけるシンガポールの政策、実証環境、日本企業の事業機会を解説しました。シンガポールは、製造、航空、海事、ヘルスケア、建設などの実環境と、政府、研究機関、スタートアップを接続し、新技術を短期間で検証・実装判断できる拠点へ移行しています。
イベント名:「シンガポール発! フィジカルAIの最前線」
開催日時: 2026/06/23(火)18:00〜20:30
開催形式: 現地開催
イベント種別: セミナー/ネットワーキング
主催: Intralink Japan
共催:Singapore EDB
テーマ: フィジカルAI、ロボティクス、東南アジア事業開発、オープンイノベーション
登壇者
- Hsuan Te Phua氏(シンガポール経済開発庁 日本事務所 所長)
- 細井 武蔵(イントラリンク、シンガポール拠点 事業開発マネージャー)
本イベントを通じた主なインサイト
1. シンガポールは「地域統括拠点」から「実証・実装拠点」へ
シンガポールは、販売・管理の拠点にとどまらず、現場課題、研究開発、スタートアップ、政府支援を接続する場になっています。
2. フィジカルAIの導入には実環境が不可欠
ロボットやAIは、技術単体では価値化しにくい領域です。空港、港湾、製造現場、建設現場、ビル設備など、実際の運用環境で検証する必要があります。
3. EDBはロボティクス・フィジカルAIを国家戦略として推進
国家ロボティクスプログラム、研究拠点、データ基盤、産業クラスターを通じて、企業の検証と導入を支援しています。
4. 日本企業にとっての強みは現場実装力
部材・機器・建設・設備・運用ノウハウを、シンガポールの実証環境に接続することで、東南アジアや周辺市場への展開判断がしやすくなります。
5. 検証設計が成果を分ける
誰のどの課題を解くのか、どのデータを使うのか、成功・撤退基準をどこに置くのかを事前に決めなければ、面談やPoCだけが増えて事業判断につながりません。
セッションサマリー
1|Singapore EDB講演:シンガポールのロボティクス・フィジカルAI戦略(Hsuan Te Phua氏:シンガポール経済開発庁 日本事務所 所長)
シンガポールでは製造業がGDPの約20%を占め、政府は4億5,000万シンガポールドル超の国家ロボティクスプログラムを通じて自動化を支援しています。企業、大学、研究機関、スタートアップ、エンドユーザーが近接し、製造、物流、空港、港湾などで実証できる点が特徴です。
1. データエンジン
ロボットが実環境で動作するためのデータを集め、共通ライブラリとして活用する取り組み。
2. フィジカルAI研究拠点
AIとロボティクスの研究者・企業・設備を集約し、技術開発と実装を促進する拠点。
3. 実証環境の提供
製造、空港、港湾、航空機客室などの実環境を活用し、企業が技術をテストできる機会を提供。
日本企業への示唆
シンガポールは、フィジカルAIを研究テーマとして扱うだけでなく、産業現場での導入と事業化を前提に制度・研究・実証先を組み合わせています。日本企業にとっては、実環境で技術仮説を検証し、次の市場展開を判断するための実験場として活用できます。
2|イントラリンク講演:日本企業にとってのシンガポール事業機会(細井 武蔵:イントラリンク、シンガポール拠点 事業開発マネージャー)
シンガポールには4,500社以上の日系企業が進出し、地域統括・販売だけでなく、現地の需要家や研究機関と開発・検証を進めています。鹿島建設は大学・スタートアップと建設技術を実証し、Punggol Digital Districtでは建物、設備、センサー、ロボット、AIを統合したスマートビル運用が検証されています。
シンガポールが日本企業にとって使いやすい理由
1. 規制のガードレールの下で実環境に近い検証がしやすい
安全性、責任範囲、データ取り扱いなどの条件を整理しながら、空港、港湾、建設現場などで実証を行いやすい環境があります。
2. エンドユーザー、研究機関、スタートアップが近接している
検証相手を探し、仮説を修正し、再度試すサイクルを短くできます。
3. 政府・公共機関が実証設計に積極的
単なる補助金ではなく、将来産業や社会課題を見据えた実証テーマや現場接点の設計が進めやすい環境があります。
4. 検証結果を周辺市場への展開判断につなげやすい
シンガポール市場だけでなく、アジア各国から人材・企業・情報が集まるため、次にどの市場へ展開すべきかを判断する材料が得やすくなります。
シンガポール活用の4つの入り口
1. 現場課題を外部技術で解く
自社工場、倉庫、施設などの実課題に対し、スタートアップや外部技術を活用する。
2. 外部の知見・データを取り込む
研究機関、スタートアップ、専門家、現地データを取り込み、新規事業や次世代技術の仮説を作る。
3. 自社アセットを現地需要に接続する
日本で磨かれた製品、技術、運用ノウハウを、シンガポールや周辺国の現場課題に接続する。
4. 共創・新規事業を作る
現地企業、政府機関、研究機関、スタートアップと連携し、次の事業機会を探索する。
日本企業への示唆
シンガポールを活用する際に重要なのは、4つの入り口をすべて同時に狙うことではなく、自社がどの目的で使うのかを最初に決めることです。目的が曖昧なまま面談やPoCを増やしても、最終的な事業判断にはつながりにくくなります。
事業開発の進め方:探索、PoC、展開判断
事業開発は「探索」「PoC・実証」「展開判断」の3段階です。最初に対象となる現場課題を具体化し、次に使用データ、安全性、成功・撤退基準、意思決定者を定義します。最後に再現性、費用対効果、運用・保守体制、国別条件、本社判断に必要な材料を整理します。
Q&A:シンガポール、日本、中国、ASEAN展開
Q&Aでは、中国企業を含むグローバルな技術エコシステム、政府主導の導入環境、ASEAN展開の条件が議論されました。シンガポールでの成功が他国へ自動的に展開できるわけではなく、人件費、規制、現場条件、顧客課題を踏まえて次の市場を判断する必要があります。地域特化型AIや大学・研究機関発スタートアップも技術探索の対象になります。
日本企業への示唆
1. 狙う現場課題を明確化する
ロボティクス、AI、スマートビルといった広いテーマではなく、誰のどの工程・課題を解くのかまで絞る。
2. PoC前に判断基準を決める
成功基準、撤退基準、使用データ、安全性、意思決定者を事前に定義する。
3. シンガポールを検証拠点として使う
販売・地域統括だけでなく、現場に近い実証、政府機関との接続、研究機関・スタートアップとの連携に活用する。
4. 本社判断まで設計する
現地での手応えを、費用対効果、再現性、運用体制、展開先市場の判断材料として整理する。
5. ASEAN展開を自動前提にしない
シンガポールで検証した後、どの市場に展開するべきかを改めて判断する。人件費、規制、現場条件によっては、ASEAN外の市場が適する場合もある。
6. 日本企業の強みを現場と接続させる
機器、部材、建設、設備、品質管理、運用ノウハウなど、日本企業が持つ現場実装力を、シンガポールの実証環境に接続する。
まとめ
今回のTalks@Intralinkでは、シンガポールがフィジカルAI・ロボティクス領域において、地域統括や販売の拠点を超え、実証・実装・事業判断の場として機能し始めていることが示されました。
EDBが提示した国家戦略は、製造、航空、海事、ヘルスケアなどの実環境を活用し、データ、研究拠点、産業クラスターを組み合わせてフィジカルAIの導入を進めるものです。Intralinkからは、日本企業がこの環境を活用するためには、現場課題、検証設計、判断基準、本社への接続を事前に設計する必要があると示されました。
シンガポールは、日本企業にとって東南アジア市場への入口であると同時に、現場で技術を試し、事業化の可否を判断するための実験場でもあります。
フィジカルAI領域で成果を出す企業は、単に技術を持つ企業ではなく、実環境で検証し、パートナーと接続し、本社が動ける判断材料まで設計できる企業です。
シンガポールでのフィジカルAI・ロボティクス事業を、具体的な検証プロジェクトへ
イントラリンクでは、日本企業の技術・事業課題に応じて、シンガポールにおける実証テーマの設計、現地企業・研究機関・スタートアップの探索、政府機関との接続、PoCの実行支援から事業化判断までを一貫して支援しています。
このような課題をお持ちの方は、貴社の技術・対象市場・検証目的を添えて、下記までお問い合わせください。当日の資料・録画のご提供や、スピーカーとのコンタクトについても以下よりご相談いただけます。
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