インドはもはや日本企業にとって将来の投資対象ではなく、今取り組むべき必須市場です。
日印間貿易は275億ドルに、日本はインドにとって第5位の投資国となり、両国関係には深い構造的な勢いがあります。1,400社を超える日本企業がすでにインドで事業を展開する中、2025年8月には両政府が今後10年間で日本からの民間投資を10兆円に引き上げる新たな目標を掲げました。国内市場の成熟と人口高齢化に直面する日本企業にとって、インドは世界でも限られた国しか持ち合わせていない魅力を備えています。その魅力とは、すなわち、市場規模、若さ、そして持続的な経済成長です。
しかし、インドで成功するには、単に「進出」するだけでは不十分です。成果を上げている企業には共通する「勝ち筋」があり、それは従来の日本企業の海外展開アプローチとは大きく異なります。
現地で生産する
インドの輸入関税は幅広いカテゴリーで高く設定されており、外国企業に現地生産を促す設計になっています。
例えばカシオ計算機は昨年、ベンガルールで中低価格帯モデルの腕時計の生産を開始し、輸入品では実現できない価格帯に対応しています。社長兼CEOの高野晋氏は、現地生産について「価格競争力の向上という点で非常に効果的」と述べており、同社は売上に占める現地生産比率を約30%まで引き上げることを目指しています。(出典:Nikkei Asia)
また、自動車業界は、最も確立された成功例を示しています。1997年に設立された合弁会社Toyota Kirloskar Motorは、現在部品の87%を現地調達しており、2024年には前年比40%増となる過去最高の32万6,000台を生産しました。
さらにインドは、国内販売向けの生産拠点にとどまらず、輸出ハブにもなっています。例えばHonda Motorcycle & Scooter Indiaは、ヴィタラプール工場をホンダグループ最大の二輪車工場へ拡張し、年間約700万台の生産を目指しています。また、ヤマハ発動機のチェンナイ工場はフル稼働に近づいており、インドは同社にとって世界で最も成長率の高い市場と位置付けられています。
この傾向は明確です。現地生産は単に関税を回避するためだけのものではなく、現地に根付いた競合企業と戦うために必要なコスト構造とサプライチェーンの強靭性を実現するためのものなのです。
インド向けに設計する
前述のカシオは、現地生産を確立しただけではありません。日本国外で初となる現地の商品企画チームを設置し、すでに約70の現地開発モデルを市場投入しています。同社が30米ドル未満の腕時計に注力しているのは、購買力が高まる一方で価格感度が依然として高いインドの中所得層の成長を見据えた意図的な戦略です。
スズキのマルチは、おそらく最も優れた例でしょう。同社は40年にわたり、コンパクトなサイズ、燃費の良さ、手頃な価格といったインド消費者の嗜好に合わせて車を設計してきました。その結果、現在では乗用車市場で40%を超えるシェアを獲得しています。
また、ユニクロは2019年にReliance Retailとの合弁でインド市場に参入し、日本より20〜30%低い価格設定にローカライズするとともに、現地の気候や消費者習慣に合わせて商品構成を調整した結果、2025年度の売上は44%増加しました。
ここでの教訓は、日本や欧州向けに作られた製品が、そのままインドで通用するわけではなく、インドで勝っている企業は、現地の設計チーム、現地消費者への理解、そして現地に合った価格戦略に投資しているということです。
現地リーダーに権限を与える
また、日本から管理職の駐在員を派遣する従来型モデルから離れ、現地事業のトップに現地人材を登用する事例もあります。これは、インド市場はスピードが速く、意思決定は市場に近い場所で行う必要があり、現地リーダーは数年の駐在期間では得難い人脈や組織知を持っているという認識からで、Toyota KirloskarやMaruti Suzuki India、ホンダのインド事業など多くの企業がこれを実践しています。
流通を集約し、そのうえで大都市圏以外へ拡大する
インド市場に参入した他の日本企業と同様に、カシオは電卓事業で築いた50社超の販売代理店ネットワークを通じて初期の市場基盤を構築しました。その後、同社は代理店数を大幅に削減し、管理と効率性を高めるためにサプライチェーンを合理化しました。同時に、現在約80店舗の小売網を2030年までに130店舗へ拡大することを目指し、ムンバイやデリーを越えてプネ、コルカタ、ケララ州などへ展開を広げています。
この二つの動き、すなわち流通の集約と地理的展開の拡大は、初期段階でカバレッジの確保に、次の段階ではコントロールとブランド体験に、その後は消費拡大が集中する二級都市へのリーチに焦点を合わせるという、成熟したアプローチを示しています。
長期的なコミットメント
多くの日本企業は現在、中期経営計画の中でインドを重要な成長市場として正しく位置付けています。すなわち、インドは単なる「もう一つの市場」ではなく、「中核市場」として扱われているのです。
例えば日立は、他社に先駆けてインドを戦略地域に格上げし、現地での買収、現地幹部の登用、そしてグローバル取締役会の重点地域化を進め、同取締役会は現在、定期的にインドを訪問しています。
しかし、インドでは忍耐が求められます。そして成功には継続力が必要です。2〜3年で大きな成果が出るとは期待すべきではありません。むしろ、資本、人材、製品への投資に裏付けられた5〜7年のコミットメントが不可欠です。
成功のためのプレイブック
インドで成功している企業には、次の五つの共通点があります。
- 現地生産 — 関税を抑え、価格帯を需要に対応させ、サプライチェーンの強靭性を高めるためにインドで製造する。
- 製品のローカライズ — 既存製品を調整するだけでなく、インド消費者向けに設計する。
- 現地リーダーシップ — 市場に近い場所で意思決定できるよう、インド人経営陣に権限を委譲する。
- 規律ある流通 — 管理強化のために集約し、その後二級都市へ拡大する。
- 長期的コミットメント — インドを戦略的成長市場と位置付け、それに見合った投資を行う。
インドは、コミットする企業、すなわち、現地で生産し、現地で人材を採用し、現地向けに設計し、長期的に取り組む企業に報います。この点を理解している日本企業は、単にインドで成長しているだけではありません。次の10年、そしてその先を見据えたグローバル戦略の中に、インドを組み込んでいるのです。
インド市場への進出をご検討の方、また現地でのハンズオン型支援を必要とされている方は、ぜひイントラリンクまでお声がけください。