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データに基づくシンガポールの宇宙戦略がもたらす日本企業への機会

プリヤンカ・ブニア
クイックナビゲーション

シンガポールは現在、スペーステックにおいて大きな野心を抱いており、この急速に成長する分野で独自の地位を構築しようとしています。

2011年以降、シンガポールは先端製造、航空宇宙、エレクトロニクス、研究開発(R&D)における強みを活かし、30基以上の衛星を打ち上げてきました。これは、同国がスペーステック開発に力を注ぎ、さらなる成長に向け海外パートナーとの連携を模索していることを示唆しており、日本企業にとっても明確なビジネスチャンスをもたらしています。

さらに今年4月、シンガポール国家宇宙庁(NSAS)が設立されたことにより、これまで様々な組織が個別に実施していた活動が一元化され、長期的な方向性がより明確になりました。

今こそ、衛星データ、通信、また関連サービスに携わる日本企業は、このシンガポールのスペーステック技術を自社事業への統合や新規事業創出などに活用し、国内、さらに国外でのビジネス拡大につなげる好機なのではないでしょうか。

より焦点を絞ったアプローチ

シンガポールは長年にわたり、宇宙関連技術の能力構築に取り組んできましたが、これに貢献する研究機関、スタートアップ、政府プログラムの連携が取りきれておらず、イノベーションの規模拡大が困難な状況でした。

現在、NSASは関連する取り組みを統合し、この分野の結束力を大幅に高めています。

同機関のアプローチは、意図的に焦点を絞ったものとなっています。シンガポールは、打ち上げ活動や深宇宙探査ミッションにおいて、主要な宇宙大国と競争しようとはしていません。その代わりに、衛星データ、通信、特殊部品など、現実的に優位性を持つ分野に注力しています

世界の宇宙ビジネスの規模はすでに6,000億ドルを超え、2030年代初頭には1兆ドルに達する可能性があると言われています。そして、その価値の大部分は、ロケットの打ち上げではなく、データ、通信、宇宙サービスといった下流の活動から生み出されています。

これはシンガポールの国家的な優先課題とも密接に関連し、通信、環境モニタリング、さらには航路追跡の改善によるサプライチェーンのレジリエンス向上といった分野を支えています。

産業界からの需要

具体的にシンガポール政府は、地球観測、安全な通信、衛星画像解析、炭素モニタリング、さらには宇宙交通や宇宙ゴミの管理に向けた先進的なツールへの投資を計画すると同時に、関連技術日常的なビジネス課題を解決するため活用始めています。

その好例が、海運業界です。航空宇宙・防衛技術を世界的に展開するシンガポール大手のST Engineeringが保有する地球観測衛星は、近海領域における油流出の追跡や船舶の動向監視に活用されており、同国の海事港湾庁(MPA)などの機関にデータを提供しています。

一方、物流や航空分野では、サプライチェーンがますます複雑化するにつれ、新たなテクノロジーが求められる中、衛星を利用したシステムが、企業の輸送ルートの管理、可視性の向上、混乱への迅速な対応を支援しています。

環境モニタリングも、スペーステックの利用が拡大している分野の一つです。例えば、「地球観測イニシアチブ(Earth Observation Initiative)」では、衛星データを活用して、アジア太平洋地域全体における食料や水質、災害対応、土地管理などの課題に取り組んでいます。

また、新しい技術がデータの活用方法にも影響を与え始めています。例えば、シンガポールで開発されたナノ衛星は、すべてのデータを地球に送り返すのではなく、AIを用いて軌道上で直接データを処理・フィルタリングするように設計されています。

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小規模ながらも成長を続けるエコシステム

シンガポールのスペーステック・エコシステムは、まだ比較的小規模ではあるものの、着実かつ重点的に発展しています。

この分野には、スタートアップから多国籍企業、研究機関に至るまで約70社が存在し、約2,000人の専門家が活躍しています。

例えば、衛星間で高速にデータを伝送するレーザー通信システムを開発するTranscelestialや、世界的に見てもまだ比較的ニッチな技術として、暗号化通信を実現する量子セキュリティ衛星を打ち上げたSpeQtralなど、複数の国内企業が国際的に注目を集め始めています。

さらに、小型衛星向け電気推進システムのAlienaや、宇宙用途向けの耐放射線性電子機器に注力するZero Error Systemsもその名が知られています。データ分野でも、ST Engineering Geo Insightsが、衛星画像を農業やサステナビリティなどの産業にとって価値ある情報へと変換する地理空間分析サービスを提供しています。

一方で、気象および海洋データ用の大規模な衛星コンステレーションを運用する米サンフランシスコ発Spireが、シンガポールに拠点を構えるなど、国外のスペーステック企業が事業拡大の一環として、シンガポールに進出するケースも増加しています。

実際、世界の衛星サービスプロバイダー上位10社のうち大半が、シンガポールに地域本部置いています。

相乗効果が期待できる分

日本企業がシンガポールにおけるビジネスチャンスを掴むには海外企業との連携がより求められている分野の技術をうまく自社事業に取り込むことで、付加価値を提供しながらシナジーを生み出すことが重要となります。そして最終的には、そこで創出した事業を日本やシンガポール国外のグローバル市場で拡大していくことを視野に入れるべきです。

  • 例えば、衛星データサービスは、同国における需要が明確な分野の一つであり、その重点は分析や意思決定支援へと移行しつつあります。そのため、同分野で活動するシンガポール企業は、データを有用な知見に変換できる技術を持つ海外企業との連携を求めているケースが多く存在しています。
  • また宇宙交通管理も、連携機会が増加傾向にある領域です。これは、軌道上の衛星数が増加するにつれ、衝突を回避するための混雑管理が不可欠になる中、シンガポール、自国の衛星資産を保護し、国際基準の策定に貢献するために、これを優先課題として位置付けていることに由来します。
  • さらに気候関連のアプリケーションも勢いを増し、排出量モニタリング、災害対応、環境管理を支援する技術は、地域のニーズやシンガポール政府の優先事項と密接に合致していることから、需要が多く見受けられます。

技術面はさることながら、経験という意味でも、他の市場で培った専門的な能力やノウハウを持つ海外企業が優位に立っていますシンガポールはすべてを国内で構築しようとしているわけではなく、自国の能力を補完し、イノベーションの加速に寄与できる海外企業との連携に門戸を開いているのです。つまり、シンガポール国外での事業展開を初めから考慮しているという点で、長期的な目で見ると、日本企業との需要とも合致すると言えるでしょう。

効果的なエンゲージメント

日本企業がシンガポールにどのようにアプローチするかは、提供する製品やサービスそのものと同様に重要であり、多くの場合、パートナーシップがその出発点となります。

まず、同エコシステムにおいて中心的な役割を果たす政府機関や研究機関と連携することで、パイロットプロジェクトや助成プログラムへの参加につながる可能性があります。

例えば、15,000万ドル以上の資金が投入されている「宇宙技術開発プログラム(Space Technology Development Programme)」のような取り組みは、研究、試験、および商業化に対して体系的な支援を提供しています。

シンガポール企業との協業も、もう一つの重要なルートです。同国内多くの企業は事業拡大を目指しており、新たな補完技術や海外市場へのアクセスをもたらすパートナーシップに前向きです。

また一部の日本企業は、その資金力を強みに、戦略的投資を通じた連携も検討に値するでしょう。

どの方法を検討するにしても、同分野は依然として発展途上であり、関係構築には時間がかかるため、短期的な視点よりも長期的なアプローチの方が成果を上げやすいと言えます。このエコシステムを正しく理解し、国の優先事項に沿った取り組みに貢献できる企業ほど、持続的な成果を得られる可能性が高くなります。

規模は小さくとも、世界的な影響力を持つ市場

シンガポールはスペーステック市場としては規模が大きいわけではないものの、その役割と影響力は規模をはるかに超えるものに進化しています4月にシンガポール国家宇宙庁が発足したことも、それを物語っていると言えるでしょう

スペーステックに取り組む日本企業にとって、シンガポールは、特定の分野において優れた技術を持つだけでなく、強固なインフラに支えられた安定した環境の中でソリューションの開発や試験を行う場も提供していす。また、国内のイノベーターやすでに現地に身を置くグローバル企業の存在も、協業の形成を容易にしています。

そして最大の機会は、シンガポールを通じて、グローバル市場での成長を支えることにあります。

シンガポールスペーステック技術へのアクセス・連携を目指す日本企業は、明確な焦点、現実的な期待、そして賢明な長期戦略を構築することで、成功する可能性を確固たるものにすることができるでしょう。

同市場へのご関心、また弊社が東南アジアで提供するサービスにご関心がございましたら、お気兼ねなくお声がけください。

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プリヤンカ・ブニア
Author Bio
プリヤンカ・ブニア

弊社東南アジア地域におけるコンサルティング部門の責任者として、東南アジア市場にわたる調査およびビジネスアドバイザリープロジェクトを統括している。自動車サプライチェーンのマッピングや市場調査、産業用オートメーション・制御機器のディストリビューター探索など、幅広い産業プロジェクトを手掛けてきた。 化学工学の学士号とMBAを取得し、英語、ヒンディー語、ベンガル語が堪能である。