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インド訪問録:現地訪問で感じた地域戦略の大切さ

アラン・ジョセフ
クイックナビゲーション

「インドを一つの単一市場として捉えるべきではない。」という点を、先月のインド出張にて最も強く感じました。(筆者:アラン・ジョセフ、シニア事業開発マネージャー、東京)

インド独特とも言えるこの地域ごとの多様性は、インドを非常に魅力的な市場とする一方で、市場参入を検討する際の最大の難関事項ともなり得ます。

しかし、近年特に整備が進む日印ビジネスを促進するインフラ、そして現地で感じた日本企業・ブランドへの尊敬や協働への意欲を鑑みると、インド市場における日本企業への機会は今までになく広がっていると言っても過言ではないでしょう。

この勢いをつかみ、インド市場への進出を検討する上で、日本企業にとって重要な問いは、単に「インドに参入すべきか」ではありません。むしろ、「まず、インドのどこに参入すべきか」なのではないでしょうか。

想像を超えるスケールと多様性

インドは、そのスケールの大きさから、国内で発達するセクターとエコシステムは各地域によって様々です。今回私が実際に訪れたバンガロールとデリーという2大都市でも、その違いは明らかでした。

正直なところ、バンガロールは、その想像を超える場所でした。

バンガロールは長年、インドのテクノロジー都市として知られてきましたが、今回特に印象的だったのは、エコシステムの成熟度です。私たちが面談したベンチャーキャピタル(VC)やイノベーション関係者は、ライフサイエンス、メドテック、アグリテック、気候変動、製造業、ディープテックといった分野ごとに、非常に具体的な議論を進めています。

同市が強みを持つライフサイエンス領域で、まさに圧倒されるようなイノベーション・キャンパスを展開するC-CAMPがその良い事例と言えるでしょう。C-CAMPによると、これまでに450社のスタートアップに対して直接的な資金提供、メンタリング、またはインキュベーションを行ってきたと同時に、インド国内外で2,000社以上のスタートアップとの関係を構築しており、キャンパス内を歩いているだけで、インドのディープサイエンス・エコシステムが新たな段階に入りつつあることを強く感じました。

これは単なるソフトウェア人材の話ではありません。
本格的な科学、本格的な起業家精神、そして本格的な野心がそこにはありました。

一方で、デリーにはまた違ったエネルギーがありました。

バンガロールがインドのイノベーション・エンジンであるとすれば、デリーは日印ビジネス回廊における制度的・産業的な側面を見せてくれました。同都市は、政府機関、政策ネットワーク、大手企業グループ、そして北インドの産業回廊へのアクセスという点で重要な地域です。

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他にも、引き続きインドの金融・商業の中心地であり、金融、企業本社、消費市場、貿易に強みを持つムンバイや、自動車、エンジニアリング、電子機器、製造業、港湾を活用した産業基盤において、インド有数の拠点となっているチェンナイなど、日本企業が各社の事業や強み、展開を望む製品によって抑えるべき地域は大きく異なります。

日印インフラ整備を通じて高まり続けるシナジー

このような中で、今までにない日印シナジーの高まりが、インド市場の魅力をさらに押し上げています。

今回お会いした日本商工会は、その会員数が年々伸び続けていると言い、これは日本企業のインドに対する関心がいかに速いペースで高まっているかを示す明確なサインだと感じました。

また、有意義な意見交換をさせていただいたJETROも、インド進出を検討する日本企業にとって、引き続き重要な橋渡しとして、その支援を一層強めています。

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さらに、現地VCの方々との対話で、インド企業が日本に対して非常に深い敬意を持っているということも改めて理解しました。日本は、品質、信頼性、エンジニアリング力、そして長期的な視点を持つ国として、国内での事業拡大または海外展開を検討するインド企業から、理想的なパートナーとして認識されています。

全体を通して明確になったのは、日印ビジネスを支える支援インフラが着実に強化されているということです。これは日本企業を支援する日系組織だけに限らず、インド企業を支援する現地投資家や政府関係者にも同様の動きが見られており、今後更なる日印連携加速に向けた取り組みが活発化すると想定されます。

日本企業にとっての機会

今回は、バンガロールとデリーを中心に、日本企業、イノベーション・エコシステムの関係者、CVC、ベンチャーキャピタル、インドの製造業コングロマリット、そして日印ビジネスの橋渡しを担う政府系・公的機関の方々と面談させていただきました。

彼らとの面談では、穏やかながらも明確なメッセージを受け取りました。それは、日本企業が今のインドの機会を本当に捉えたいのであれば、より迅速にアクションを起こし、より積極的にインド市場にエンゲージし、現地での関係構築に本腰を入れる必要がある、ということです。

 

実際に、今回の訪問では、鉄鋼、食品・飲料、アグリテック、先端材料など、さまざまな分野の日本企業から、インドに対する前向きな声を聞くことができました。同時に、インドのVCやエコシステム関係者からは、日本のエンジニアリング品質、信頼性、そして長期的なビジネス姿勢に対する敬意が繰り返し示されました。

日本は、先進的なハードウェア技術、製造規律、そして長年にわたって磨き上げてきた技術力を持っています。一方、インドは、スケール、ソフトウェア力、技術人材、起業家精神、そして急速に成長する消費市場を持っています。

これらの強みをインド国内の適切な市場でうまく組み合わせることができれば、インドは日本企業に新たな収入源、そして大きな成長をもたらすことができるでしょう。

最後に

日印連携への機会は、確かに存在しています。

しかし、インドは一つの市場ではなく、むしろ一つの「大陸」のように捉える必要があります。州、都市、地域ごとに、産業クラスター、人材プール、インフラ上の強み、商習慣が異なるため、「効果的なビジネス」も各地域によって変わってきます。

つまり、適切な地域、パートナー、そして市場参入戦略を選定し、「インドに参入すべきか」ではなく、「インドのどこに参入すべきか」という課題を正しく攻略していくことが成功の鍵と言えるでしょう。そして、これを早い段階で理解し、行動に移すことができる日本企業が、インド市場での勝者となることができるのではないでしょうか。

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アラン・ジョセフ
Author Bio
アラン・ジョセフ

HondaのR&D部門での勤務、そして技術商社であるダイトロンにてグローバル営業および事業戦略を担当した経験から、自動車、半導体、ファクトリーオートメーション、医療技術、電子部品など幅広い分野への知識をもつ。 現在は、東京拠点にて、コーポレート事業の事業開発メンバーとして、日本大手企業の新規事業開発を支援。 インド出身、ドバイ育ちで、2019年より日本在住。欧州・アジア各国での業務経験に加え、機械工学の学位および材料科学分野での研究経験を有する。