今年イントラリンクがインドに拠点を設立したことを受け、筆者は初めてムンバイとデリーを訪れました。
結論から言うと、一言で「圧倒された」というのが正直な感想です。街の空気に混じる起業家精神、スピード、規模感、そしてあらゆるところから感じられる勢い。この国では本当に「何でも実現できる」という感覚が街全体に漂っています。
目まぐるしいスケールと都市の躍動
ムンバイはインド経済の心臓部と言える存在で、どこを見てもダイナミックな人とビジネスの流れがあります。数時間離れたプネという都市からムンバイを訪れていたという現地企業の担当者に人口規模を尋ねると、「約500万人」という巨大な数字がさらりと返ってきました。英国ではロンドン以外に見られない規模の「地方都市」が当たり前に存在するという現実が、インドのポテンシャルを象徴しています。
それに対し、デリーは緑豊かな街並みと歴史的な趣を持つ都市ですが、大気汚染の課題も抱えています。訪問時のAQI(大気質指数)は、200以上で健康に害があるとされる中、322と深刻である一方で、交通量と季節要因、都市の地形が複雑に絡んで生まれるこの環境問題は、同時にクリーンテック企業にとって巨大なビジネス機会をもたらしています。
クリーンテック・Eコマースの巨大市場が加速
廃棄物を価値へと転換する「waste-to-value」分野は、特にデリーをはじめとしたメガシティで最重要テーマとなっています。また、インドのデジタル経済は世界でも突出した発展を遂げており、UPI(Unified Payments Interface)を基盤とするモバイル決済がこの成長を一気に押し上げています。
またEコマース市場はすでに約3,000億ドル規模に達し、Blinkitのように「7分で何でも配送」するサービスが一般化しています。美容サービスまでアプリで呼べる時代となり、生活・産業の両面でモバイルエコシステムが爆発的に進化しています。
インド企業の海外進出と、グローバル企業のインド注目度
近年、インドのテック企業は海外展開を積極的に進めており、これまで主流だった米英だけでなく、日本や韓国といった東アジア市場にも強い関心を寄せています。特にバッテリー、ロボティクス、モビリティ、そして水素といったディープテック領域では、日本企業との協業可能性が急速に高まっています。
一方、海外企業にとってのインドも、単なる「人口ボーナス」市場から、巨大なコングロマリットが次々と成長を遂げる「高度産業国の仲間入り寸前の市場」へと変貌しています。Reliance、Tataに加え、Bajaj、Godrej、Hinduja、Mahindraといったグループがプレゼンスを拡大し、スタートアップ以外のインド大手企業もグローバル企業にとって極めて重要なターゲットになりつつあります。
多層的で関係構築が重要な「複数の市場」
インドでは英語でのコミュニケーションが可能ですが、実際は28の州と8の連邦直轄地から成る「多文化の集合体」であり、商習慣や優先事項は地域ごとに大きく異なるとともに、それぞれが独自のトレンド、ニーズ、機会を持ち合わせています。さらにインドは、人間関係を重視する傾向が強いことから、この文化の違いを理解しながら市場を攻略していくことが重要です。そのため、中国やASEANを攻略してきた日本企業の経験値を持ってしても、インドは一筋縄ではいかない市場です。
しかし、その複雑さの先には、巨大で持続的な成長市場が待っています。
インド市場が日本企業にとって重要である理由
インドは今後10年、世界の経済地図を最も大きく塗り替える存在になります。
いうまでもなく、インドの膨大な人口と産業基盤は、優れた人材へのアクセスやサプライチェーンの多角化など、日本企業の成長ドライバーとなり得ます。さらにバッテリー、ロボティクス、クリーンエネルギーなど、日本企業が強みを持つ分野における協業の相性の高さ、またインド発テック企業による日本市場への高い関心と、それに基づく早期接点の形成および投資・M&A・共同開発における優位性獲得など、その可能性は計り知れません。
その上で、日本企業にとって、インドを早期に理解し、現地のキープレイヤーと関係を築くことが、次の10年における競争力を左右するとも言えるでしょう。
イントラリンクは、現地の複雑な市場構造を踏まえながら、日本企業が確実に成果を得られるよう、引き続きインド在チームとともにハンズオン型の支援を提供して参ります。インドに関するお問い合わせは、こちらよりご連絡くださいませ。